というそれなりに有名な言葉は、個々人はシステムに興味がなくても、その影響を無意識に大きく受けているのであり、それに無関心・無知であることをもってそこから自由であるかのように考えるのは、「ignore(無視)→ignorance(無知)」的な錯覚にすぎない、という意味である(これは自分自身が個人レベルではリバタリアンにもかかわらず、ジャニーズと大手マスメディアの問題などを通じて社会システムの構造や社会的包摂のことを話題に取り上げるのも同じ理由に基づいており、ここには「嘲笑の淵源」という記事でも触れた、「人間は環境によってその言行に大きく影響を受けるのだが、そのことへの認知が甘すぎる人間が多い」という認識とも関連する)。
橋爪大三郎の『日本のカルトと自民党 政教分離を問い直す』という本は、こういった視点で近年起こってきた自民党と日本会議や統一教会との結びつきに見られる政治とカルトの影響関係の来歴・内実を整理した上で、その構造や対策を、これまで政治へのコミットを意識してこなかった人たちにも知ってほしいとの意図の元に書かれたものと言える。
内容面では、読者の間口を広げる意図やスピードを重視したためか、精緻な理論的整合性を欠いていたり、文体に校正の甘さが見られる(硬い言い回しとフランク・ラフな言い回しが混在)といった部分から、生煮えのまま世に出した感があるのは正直気になる(最後は既存政党の話などへ問題を広げ過ぎてしまい、かえって全体の論理展開の説得力を弱めてしまった印象)。
とはいえ、「まずは何が起こっているのか知りたい」という人たちに向けて書かれた入門的な書籍としては、それなりに価値があるものではないだろうか。
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