筒井小説のススメ

2005-10-03 03:36:18 | 本関係
筒井康隆の小説が好きだ。というかほとんどそればっかり読んでいる。大学に入ってから初めて『笑うな』を読んだのだが、その時は大してはまらなかった。一年後くらいに古本市で『文学部唯野教授』を読んで以来完全にはまり、あまりに刺激的な文章のため他の小説がほとんど読めなくなってしまったほどだった。
 
筒井氏は、様々なジャンルを書いている。そればかりではない。批評にも詳しく批評家のそれに反批判を加えたりすることでも有名である。これは、彼が海外文学・批評概念に対して精通していることに起因している。彼の反批判を読むと、日本の批評がいかに概念のみに縛られたり旧来の型を無批判に尊重していたりする(例えば私小説に対するそれ)かが読み取れるような気がする。私は文学研究家になるつもりはないが、それでも表現の手法や小説の型にこだわりつつ読者が付いてこれるレベルを模索しようとする姿勢に敬意を表したい(もっとも、少なくない人が「『虚構船団』などは読者のことを考えない内容だ」と主張するかもしれない)。

多くの筒井氏の著作の中で、私が特に面白いと思ったものを挙げてみようと思う。読んだことの無い人は是非一読してほしい。

(ギャグ系)
「関節話法」…関節で会話する話
「陰悩録」…風呂での馬鹿なエピソード。文体とオチも秀逸
「ホルモン」…ホルモンの研究成果を新聞の見出し記事のように書く。その成果がトンでもない方向に…(類似の内容に「ビタミン」がある)
「色眼鏡の狂詩曲」…日本を描いた海外の小説の紹介という形式。あまりに滅茶苦茶な内容に思わず笑う。
「廃塾令」…塾を廃止する話。隠れ塾とか現れてドタバタドタバタ…
「ジーザスクライストトリックスター」
キリストの奇蹟譚のパロディ。もとは演劇。荒唐無稽な内容で笑えるが、宗教には結構こういうのあるんだろうなあと妙に納得したりする。

(感動モノ)
「お紺昇天」…車のAIとの心の交流を描く

(シュール・ホラー)
「佇む人」…植物にされる人間や動物たちの不思議な姿を描く
「くさり」…小説であることを十二分に生かした構成。そしてそこから恐怖のオチ
「死に方」…会社のオフィスにいきなり入ってくる鬼。それぞれに対応する同僚たち。
      
(戦争・社会モノ)
「東海道戦争」、「ベトナム観光公社」、「48億の妄想」など

(特異な手法・表現)
「残像に口紅を」、「夢の木坂分岐点」など

(長編)
「敵」…「敵が近くにいる」というネットでの警告からゆがみはじめる世界。文体による新しい形での狂気の表現。

「旅のラゴス」…荒廃した世界の中で旅を続けるラゴスの話。旅そのものの描写も面白いが、知識を求める姿が非常に共感できる。


長くなったが、これだけでも色々なジャンルがあるのがわかると思う。面白い小説を探してる人は、上で興味のある分野を読んでみてはいかがだろうか。

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