シュガーラッシュオンライン:愛娘には旅をさせよ、てのはいいが・・・

2019-01-22 12:25:51 | レビュー系

 

愛娘(笑)ヴァネロペの晴れ舞台ということでシュガーラッシュオンライン見てきましたよと。で、感想はと言うと・・・・うーん、、、、微妙w

 

今回は基本ネタバレなしの方向で書いてみますが、重要な部分はほとんど予告で語られてます。そこで多くの視聴者が予想するであろう話の展開が裏切られることは基本ありません。なんで、その範囲内でしか書かないって意味での「ネタバレなし」という理解でよろしく。予告見てねーし前情報知りたくないわ、という人は戻ってどうぞ(まあそんな人はこの記事にアクセスせんやろうけどw)。というわけで以下簡単な紹介と感想。

 

まず、根本的には予告編にも出てくるラルフとヴァネロペの意見の差異を軸にお話が展開していきます。これは要するに、「今の場所にいたい派」と「新天地を求めたい派」ですな。ディズニープリンセス集合シーンも紹介動画であるのでこれも言ってしまいますが、「新天地を求めたい派」にはこれまで女性に求められていた像(←これにはディズニーもかなりの程度加担してきた)からの脱却という意味合いも含まれております。このような描写は、有名なアナ雪もそういう側面を強く含んでるので目新しくもないって人も多いでしょう。

 

じゃあお前はどっちやねん?という話で言うと、私は基本的にヴァネロペ側に立つ人間です。これには「熊本におったらダメやなと大学から東京へ出て多様な価値観に触れて自分の選択が間違っていなかったと思った」という個人的な経験であったり、基本的にダイバーシティを許容していく派であるといった背景があります(ダイバーシティに関する意見は、「ヒヤマケンタロウの妊娠」「秋の日は釣瓶落とし」などを参照)。となれば、ヴァネロペがお気に入りのキャラであり、しかも彼女のベクトルに元々肯定的な志向を持っているなら彼女の方に感情移入して当然だよね・・・・と思っていたのか!!(・∀・)

 

別にラルフの肩を持つわけじゃあないんですが、今回の彼の描写はちょっとひどすぎませんかね?
それを説明するためにも、前回どうだったか振り返ってみましょう。悪役で嫌われ者のラルフが承認を求めて他の世界に旅立つ→同じく傷ついた魂を持ったヴァネロペと出会い友情を深める(そして自分の能力が初めて人の役に立ち感謝される!)→でも自分がいないと成り立たない元の世界の惨状も知る→最後は利他の精神に目覚めた上で、承認も勝ち取る→元いた世界を再帰的に選び取って大団円・・・という非常に素晴らしい展開でありました(なぜ「再帰的」であるのが重要なのかと言うと、他に行き場がないからそこで生まれて死ぬしかないのと、他の世界も見て元の場所の問題点をわかった上で選び取るのとでは意味が違うんですわ。これは地方と都市、日本と世界って視点でも同じ)。

 

もうちょっと言うと、単に色々なゲーム世界を横断的に見せるだけでなく、それが各キャラのリフレクションや救済にも繋がっているという点で物語上重要な意味を持ち、そこから最終的にはラルフが利他に目覚めて自分の役割を納得(それを下支えするのはヴァネロペという他者の承認)し、元いた日常と役割を再帰的に選択をする、という世界観とテーマが見事に合致した作り=傑作だったわけです。

 

しかし今回はどうでしょう?ラルフを聞き分けのない悪の権化みたいに描いときながら、ヴァネロペの行動にも結構突っ込みどころが満載だったりする。

 

ヴァネロペについては、彼女が今の環境を嫌でしょうがなくなる要素が多少でも描写されてりゃ話はまだわかります。たとえば『ダブリナーズ』のエヴリン(pdf原文)みたいに・・・え?古いって??じゃあ『82年生まれ、キム・ジヨン』の主人公とかね。しかしシュガーラッシュオンラインでは、その理由がせいぜい「退屈」である上に、しかもそこから脱出した後には自他ともにリスクがあることが示されている。ここでまず視聴者に、ヴァネロペに対して「気持ちはわかるがちょっと待てや」という気持ちにさせます。

 

その上さらに、ラルフはただヴァネロペに離れてほしくないからダダをこねてるだけのキモいオッサンとして世界を引っ掻き回す人、みたいな描写になってしまっている(正確には、最初の利他的行為からそこにシフトチェンジしていくのだが、その描写がどうにも上手くない)。何でラルフがそう見えるか?ヴァネロペがラルフにとっていかに大切かの描写が弱いため喪失の怖さが伝わってこないし(だって元のゲーム世界でも今ではそれなりに受け入れられてますやん、と突っ込みたくなる)、ゆえに渇望・固執する必然性が伝わりにくい描写になってしまっているからです。

 

以上要するに、ラルフもヴァネロペも行動の必然性が薄く見えるので、全体的に浅はかな印象を受けてしまうわけですわ。もちろん、ヴァネロペが元いた世界について一応フォロー描写はあるものの、前回のテーマに感銘を受けた人であればあるほど、その表面的な描き方に一層失望するのではないでしょうか?正直、ヴァネロペに極めて近い(つもりの)人間が見ても「ハァ?何言ってんの?」という感じのする展開でしたんで、これでラルフ的な視座に立つ人間≒視聴者を説得しようと思うのなら無理ですよ。逆に、どうしてこのようなチーズ描写で説得できると思うのか聞きたい。

 

いやそもそも説得する気なんてあるのか?「もう時代はダイバーシティとボーダーレスなんだからさ、それを認めないのは時代遅れだよね?よね?」みたいな、前回のコミカルでいて重心のしっかりした描写と対照的に、ポリコレっぽいこと言いながらその構築の仕方はザルで、押し付けがましくてウゼーな(こういう表現を自分がしねーように気を付けないとな)とすら思ったくらいです。

 

というわけで、色々おもしろい要素はあるんだけど、残念ながら心には残らねー映画だなー・・・というのが正直な感想(まあ予告でかなりの部分がお披露目されてるんで、驚きがほぼ無かったという点も加味する必要はあるでしょうが)。

 

おそ松様でございました。


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