心 気 症
スペイン語グループの教材で、「心気症」というタイトルの小話を扱った。
心気症というのは、本当はそうではないのに自分が重篤な病気だと思い込む精神的疾患のことらしい。
小話の筋は、ある男が医者の所に駆け込んできて、「腎臓病にかかった」と訴える。医者は怪訝そうに、「腎臓病というのはかかり始めは痛みや不快感はないのに、どうして確信的に自分がその病気だといえるのか」と問う。それに答えて、男は言う。「先生。自分にあるのはまさにその症状です。」
この小話を読んで、わたしは60年前に経験したことを思い出した。
大学院を修了して就職した時、健康診断を受けた。数日して通知が来て、再検査で胸部のレントゲン直接撮影を受けるように指示された。
当時レントゲン検査には間接撮影と直接撮影があって、直接撮影の方が得られる情報量が多かった。
指示された直接撮影の日は3週間後だった。不安に感じたわたしは、友人の勧めでレントゲン直接撮影を町の医院でしてもらった。
撮影結果を診た医師は、影が認められ肺結核の初期症状があるといい、生活上の注意を与えられ、薬を処方された。
その日の夕方からわたしは微熱が出て、寝汗をかくようになった。
そんなある日、友人の結婚披露宴で旧知の友人の医師と隣り合わせになり、わたしの様子がおかしいことから質問を受け、事情を説明した。
友人は首を傾げ、その撮影写真をもって彼が所属する医局に来るように勧めてくれた。
借りだした写真をもって医局を訪ねると、友人と数名の医局員が映像を検討し、くだんの医師が指摘したところには病巣がなく、以前にやったと思われ固まっている肋膜炎の跡が原因で再検査の呼び出しがあったのではと結論してくれた。
その日から、微熱も寝汗もぴたりと止んだ。
自分がこんなに暗示にかかりやすいとはびっくりし、以後自戒している。
小公園で
STOP WAR!