メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『ポケットのXYZ』眉村卓/著(角川文庫)その2

2019-05-03 13:57:48 | 
 
 
るんるん の(A)
「さあ、行け」と言われて
僕は崖から飛び出した 体が2つになり、片方は岩に叩きつけられて潰れた
意識は飛んでいくほうに合わせて、るんるんと飛ぶのです

「さあ、死ね」と言われて
毒薬を飲み、ナイフで首を切ったが「死ねない 見本を見せてくれ」と言うと
相手は去った るんるんです

「この日記は真実を書いてないではないか
 君は崖から落ち、自殺した なのにるんるんとはなんだ」

「でも、僕は生きていますね」
「ほんとに・・・おかしいねえ」
「るんるん」

先生は何も言いませんでした

るんるん の(B)
奴らはるんるん族だ 僕らジンバン族は武器を持ち防戦計画をし、訓練もして待った
るんるん族がどこから、どうして来るのか分からない

ジンバン族の特徴は、理屈っぽく、伝統的で、物事に白黒つけたがり
昔はオジンオバンという言い方だったが簡約してジンバン族になったそうだ(w

天井が消滅し、その上をるんるん族が300人ほど走っていた
銃で撃つと桃色になり消えてしまう

第9ラインが突破されたと連絡がきた
るんるん族はだしぬけに消え、だしぬけに現れ、突っ走る
僕たちが莫大な損害をこうむっているのは事実だ

僕はふとさっき、2階にいた7つくらいの可愛い女の子を思い出した
自分がるんるん族になるかもしれないと言っていた

「では行くか とにかく命令だからな」

るんるん の(C)
芥川龍之介の小説に「或る日の大石内蔵助」というのがありましたな

夜空を今度は6機の編隊が飛び過ぎて行く

あんた少し静かすぎますよ あんたもるんるん よろしいなあ

今度は9機の編隊が来て、3機がとうとう降りてきた

るんるんのやり過ぎですよ や・・・死んでる

3機から小さな緑色の点が飛び出し、るんるんと歌っている
思い思いの家に走りこむのだ
そいつが狙いをつけた奴は死ぬのだ
1人殺して、そいつも死ぬ 1人1殺のるんるん攻撃
光にやられると、生きていた者は死に、死んだ者は生き返る

やあ、おはよう 寝ていたようですな 何を変な顔をしてるんです?

るんるん の(D)
Sは「どうぞごゆっくり」と言って出て行った
テーブルが1つあり、周りは皆他人で僕は何をすればいいのだ?

女2人は雑誌を見て、頬寄せて喋っている

ドアが開いて、大柄のグラマーな女が入って来た
裸になり、壁を押すと開いてシャワーの音がした
女が出て行き、僕も壁を押したが動かなかった

僕は何のために呼ばれたのか?
Sは何者なのか? 本当にSなのか?

ドアが開いて、Sは「あなたの自由時間はおしまいです」と言った

白っぽい光が満ちた会議室に座っている
僕はショートショートを書き始めた
これがそれだ 記録と言ったほうがいいかもしれない

踊るロボット
大プロデューサーの石田は大阪千国博覧会で人間型ロボットのペンペケ製作所の
デモンストレーションとして、400体のロボットを球場で踊らせるというのだ

ついにオープンの日 ロボットたちはガチャンガチャンとすごい音で動き出した
曲が激しくなり、観客席のほうへ突進すると、みんなわっと逃げた

突然、雨が降ってきた
「やめろ!」と石田はわめいた 大急ぎで準備したため、ロボットは水に濡れるとショートするのだ
それでもまだ踊っていた 石田はロボットたちに踏み潰された
これが高名なプロデューサーの最期だった

「またこんなものを書いたのか? これをSFと言うつもりか? 死んでしまえ!」
石田が怒鳴ったが、僕はまたこういうのを書こうと決心していた

踊るユウレイ
ユウレイは大挙して来た 踊りが好きで本能で、武器でもあった
踊ると他のものを共振させ、同じユウレイにしてしまう

この熱い世界には先着者がいたが次々とユウレイになり
気体として発散して消えた 残った本体は岩や水になる
そのうち山、谷もユウレイ化した

宇宙に飛び出し、熱エネルギーとなり消えた
大量の熱を奪われ、地球は冷え始めた
永い時間が経ち、原始生命体が生まれ、人間が登場した

僕はこの話を天井裏にいるユウレイに聞いたのです
ずっとシラケていたユウレイで、踊りも好きじゃないんです

踊る探検隊
宇宙船は魔の宇宙空間を飛んでいた
「本船は今から非実体化する」

オーナーが止めた
「そんなもの、どこにあるんだ! 私は理学博士で工学博士だぞ!」
「続けますが、よろしいか?」 従五位下淡路守が言った

「目標の惑星は近いぞ! 恒星ペタントローペまでわずか4光年だ」
船長は完全に無念無想になれずキツネになっていた(可愛い
タヌキになった事務局長が報告した

またオーナーがわめいたが従五位下淡路守は続けた

ついに探検隊は惑星に着いた
「見ろ この緑の大地 青い空!」
「よかった よかった」
みんなは踊りだした

オーナーは服毒自殺していた
「辛抱の足りない人だ」監督が呟いた
「後で片付ければいい 続けますが、よろしいですか?」 従五位下淡路守が言った

【作者あとがき 内容抜粋メモ】
この本に収録したのは、昭和55年~57年のFM大阪“男のポケット”という番組のために
ほぼ毎週、局で書き、読んだものの後半で、前半は「ポケットのABC」だ

そのあとがきにも書いたが、この2冊は、それ以前の「ぼくたちのポケット」より
気ままに書いた作品が多く、「SYZ」はその傾向がずっと優勢になっている

月の4、5回は同じテーマで書く 例えば「るんるん」のように
当時は中高年には理解しがたいものだったが、今では微妙にイメージが違っている

こちらが言いたかった事柄も陳腐になったり
別の受け止め方をされるのも仕方のないことだ

へんてこなショート・ショート(僕とディレクターは、やぶれかぶれショート・ショート
略してヤブカブと呼んでいたは、僕にとって実に楽しい作業だった
それだけに、読んだ方がどんな感想を抱くか、今ごろ気にしはじめているのである


後半は特にどんどんワケが分からなくなったけど、
楽しく書いたものを楽しく読めばいいんじゃないかと楽しんだ 言葉遊びに近い
重厚な作品もあれば、本来の人柄の出る明るさも感じられる作品もある
あとがきでほのめかしているように、
当時は相応の意味を持たせていたのかと思うと
時流や世代の違いで読み取れない部分があるのはちょっと気になる

それにしても、毎週1本のペースで書くってものすごい量産なムチャな企画だな/驚
遊んだように書いても、眉村さんの根底にある世の中に対する風刺の精神
みたいなものはちゃんと匂わせているところが好きだ
 
 
追。
「あとがき」まできて、また3000文字を超えていることに気づいてガックリ
以前も同じ状況で、半分をカット&ペーストしても、リニューアル後のgoo-blogでは
フォント、絵文字もすっかり消し去ってしまい、二度手間になる
 
これ以上、修正はしないようだし、まだ旧ver.→新ver.に貼り付け直すなんてことをして
ブログをアップしているが、いつまでこのままなのか?
 
ということで、前半と後半のボリュームが違うのはご了承くださいませ
 
 
 

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