◾️伊福部昭:オーケストラとマリンバのための《ラウダ・コンチェルタータ》 (日本フィル・曲目解説:藤田崇文)

2023-12-18 | 解説(音楽解説・曲目解説)
日本フィルハーモニー交響楽団第756回東京定期演奏会
プログラムノートより


2023年12月8日 (金) 19:00 開演
2023年12月9日 (土) 14:00 開演
サントリーホール


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プログラム・ノート(曲目解説への前文) 藤田 崇文


<混迷を深める現代において、オーケストラが放つメッセージ>

 新首席指揮者カーチュン・ウォンが登場する2023年12月の東京定期演奏会は、桂冠指揮者アレクサンドル・ラザレフへの思いも込めショスタコーヴィチ交響曲第5番の演奏とともに、混迷を深める現代において、この曲が放つメッセージが届けられる。そしてコンサート冒頭には先日惜しくも逝去した外山雄三を追悼し、交響詩《まつら》を演奏。この曲は日本フィル恒例行事である九州公演に深くゆかりのある作品で、日本フィルにとっても大切な宝物のひとつであるといってよいであろう。生前の外山の業績を振り返り、日本フィルから作曲者へ感謝の意を表し特別に演奏される。次に演奏されるのは伊福部昭のマリンバ協奏曲《ラウダ・コンチェルタータ》である。これまでも伊福部作品において名演を繰り広げてきたウォン&日本フィルの熱い演奏と注目されるマリンビスト池上英樹の共演に期待が高まる。

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◾️伊福部昭:オーケストラとマリンバのための《ラウダ・コンチェルタータ》 (曲目解説:藤田崇文)

 伊福部昭(1914北海道〜2006東京)は、作曲家、音楽教育者として活躍し、作曲を独学で学んだ。「ゴジラの音楽」は広い世代に知られており、ゴジラの作曲をはじめとする300作の映画音楽は根強いファンに支持されている。伊福部音楽の特徴は「オスティナート(繰り返しの演奏法)」である。「ゴジラ」もそうであるように、延々と続く押しの強い音楽と様々な楽器を重ね合わせるオーケストレーションは土俗的かつ力強い高揚感を持ち合わせる。そのオスティナートは《ラウダ・コンチェルタータ》にも当然のごとく取り入れられ、特にクライマックスに向かうにつれ、マリンバの激しい打法と動き、大胆なオーケストラの響きを存分に味わうことができる。
 この曲は1978年平岡養一の木琴演奏活動50周年記念の為に書かれた木琴と管絃楽の作品であったが演奏されないまま、マリンバソロ用に加筆され、1979年山田一雄指揮、新星日本交響楽団 (現・東京フィル)にて安倍圭子との共演により初演された作品が現在の《ラウダ・コンチェルタータ》である。平岡が使用したシロフォン(木琴)は米・ディーガン社製最低音F(ファ)から最高音C(ド)の3オクターブ半音域で伊福部もソロパートを最低音Fまで使用した。その後、マリンバ用に1オクターブ低音域を増やし4本バチでの演奏スタイルへ拡大した。
 伊福部は初演時の説明に『ゆるやかな、頌歌風な楽案は主として管絃楽が受け持ち、マリンバは、その本来の姿である打楽器的な、ときに野蛮にも近い取扱いがなされています。この互に異なる二つの要素を組み合わせること、いわば、祈りと饗性との共存を通して、原始的な人間性の喚起を試みたのです』と語っている。デッサンには[LAUDA ANTICA、古代の頌歌、シャーマン頌歌、Ode of Shaman 、shamanism]などタイトルメモが残され、北方・ユーラシア古代のシャーマニズムという民族的・宗教的・霊的知恵を意識した世界観が流れてくる。
 近年、日本管打楽器コンクールマリンバ部門においてラウダが本選曲となりマリンバ奏者の登竜門曲としても愛されている。なお、ラウダのデッサン92枚を含める他曲の直筆譜・楽譜等1300点は伊福部が学長を務めた東京音楽大学に保管され、付属図書館から伊福部昭デジタルアーカイブと所蔵目録 (OPAC) の公開が始まっている。

(1979年9月12日初演・東京)

●楽器編成:独奏マリンバ、ピッコロ1、フルート1、 オーボエ2、イングリッシュ・ホルン1、クラリネット2、 バス・クラリネット1、ファゴット2、コントラ・ファゴット1、ホルン4、トランペット3、トロンボーン2、バス・ト ロンボーン1、テューバ1、ティンパニ、大太鼓、トムトム、ティンバレス、ハープ、弦楽5部。 

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▶︎外山雄三:交響詩《まつら》
▶︎伊福部昭:オーケストラとマリンバのための《ラウダ・コンチェルタータ》 
▶︎ドミートリイ・ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 op.47

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▼第756回東京定期演奏会 プログラム公開(無料)


▼この公演はライブ配信が行われています(有料)



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