指揮者のいない第九
5月15日にEテレから放映された,『指揮者のいないオーケストラ 第九への挑戦』の録画ビデオを観た。
晴海にある第一生命ホ-ルを拠点とする「トリトン晴れた海のオーケストラ(略称晴れオケ)」が昨年11月27日に行った,ベートーベンの第九交響曲の演奏と,演奏に向けてのリハ―サルの模様を,32台のカメラを駆使して撮影し,編集したものである。
「晴れオケ」は,東京都交響楽団のメンバーを中心に,他からスカウトしてきた名手たちで編成され,これまでに指揮者なしで演奏活動を行ってきた。第九への挑戦はその集大成とも言うべきである。
指揮者の方が語っているが,第九は指揮者がいても難しい曲で,それを指揮者なしでやろうとすることは,大きな冒険である。
リハーサルの過程で,コンサートマスターの矢部達哉さんを中心に,互いの音を聞き合い,演奏方法,テンポ,リズムなど,ダメを出し合って曲を仕上げていく様子が映される。指揮者がいる場合には,恐らく,演奏者と指揮者との対話で曲が作られるのだろうが,指揮者なしの場合には,演奏者同士がパートを越えて話し合い,指摘し合う。
カメラは,演奏者が互いにレスペクトしながら,妥協なしに曲想を練り上げていく様子を,1時間半にわたって映し出す。普通なら聞くことができない,手練れのプロ同士の対話は実に魅力的である。
公演では,何台ものカメラで撮られた映像が,テレビ画面を分割して映し出され,曲を構成する複数の部分が,音とともに映像としても目に入ってきて,第九がより深く理解できたような気がした。
演奏の出来栄えは素晴らしかった。指揮者を介さずに,演奏者同士が心を通わせ合って作り上げた感動が伝わってきて,終わった時にはテレビに向かって思わず拍手していた。(写真はいずれもテレビの画面を撮影)
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