今年、3回目の野音。1回目は7月のエレカシで、2回目は9月のUA。エレカシのときは晴れで、UAのときは雷雨。そして今日は、Syrup16g(今さらですが「シロップ16グラム」と読みます)。
昨日だったら、台風に当たっていた。その台風が去り、予報では快晴になるはずだったのだけど、曇り空。雨がパラパラ降ったりやんだり、降るのか降らないのかどっちなんだ?みたいな曖昧な空模様。それが今のシロップに合っていた気がした。巷では、解散説や休止説が流れ、デビューしてから今までハイペースで活動してきたシロップが(1年にアルバム2枚くらいのペース)、この野音が終わったあとの予定が何もアナウンスされてない!だの、新作『delayedead』(昔の曲を再レコーディングした作品ではありますが)がコロムビアからではなく古巣の代沢レコード(インディーズ)からのリリース!なぜ?移籍?だの、何じゃりかんじゃり噂は流れているものの、公式には「第一期、完結」としか銘打たれてなく、どうなる?シロップ!みたいな空気が、シロップ周りでは流れていたわけなのですが、そんなシロップの世間的な雲行きと、本日の空模様とがとてもマッチしていたように思う。でも、騒いでいるのは周りだけで、当の本人達は、自分達の音楽を忠実に鳴らすだけって感じだった。まるで台風の目。やっぱ、今日の空模様は絶妙な演出になっていたんだ。ある意味、強運の持ち主かも…。
ライヴの方は、もう、「良かった」、この一言に尽きる。何も言うことありません。何も言えないって方が近いか。と言いつつ、書くんだけど、3時間近くもやってくれて、たっぷりとシロップを堪能できた。泣きそうになる瞬間あり、鳥肌立つ瞬間あり、汗かく瞬間あり(寒いのに)、空っぽになる瞬間あり…の3時間弱。「クロール」から始まって、MCもほとんどなくどんどんどんどん突き進んでいくのを見ながら、一杯曲やりたいんだな~と思った。やる曲やる曲、良い曲、良いアレンジ、良い詞。シロップ、凄い…。中盤、「翌日」「Sonic Disorder」「真空」「明日を落としても」などのそれこそ第一期シロップにとって欠かせない大事な曲を持ってけドロボー!並みに連発。「土曜日」とか「幽体離脱」とか初めて生で聴けた曲もあった。中畑大樹のドラミングはやっぱり凄い。一緒に行った友人も、シロップのことは詳しくないが、「凄いね」と言っていた。私が五十嵐隆(ヴォーカル&ギター)なら、絶対離したくない。五十嵐くんが作ったはずの曲を、どうしてあんな風に叩けるんだろう。そこにあるドラマや感情を、どうしてああも目に見えるぐらいに紡げるのだろう。自分が書いた(紡いだ)曲じゃないのに。
途中、不思議な瞬間が訪れた。「エビセン」という曲だった。じっくり聴き入っていた私は、なぜだか急に、この状況がとても可笑しくなった。なんで、こんな寒い中、みんな一箇所に集まって、一方向を向いて、あの4人が鳴らす音を一生懸命に聴いているんだろう。あそこに、この音に、何があるというのだろう。なんで、あの4人は演奏なんかしてるのだろう。なに、“冷たい子供の手を引く老人”のことや“しけちゃったエビセン”のことなんか歌ってんの? なんで歌なんか歌うの? そもそも歌ってなんなの? こんなこと、私達の生活になんの関係があるの? すごい可笑しかった。可笑しくて、苦しくて、愛おしかった。こんな風にライヴ中に思ったことは、たぶん、ない。これが<汚れなき 至上の調べ>ってやつなのか。シロップは、いつもこんな場所にいるのだろうか。なんで歌なんか歌うんだろう。何も役に立たないのに。何も変わらないのに。歌わずにいないと死んじゃうわけじゃないだろう。でも、歌いたい。いや、本当に歌いたいのか? 歌わずにいられない。いや、本当にそうか? そんな禅問答のような、自己否定や自己矛盾すれすれの世界を彷徨っているのだろうか。シロップに、ここらで休息が必要なのも分かる気がした。こんなにも「音楽」と向き合っているバンド、シロップのその世界を一瞬垣間見た気がして。「音楽」との向き合い方が半端じゃない。シロップは、恐ろしいバンドだな。
一体、何曲歌ったのだろう。30曲? 色んなノリの曲があるけれど、どれもが狂おしいほど美しい。そんな気がする。イジけてても、逆ギレしてても、美しい。そんな男、五十嵐。いや、普段の五十嵐くんがどんなだかは知らないけど、少なくとも「音楽」の中ではそうなんだろう。U2の「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」をやってくれた。とっても良かった。あと、「パープルムカデ」がむちゃくちゃ良かった。今まで聴いた中で一番良かった。歌う前に、「やっと歌いたいことが歌えたなと思えた曲」とか言ってた。<好きな言葉 何?><好きな人は 誰?><好きなことは何?><好きな事をやれ>という言葉と音を激烈に叩きつけてくる曲。<Sun will shine>~<三輪車>なんて風に韻を踏んでみせる曲。<戦場で死んだムカデ>は<むらさきの>な曲。やっぱ、分かんないよ、シロップ。やっぱ、分かんないよ、音楽。
最後、五十嵐くんが「シロップは解散するわけじゃないんで、音楽はこれからもやっていこうと思ってるんで、もし良かったら、付き合っていただけるのなら、これからもよろしくお願いします」と言った。そのとき、大樹くんも立ち上がってお辞儀をしていた。そして、本日最後の曲、「Reborn」。
ライヴ中、色々思い出したりもした。初めてシロップのライヴに行ったのは……やめておこう。「シロップは解散するわけじゃないんで」。そうだね。これからもよろしく。シロップ。そして、音楽。
昨日だったら、台風に当たっていた。その台風が去り、予報では快晴になるはずだったのだけど、曇り空。雨がパラパラ降ったりやんだり、降るのか降らないのかどっちなんだ?みたいな曖昧な空模様。それが今のシロップに合っていた気がした。巷では、解散説や休止説が流れ、デビューしてから今までハイペースで活動してきたシロップが(1年にアルバム2枚くらいのペース)、この野音が終わったあとの予定が何もアナウンスされてない!だの、新作『delayedead』(昔の曲を再レコーディングした作品ではありますが)がコロムビアからではなく古巣の代沢レコード(インディーズ)からのリリース!なぜ?移籍?だの、何じゃりかんじゃり噂は流れているものの、公式には「第一期、完結」としか銘打たれてなく、どうなる?シロップ!みたいな空気が、シロップ周りでは流れていたわけなのですが、そんなシロップの世間的な雲行きと、本日の空模様とがとてもマッチしていたように思う。でも、騒いでいるのは周りだけで、当の本人達は、自分達の音楽を忠実に鳴らすだけって感じだった。まるで台風の目。やっぱ、今日の空模様は絶妙な演出になっていたんだ。ある意味、強運の持ち主かも…。
ライヴの方は、もう、「良かった」、この一言に尽きる。何も言うことありません。何も言えないって方が近いか。と言いつつ、書くんだけど、3時間近くもやってくれて、たっぷりとシロップを堪能できた。泣きそうになる瞬間あり、鳥肌立つ瞬間あり、汗かく瞬間あり(寒いのに)、空っぽになる瞬間あり…の3時間弱。「クロール」から始まって、MCもほとんどなくどんどんどんどん突き進んでいくのを見ながら、一杯曲やりたいんだな~と思った。やる曲やる曲、良い曲、良いアレンジ、良い詞。シロップ、凄い…。中盤、「翌日」「Sonic Disorder」「真空」「明日を落としても」などのそれこそ第一期シロップにとって欠かせない大事な曲を持ってけドロボー!並みに連発。「土曜日」とか「幽体離脱」とか初めて生で聴けた曲もあった。中畑大樹のドラミングはやっぱり凄い。一緒に行った友人も、シロップのことは詳しくないが、「凄いね」と言っていた。私が五十嵐隆(ヴォーカル&ギター)なら、絶対離したくない。五十嵐くんが作ったはずの曲を、どうしてあんな風に叩けるんだろう。そこにあるドラマや感情を、どうしてああも目に見えるぐらいに紡げるのだろう。自分が書いた(紡いだ)曲じゃないのに。
途中、不思議な瞬間が訪れた。「エビセン」という曲だった。じっくり聴き入っていた私は、なぜだか急に、この状況がとても可笑しくなった。なんで、こんな寒い中、みんな一箇所に集まって、一方向を向いて、あの4人が鳴らす音を一生懸命に聴いているんだろう。あそこに、この音に、何があるというのだろう。なんで、あの4人は演奏なんかしてるのだろう。なに、“冷たい子供の手を引く老人”のことや“しけちゃったエビセン”のことなんか歌ってんの? なんで歌なんか歌うの? そもそも歌ってなんなの? こんなこと、私達の生活になんの関係があるの? すごい可笑しかった。可笑しくて、苦しくて、愛おしかった。こんな風にライヴ中に思ったことは、たぶん、ない。これが<汚れなき 至上の調べ>ってやつなのか。シロップは、いつもこんな場所にいるのだろうか。なんで歌なんか歌うんだろう。何も役に立たないのに。何も変わらないのに。歌わずにいないと死んじゃうわけじゃないだろう。でも、歌いたい。いや、本当に歌いたいのか? 歌わずにいられない。いや、本当にそうか? そんな禅問答のような、自己否定や自己矛盾すれすれの世界を彷徨っているのだろうか。シロップに、ここらで休息が必要なのも分かる気がした。こんなにも「音楽」と向き合っているバンド、シロップのその世界を一瞬垣間見た気がして。「音楽」との向き合い方が半端じゃない。シロップは、恐ろしいバンドだな。
一体、何曲歌ったのだろう。30曲? 色んなノリの曲があるけれど、どれもが狂おしいほど美しい。そんな気がする。イジけてても、逆ギレしてても、美しい。そんな男、五十嵐。いや、普段の五十嵐くんがどんなだかは知らないけど、少なくとも「音楽」の中ではそうなんだろう。U2の「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」をやってくれた。とっても良かった。あと、「パープルムカデ」がむちゃくちゃ良かった。今まで聴いた中で一番良かった。歌う前に、「やっと歌いたいことが歌えたなと思えた曲」とか言ってた。<好きな言葉 何?><好きな人は 誰?><好きなことは何?><好きな事をやれ>という言葉と音を激烈に叩きつけてくる曲。<Sun will shine>~<三輪車>なんて風に韻を踏んでみせる曲。<戦場で死んだムカデ>は<むらさきの>な曲。やっぱ、分かんないよ、シロップ。やっぱ、分かんないよ、音楽。
最後、五十嵐くんが「シロップは解散するわけじゃないんで、音楽はこれからもやっていこうと思ってるんで、もし良かったら、付き合っていただけるのなら、これからもよろしくお願いします」と言った。そのとき、大樹くんも立ち上がってお辞儀をしていた。そして、本日最後の曲、「Reborn」。
ライヴ中、色々思い出したりもした。初めてシロップのライヴに行ったのは……やめておこう。「シロップは解散するわけじゃないんで」。そうだね。これからもよろしく。シロップ。そして、音楽。