オリンピック雑感
冬季北京オリンピックがたけなわである。
開会式はテレビで少し見たが,超大国を印象付ける演出だった。わたしは1990年代に,仕事で中国を4回訪れている。ハルビンで朝散歩に出た時,大勢の人が一斉に道路を竹箒で清掃している様子を見て,なんとなく何でも飲み込む大蛇を想像した。上海では,クレーンが四方に林立していた。訪問した一流大学の図書室で,書架に置いてある外国の学術誌がコピーを製本したものであるのを見て驚いたが,今ではバイテク関係の論文数は中国がアメリカを抜いてトップになっている。急速に発展し,巨大化している中国に,恐ろしさすら感じる。
昨年の東京大会の時もそうだったが,下馬評の高かった選手が振るわなかったり,余り騒がれなかった種目で金メダルをとったりしている。それぞれ全力を尽くしてのことであり,それが競技というものだろう。予定調和的な結果ばかりでは面白くない。
それにしても,マスコミも含めて,メダル,メダルと騒ぎすぎると感じる。1908年のロンドン大会の開会式で,クーベルタン男爵がアメリカの司教の発言を借りて述べた,「オリンピックは参加することに意義がある」の言葉はもう古いのか。
男子フィギュアフリースタイルの後で述べた羽生結弦選手の言葉「精一杯やったから,くやしさはあるけど悔いはありません。」,またネイサン・チェン選手の述べた言葉「ユヅの挑んでいるのは神の技です。ユヅがいたからここまでフィギュアスケートのレベルが向上したのです。」いずれもさわやかである。
神宮外苑が変わる
神宮外苑の再開発計画が進められている。
この計画は2018年11月に東京都が作成した「東京2020大会後の神宮外苑地区の街づくり指針」に基づくもので,一昨日都の都市計画審議会で承認された。
事業者は三井不動産,伊藤忠商事,明治神宮,日本スポーツ振興センターの四者で,計画によれば,神宮球場,同第二球場,秩父宮ラグビー場,を取り壊し,神宮球場とラグビー場は新設する。さらに開発区域内に,オフィスビル,ホテル,商業施設,駐車場を新設する。オフィスビルは高さ190mと185mの2棟。来年から着工して2,034年の完成を目指すという。
この開発によって,予定地にある約1400本の樹木の約7割が伐採されることになり,ユネスコの諮問機関の「イコモス」国内委員会から計画の見直しが求められ,伐採樹木の多さに危惧を示す識者もいる。
わたしは学生時代に代々木に下宿していて,神宮外苑は散歩や六大学野球の応援などで,青春の思い出の場所である。完成までは生きていないだろうが,出来上がった景観を想像すると,この再開発計画は心理的に受け入れ難い。
筑波山冠雪
2022年2月11日撮影