時折、「過去に戻りたいか?」という質問の一環として、「今の知識があったままで過去に戻れたら?」と聞かれたりするが、あれは何なのだろうか?
「強くてニューゲーム」なら、(今のように)うだつが上がらない状態になることなく、必ず成功しているはずだ、とでも??
そもそも人生が一回きりであるのは初めからわかっているわけで、それでも今の状態を作り上げているのはまぎれもなく己自身である。それを踏まえるならば、repeatableな人生が送れるとなった際、きっと今とは別の形で大きなしくじりをしてしまい、結局理想通りにはいかないであろう。
つまりは、先の問いに肯定的な答えをする者は、己の、ないしは人間というものの愚かしさに思いが至らないほどに今の自分に潜在的・顕在的不全感を抱え、物事を見る眼差しが曇っているのではないかと私には思えるのである。
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ちなみに、「過去に戻りたいのか?」という問いそのものに私は必ずしも否定的でない。その理由は、およそ穏当と思える行動や言動をしていたとしても、偶然のめぐり合わせなどによって大きな悲劇を招いてしまうことがあり、その激しい痛みによるregretは、たとえそれが益体のないものと理解していたとしても、人を苛まずにはおかないからである(と、いうような話を「神の全能性と悪の存在、あるいは赦されざる者」で書いた)。しかし、先に述べた「強くてニューゲーム」の問いにこのような偶然性の痛みはなく、ただの「遅れてきた中二病」とでも表現すべき幼稚さと自己愛しか私は見いだせないのである。
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