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sky is blue

言わなければよかったのに日記

サムライ in アテネ

2004-08-28 00:43:02 | コラム
ロシアはやっぱり強かった…。
シンクロナイズドスイミング、日本チーム2位。銀メダル獲得。
同調性とか切れとか、採点基準は私にはよう分からんのですが(ロシアは強いってことは嫌というほど分かりました。リフトとか凄すぎ)、とにかく日本は銀メダルでした。なぜロシアに勝てないのか、どうしたら勝てるのかというようなことは、当人達が一番よく考えてるだろうし、ぜんぜん詳しくない私が語っても余り意味がない&そもそも語れないので省略。

本当は、「銀メダル」だって十分スゴイ。しかも、2大会連続だし、日本は、シンクロが採用された1984年ロサンゼルス五輪から全種目でメダルを獲得してきた唯一の国らしいし、立花美哉選手と武田美保選手は、これで通算5個のメダルを獲得したことになり、日本女子選手では最多だそうだし。十分スゴイ。

けど、本人達はどうなんだろうな。銀メダルを獲得した女子レスリングの伊調千春選手の、「また銀かって感じです」「銀メダルでも全然嬉しくないですね」と語る、ぜんぜん自分に納得していない強張った表情がとても印象に残ってるのだけど、いくら周りが凄いと言ったって、本人の評価はなかなか動かせるものではない。大会は銀メダルはくれても、自分の気持ちまではくれない。でも、銀でも銅でも、とても晴れ晴れとした表情を見せる選手もいる。「気持ちは金メダル」とか「金メダル以上のものを得た」とかそういうのは、半分奇麗事かとつい思ってしまうけれど、本当にそういう気持ちってあるのかも知れない。または、輝かしいはずの金メダルでも、本人にとっては悶々とした気持ちでその輝きが曇ってしまうなんてことも、ひょっとしたらあるのかも知れない。結局は、自分に嘘はつけないんだなぁ。スポーツ選手を見てると、それがよく分かる。

シンクロの決勝戦を見る前に、ボーッとテレビを見ていたら、槙原敬之が出ていて、自分と向き合って詞を書いてる時間が今一番好きという話をしていた。とても嬉しそうに。その中で、「答えは自分の中にある」という言葉を発していた。金メダルとか銀メダルとか分かりやすい絶対的な順位をつけられるオリンピック選手なんかは特に、「自分に嘘はつけない」ということを痛感する機会が多いんだろうし、やっぱり、答えはいつも自分の中にあるんだろうなぁ。孤独だなぁ、人は。でも、だからこそ、自分を表現しようとするのかも知れない。だから「オリンピック」なんてものが生まれたんだろうし。「答えは自分の中にある」というのと「人と競い合う」というのは矛盾しているようだけど、人ってそういうものなんでしょう(多分)。伊調選手と逆パターンで、自分では納得いく試合ができたのに、誰も認めてくれなかったらそれはそれで悔しいはず(だよね?)。

立花選手は「コーチに認められたことが一番うれしい」と言っていたそうだ。メダルの色とか、オリンピックという大会とか、もとはと言えばスポーツだって、人間が考え出したルール(概念)に過ぎない。世界に色を付けるために、要は楽しむために、結局は自分を表現するために、考え出した高度な知恵の産物。世界に塗った色(ルール)。だったら、そのルールを使って思いっきり表現してやれば良い。それはきっとルールを超越するし、時に塗り替えもするだろう。色を塗るのは人間なのだから(色に振り回されるのもまた人間だけど)。

今回の結果に対して、シンクロ日本チームの選手達や井村雅代コーチがどんな気持ちでいるのか直接聞くことはできないけど、たとえどんな気持ちであったとしても、私は、「銀メダル、おめでとう!」って言いたい。自分に嘘のない表現ができて、それが人にも伝わって認めてもらえたら、それは凄く幸せなんだろうな。いや、その前に、表現の場があるってだけでも物凄く幸せなことかも知れない。世の中には、場がないどころか、自分に嘘をつかなければならない(あるいは沈黙を強いられる)ような状況だって結構あるのだろう(甘々な私にはまだまだ分からないけど)。女子マラソンの野口みずき選手も「幸せです」と言っていた。メダルはそれに付いてくるオマケのようなものなのかな。「皆さんのおかげです」とか「私にとっては金メダルです」とか「金メダル以上のものを得ました」とかそういうの、私も言ってみたいなぁ~。

ちなみに、「五輪では敵を愛せ」という言葉があるらしい。自分に嘘のない表現をしながら、敵を愛し敵からも愛される。これこそが『この世の外へ クラブ進駐軍』で述べたような“戦争と平和の共存”ではないのかな。自分に嘘をつくことを強いられ(誰も本心から見ず知らずの人を殺したいとは思わないよね?)、憎しみを生むいわゆる“戦争”とは違う。“戦い”でありながら、オリンピックはやっぱり“平和”の祭典なのだねぇ。もちろんオリンピックでも、ドーピング疑惑とか、自分に嘘をつくことになるのでは?っていう行為はあったりするけど。

ビョークは、『ニュース23』に出たとき「どういうときに幸せを感じますか?」と聞かれ、こんな風に答えていた。「内なる情熱と外からの情熱。これがイコールだと感じられたとき、私は幸せだと感じます」。そんなビョークが開会式で<あなたの汗はしょっぱい>と歌ったアテネ五輪。しょっぱい季節ももうそろそろ終わろうとしています――。関係ないけど、武田選手が自分と同い年と知った(ショック!!)。同い年にして「引退」という2文字について真剣に考えなくてはならないのかぁ…。