日本フィルハーモニー交響楽団第756回東京定期演奏会
プログラムノートより
2023年12月8日 (金) 19:00 開演
2023年12月9日 (土) 14:00 開演
サントリーホール
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プログラム・ノート(曲目解説への前文) 藤田 崇文
<混迷を深める現代において、オーケストラが放つメッセージ>
新首席指揮者カーチュン・ウォンが登場する2023年12月の東京定期演奏会は、桂冠指揮者アレクサンドル・ラザレフへの思いも込めショスタコーヴィチ交響曲第5番の演奏とともに、混迷を深める現代において、この曲が放つメッセージが届けられる。そしてコンサート冒頭には先日惜しくも逝去した外山雄三を追悼し、交響詩《まつら》を演奏。この曲は日本フィル恒例行事である九州公演に深くゆかりのある作品で、日本フィルにとっても大切な宝物のひとつであるといってよいであろう。生前の外山の業績を振り返り、日本フィルから作曲者へ感謝の意を表し特別に演奏される。次に演奏されるのは伊福部昭のマリンバ協奏曲《ラウダ・コンチェルタータ》である。これまでも伊福部作品において名演を繰り広げてきたウォン&日本フィルの熱い演奏と注目されるマリンビスト池上英樹の共演に期待が高まる。
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◾️外山雄三:交響詩《まつら》 (曲目解説:藤田崇文)
外山雄三(1931東京〜2023長野)は、指揮者、作曲家として活躍し、NHK交響楽団正指揮者他、地方オーケストラの音楽監督を歴任し楽団運営にも力を注いだ。外山は東京芸術大学で下総皖一に作曲を学び、代表作のひとつに日本民謡をモチーフにオーケストラ作品として作曲した《管弦楽のためのラプソディ》がある。日本各地に古くから受け継がれる民謡や祭囃子の音をオーケストラによって人々の心に鮮明に蘇る作品を遺し日本各地の美しい風景や賑わいを思わせる。そして、同じく日本的モチーフをオーケストラに取り入れた《まつら》は、玄界灘に面した城下町唐津の古称、松浦(まつら)地方の音楽を表現している。夜明けを思わせる情景を冒頭に置き、「唐津くんち」の祭囃子を題材に祭りが最高潮に達する賑わいをオーケストラで表現し、当時日本フィル音楽監督であった渡邊曉雄の指揮で初演された。
この作品が生まれるまでの物語を少し触れてみたい。外山は日本フィルにとっても大切な指揮者であり、作曲家である。外山が日本フィルを最初に指揮したのは1973年2月のこと。旧財団が前年に解散し楽団がもっとも苦しい時期と重なる。その後も楽団の活動に心を寄せ、1977年には《花を捧げる》を作曲し楽団との歴史を刻んできた。今回演奏される本作は佐賀県唐津市民の委嘱により交響詩《まつら》が生まれ、九州での公演を長年育んできた地域と初演の日本フィルとの文化交流の絆、作曲料に1人1口千円の募金活動で2000名が賛同した市民と作曲家との絆が深まった音楽作品であり、日本フィルにとっても大切な宝物の一つであるといってよいであろう。
外山が1999年に日本フィルと地元唐津で再演した時のノートには『美しい海、限りなくやさしい人々・・・。その上に豊かに伝えられてきた民謡の数々。これだけ揃うと作者の責任は重くなるばかりである。日本フィルの外国旅行で、そして国内でも現在に至るまでしばしば演奏されてきた。唐津の皆さんと日本フィルの苦労が実った、夢がかなったと言うべきだろうが、作者は、とんでもない幸運に恵まれたと思っている』と感謝の言葉が記されている。
なお、スコアは初稿から祭囃子の部分が6ページ挿入、32小節分追加され、1982年2月20日に作曲が完成。3月1日初演の数日前に宮崎のホテルで渡邊曉雄にスコアが手渡されている。
(1982年3月1日初演・佐賀県唐津)
●楽器編成 : ピッコロ 1 、フルート 2(ピッコロ持替 2 )、オーボエ 2 、クラリネット 2 、ファゴット 2 、コントラ・ファゴット 1 、ホルン 4 、トランペット 3 、トロンボーン 2 、バス・トロンボーン 1 、テューバ1 、ティンパニ、大太鼓 、小太鼓 、トライアングル 、グロッケンシュピール、チャンチキ、弦楽5部。
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▶︎外山雄三:交響詩《まつら》
▶︎伊福部昭:オーケストラとマリンバのための《ラウダ・コンチェルタータ》
▶︎ドミートリイ・ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 op.47
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▼第756回東京定期演奏会 プログラム公開(無料)
▼この公演はライブ配信が行われています(有料)