メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『ポケットのXYZ』眉村卓/著(角川文庫)その1

2019-05-03 13:57:49 | 
眉村卓/著 カバー/木村光佑(昭和57年初版 昭和59年7版)
 
※「作家別」カテゴリーに追加しました。

[カバー裏のあらすじ]
仕事を済ませ、オフィスを出ようとしたときにあらわれたひとりの男。
そいつは以前、私の部下として入ってきた新入社員で、
仕事で自信喪失したあげく、自殺してしまったはずの男なのだ。
「幽霊!」
そいつは、ぼくを見つめていたが、やがてかぼそい声を出した……。「あわれっぽい話」より
珍妙な話、不可思議な話、楽しい話、極端な話……
眉村卓の、SFショート・ショート満載。「ポケットのABC」の姉妹編。
 
 
 
▼あらすじ(ネタバレ注意
 
あわれっぽい話
オフィスのドアに1人の男が立っている
以前、新入社員として、私の下にいたが、甘やかされて育ったせいか
失敗ばかりして、挙句の果て、自殺してしまったのだ
私は何も悪いことはしていない

男:
随分いじめてくれましたね あんなに叱らなくてもよかったんじゃないですか?
恨みますよ これからも時々やって来ます
 
数日後、そいつがまた出てきた
私は気味悪さより腹が立っていた

「今ごろ何の用だ! 今は時間外だぞ! 上司の言うことが聞けないのか! しっかりやれ!」
 
そいつは泣きそうな顔になり、とうとう消えた
その後、もう幽霊は出なくなった
 
それから、私の机で誰かが仕事をした形跡が見られるようになった
その筆跡はあの男のものだ
仕事はいつも間違いだらけで、そのたび修正し、始めからやり直さなければならず全く困るのだ

類型的な話
友人が怪談が出来たから聴きに来ないかと言うので行くと
コンピュータにデータを入れて組み上げた話だという
 
「女は地下室に行くとコウモリが舞っている
 十字架を持った神父が叫ぶと女の口は裂け神父に襲いかかる
 神父は異様な怪物に変貌した
 部屋の隅にあった仏像の目が光り、女のあとを追いかける・・・」
 
みんなが不平で怒鳴ると友人は制した

「ここまではデータの組み合わせだが、あとがあるんだ」
 
「モウスコシ コノハナシ ヲ ツクラセテ クダサイ
 ニンゲンガ ナニヲ コワガルカ モット ケンキュウシタイデス
 ショウライ ワタシタチニ ヤクニタツハズデス」

アホらしい話
1人の男が近づいてきた
「オバケ買いませんか? 買った人の言う通りにします」
 
夕方にオバケは家に来て、代金は1日使ってから払えばいいそうだ
白いもやもやしたオバケが「何をしましょうか」と喋った
 
私はボディガードに使うことにした
強盗に襲われ、オバケが出たがちっとも驚かない 私はひどく殴られた
あのオバケは3日で消えるもので、もっと値段が高いと長持ちして、もっと怖いという

翌日、6人のOLがオバケと出社してきた
上役が文句を言おうとすると前に立つのだ
 
その上役もオバケを連れてきて、オバケ同士のにらみ合いになった
他の会社でも流行りだし、私も申し込んだが値段がすっかり高くなり
生産が追いつかないという
 
私は貯金して、オバケ製造会社の株を買って、値上がりを待つのであります

ひまつぶしの話
もうあとはなりゆきに任せるばかりだ
「怖い話はどう?」女が提案した
 
男:
昔、オバケ屋敷という見世物があって、人間が入場者を脅かすんだけど
仕事後、仲間に足がないのに気づいたんだ
 
女:
よその惑星に行った隊員が、次々人間でなくなる
異性人に乗っ取られていたの
 
男:それこそ類型的だ ちっとも怖くないな
女:いっそ暴れまわったらスッキリするんじゃない?
突然、棒を振り回して、男は女をレーザーガンで撃ち倒した
 
故障した宇宙船は、太陽の引力に落下しつつあり
溶けて焼かれるまで、まだ少し間がありそうだった

災難 A
私は道で財布を拾いました あまり見慣れない材質です
派出所に届け、住所氏名を書いて帰りました
 
その派出所は翌日焼失し、襲った奴は「あの財布をよこせ」とわめいたそうです
財布は本署に届いていて、男は私の住所を見つけ、ドアを焼き切って入って来ました
「財布をよこせ」
 
男は私を倉庫に連れていき縛り上げ、監視しました
7日目、男は財布を持ち、私は外へ放り出されました
 
警察に電話すると「財布を返さなければ人質(私)を殺す」と電話があったそうです
警察は財布の材質を調べ、お札などのコピーをとっていましたが
現在、存在しない新種のプラスチックで
お札の発行年度が西暦なら、500年も未来のものだそうです
 
もし派出所に届けなければどうなったのでしょうね
拾ったものは届けるのが無難なのでしょうな
 
(そんな未来でもお札とか財布なのが可笑しい

災難 B
20軒ばかりの建売住宅は、フシギなかたちばかりだ
 
案内人:
地下には空気ろ過装置を備えたシェルターがあります
ここはあらゆる災害に耐えられる家ばかりですから
しかし、値段が高くて誰も入居していない

ここを作った私の会社は潰れました
売却しようとしたら、地下から遺跡が出てきて
今は国が管理していますが、家を壊して発掘する予算がないそうで
20年もあのままです
 
あらゆる災害に耐えられるお墓・・・
なんだか可笑しくもあり、こんなムダをやった全部に対して腹も立つのだ

災難 C
ワタクシ、ゲラノバッテイゾ デス
ムニャラデ ドウシノカツヨウ(“走る”の説明
ヤラヤラ マルデチガウ ダメ? ナゼカ?
 
「いつまでこの言語変換機の世話になるつもりかね?
 あんたが乗りたいというから、あの惑星のサンプルとして乗せたんじゃないか
 故郷に帰ったら、みんなの見世物になってもらないといけないんだよ
 真面目にやらないと殺すぞ ただで宇宙船にいるのに
 何が災難だ 大きなことを言うな!」

災難 D
A:こういう監視つきのインタビューでは、愚痴の1つぐらい言いたくなります
B:あなたのご用は、ネクトドアル氏のことですね
A:古い友人と聞いたので
 
B:
ネクティは生まれた時から不幸でした
生まれてすぐ両親を亡くし、預けられた親戚は強欲で、学校にもやらず働かせました
学校をどうやら卒業すると、親戚は重労働をさせました
その猛烈な働きぶりが雇い主の目にとまり、その娘と結婚させたいと言われた

その娘が無茶苦茶に共謀で、殴る蹴る、死ぬほど苦しませた
雇い主は亡くなり、妻が社長になり、ネクティは秘書として奴隷のようにこき使われた

逃げ出してトラックに追突され、その病院が火事になった
入院していた大富豪の息子と間違えられて、ギャングに誘拐された

助け出されたが、指名手配中の殺人犯と名前も同じで警察に捕まった
妻は心臓麻痺で亡くなった それが他殺と疑われた

ある作家が彼をモデルに本を書きベストセラーになったが
ネクティには一銭も入らなかった

裁判で無実になり、国民的英雄になった
そんな英雄は政府から嫌われ、暗殺されかかり、皆、彼をかついで革命を起こした
彼は大統領になった

不幸に耐えるのが人間のつとめだという信念で政治をしている
下層階級の多い我が国では絶対的人気です
 
私はとんとん拍子に出世して、贅沢していたので
見せしめに捕まって、明日の裁判で死刑になるでしょう
 
A:それはあんまりだ

B:
あなた、同情しますか?
我が国では罪人に同情すると、代わりに刑を受けるのです
 
A:やめろ! こんな災難があってたまるか!

番号札
「番号札を」と言われて「3」と書かれた札を出した 次々出してもどれも違うと言う
「札がなければ渡すわけにはいかない 今月の配給は80人分しかない」
 
ふらふら歩いて、「奇数の番号のみ」という看板を見つけて3番を出した
それは該当者を5回殴る番号札だった
 
番号札をもらう行列に並んだ 「2236」と書いてある
これで何をくれるか分からない
 
女:
長いですね うまくいけば食用ブタを1頭くれる札だそうだけど本当か分からない
こないだ「大臣になれる札」だという噂が銃殺になったんですって
 
「札、譲りませんか?」 痩せた男が歩いていく
交換屋は、どの札が何と引きかえられるか知っているに違いない
交換屋になろうと考えたこともあるが、自信がない
 
それでも私は死にたくないから、ポケットに入れた番号札を
ポケットにいろいろ入れて家に帰る
 
(すごい現実味のあるSF 札(ふだ)もお札(金)も似たようなものだ

番号時代
僕がJFM20254-KP204-889です
(戸籍番号、住所、学校の在籍などの経歴をすべて複雑な番号で言っていく

2週間前のことを聞かれて、番号を付けて話していく
埠頭に着いて、奇妙な飛行体から化け物が出た事件が起きた話をする

とり憑かれた人間はだんだん元に戻り、飛行体も去り、以前の通り
それが、よその生命体に乗っ取られたままだというんですか?
宇宙人にとり憑かれた者は皆殺し?
僕もとり憑かれているというんですね
 
話したうち数字が記録と2ヶ所違っている?
記憶は確かです 記録のほうが誤っているのでは?
 
もう一度、男は最初から複雑な数字番号を話し始める

番号と名前
私の名前は1004だ 48時間前までは
監督はモーリスという名前をつけた 個性的で馴染みやすいからという理由だ
 
私は第4セクションで仕事をしている
それぞれのセクションで仲間が働いている

それぞれにもトム、ベティなどと名前がつけられた
機能は同じ みんな1000型ロボットなのだ

それでも監督は、それぞれに違う色を塗る
私たちには差はなく、区別も出来ない 私には理解できない

番号魔にして数字占い
うちの会社の総務課にSという男がいる とんでもない番号魔だ
何にでも番号をつけて、数字占いの趣味もある
 
「7件目の書類 ページ数は12P」とニヤニヤする
7は幸運の数字だが、14時で21
12Pは4・7・1・2が大凶数で
誰かが転んで怪我をする 楽しいなあ
 
これは僕が総務に書類を持って行った帰りに転んだ時だ
 
そのSが経理部に移り、皆はやしたて、Sもやる気マンマンだったが
2週間で神経質になり、痩せて、ついに会社を休んだ
 
だがSは回復し、以前よりますますうるさくなった
これが現実というものに違いない

どこかにありそうな話
出勤時、緑色の円盤が降りてきた
「ハヤシヨシオさんはいますか?」
 
僕は手をあげた
あなたは、特別賞を与えられることになりました!
 銀河連邦に加盟していない種族のうち、
 もっとも平凡に暮らしている生命体に与えられます おめでとう!」
 
小さな生き物が降りてきて
「記念品の全身発光ボールと、副賞の誰よりも優しい心を差し上げます!」
 
僕は円盤に吸い込まれた
「この特権は、連邦内のどの世界でも通用します ではこれからもお元気で!」
 
その後、メディアから追われ、周囲の者は近寄ろうとしない
体が金色に光、自分でも眩しいほどだからだ
 
それに、心優しくなったせいで文句も言えなくなった
ウソもつけないので、会社の商売の駆け引きも出来なくなった
 
家には僕を宇宙神と拝みに来る人が絶えない
妻は宗教を作り、事務総長になり、生活はできるが、僕はただ座っているだけ
 
特権で自由になりたいが、どこに銀河連邦の世界があるかも不明だ
賞なんてヘタにもらうものではない 知らなかった 知らなかった

ミスター哲学者
大学祭があと3日で始まると実行委員のQが下宿に来た
Q:お前がミスター哲学者に決まったんだ 賞金を渡すよ
金づまりで少額でも助かると受け取った
 
次の日からパネルディスカッションに出てくれとか
メディアから取材が来たり、祭りではでかいワッペンをつけさせられた
 
ディスコ大会に連れていかれて、踊れない僕を見て皆ゲラゲラ笑った
食文化研究会ではマナーを知らない僕を見て、ここでも皆ゲラゲラ笑った

アスレチッククラブでは、何度も転んでまた笑われた
夜には歌が苦手な僕に歌わせ、哄笑を浴びた
 
Q:悪かったな でも、大学祭の後、お前すごい人気なんだ 知ってるか?

電話の反応
僕の趣味はいたずら電話だ 心理学を専攻しているので
相手がどう反応するか研究し楽しむのだ
 
その日は、ウソと分かることを言って、相手がどう出るかがテーマだ
「あなたにノーベル賞を与えることになりました」
 
ガチャンと切る者、文句を言う者、、、

何軒目かにどこかで聞いた声がした

「経済学賞でしょ? 昔、私はよくいたずら電話をしたものです
 あなたは、若い頃の私、山中進でしょ?」
 
電話は切れた あれは未来の僕なのか? 僕はノーベル賞をもらうのか?
それ以来、僕は経済学に専攻をかえた

今週の賞
僕が入社して10日ほど経ち、係長が「今週の賞」だと小さな紙袋を渡した

項目8,52、64とあり、総務に行き、200以上の項目が並ぶ書類と照合する
1項目ごとに推薦の多い者に与えられる 少額だが毎週行われるからバカにならない

社員同士でいつも他人の美点を探すのは対立が生まれない
利子がついて、退職する時に上乗せされる
だが、定年がまた延長になり、70歳まで僕が生きられるかどうか・・・
 
“理想の会社”で作文を書かせたら、楽天的というか 困りますなあ」
入社試験の担当者らはため息をつく

走る (1)
少年は全力で疾走した 両側には競争者が現れた
彼は馬になった 矢が飛んで来た 狩人だ
さらに戦車に変身した すると砲弾が飛んで来た
 
眠る少年の頭には電極が付けられ、スクリーンに映る映像を2人の男が見つめる
 
夢は意識下にあるものが浮上する
 彼は現代の競争社会の強迫観念にとりつかれた犠牲者だ」
 
「これはけして珍しくない それを武器に優れた仕事をするのだ」
 
起きた少年:
いやな夢を見たがサッパリした
もう一所懸命にやるのはやめました
これまでがアホらしくなったんです

走る (2)
プラットホームに変わった形の乗り物がかなりの速度で走ってきた
これがわが都市で開発された自慢のシステムです 1人ずつ乗ってください」
 
コンピュータ運転でスピードがどんどん上がり、街の景色など見てはいられない
体が傾き、小さな悲鳴をあげた 急に減速し、吐きそうになった
「助けてくれ!」僕はわめいた
 
ガイド:
じきに馴れます わが市の連中は乗り物の中で昼寝をしますよ
これまでのクルマは勝手に人間が運転していた
コンピュータ運転のほうがけしてぶつからず安全です
新しい乗り物に不慣れな歩行者がぶつかりますが仕方ない
乗ってる側が安全ならそれでいいんですよ
 
(まさに新幹線などに乗る時のパニ障の気持ちと同じ!

走る (3)
わが社は走るロボットの設計に着手した
昔は人造人間と呼ばれたが、極めて精巧で頑丈なものだ
 
産業ロボットは使われていたが、家庭で使うのは不経済だ
お手伝いさん、主婦としての役も果たす
 
もっと人間そっくりに作ろうとするところもあったが
それでは気味悪がられるだろう
 
走るロボットは体重わずか400kg、時速20km/hは出る
それで従来の30%増しの値段に抑えられた
 
なのにわが社が倒産寸前なのは、走るだけでこの値段は高いといわれたからだ
人間とぶつかる事件が次々と起きて、即死した賠償金が高くついた
車道を走ることになると衝突事故が続発し、その賠償金が莫大になった
世の中理屈どおりにいかないものですなあ

走る (4)
ウサギはカメとの競争に負けて不機嫌に帰宅した(急に動物
速く走れるのに、いつも油断して眠ったり、食事をしてしまうからだ(w
 
自宅に夫人はなく、手紙があった

「私は家庭に縛り付けられた毎日がほとほと嫌になりました
 ひとりのウサギとして生涯を全うしたい さようなら」
 
「おのれ! これまでのことを忘れおって!」(侍?!
大小を差して外に飛び出し成敗に行く
 
海辺にたくさんの動物が集まっている
「人間が黒い船でやって来た!」
 
大砲を撃ってきて爆発はしないが、蛇のような黒いものが出て来た
「逃げろ!」
 
ウサギは走ると実際速いのだ 自宅には夫人がいた
「置き手紙の言葉遣いを間違ったことに気づいて修正しに戻ったの」(w
 
黒船の話をしても信じない
夫人「あら出て行くの? それじゃこの家は私にくれるのね」
 
ウサギは走りながら、あの感じでは人間に最初に捕まるのはカメではないだろうかと思い
それは少し愉快だった

新年宴会
会社の新年宴会に行くと、500畳もありそうな大広間だ
社長の挨拶後は自由にやってくれと言われ、席を移して
ついだり飲んだりしていると、民謡を歌い始める者
その舞台を争う者、先祖の仇がいたと真剣を振り回す者、
私もヘビのモノマネをしていた・・・
 
テレビディレクター:
まだダメだね パンチがない 殺人、ポルノ、スパイもない 書き直せ!

酒癖
柔道部のコンパ マネージャーの私は責任者だ
準備の最中、安井という2回生が来た
昨年末に入部し、体格もよいが融通がきかない

安井:酒癖が悪くて、酔うと暴れだすんです
キャプテン:柔道部のコンパだ 暴れたらいいわい!
 
OBに飲めと言われて、安井はどんどん飲んだ
ニ回生に注意されて、安井は彼を見事に投げ飛ばした
三回生もし止めた キャプテンも背負い投げを食らい
「これはすごい新人だ!」と歓声が上がる
 
安井は型通りの柔道をやらねばと、制限されていたが
酔うとブレーキが外れてスムーズに動けると結論したが
練習や試合で酔わせるわけにもいかず
今は彼を「アルコール弁慶」と呼んでいる

立食パーティ
やあやあ、お嬢さん、年いくつ? ゲイボーイを使っているのか
会費は50円 料理もたくさんあるし しかし、どこのパーティだったかな
君も男か? ロボット? あちらは火星人
「私は先月死にましてね」
「新開発のクスリ入りウイスキーです 帰りにはこの水を飲めば記憶が戻ります」
あと16時間続きますよ

ローパーよりの報告
ローパーよりの報告:
今日は宴会というものに出席した 飲み物のうち主要なものは毒、アルコールである
小官は果実入り合成飲料をとろうとしたが、周囲が許さなかった
小官は毒で死亡するかもしれないが、倒れなければ、次の報告を送る
 
次の報告:
アルコールはいい 人間はいいものです 仕事などアホらしい
なにが人類征服だ 皆に喋ってやったがゲラゲラ笑った
報告も面倒だからこれでやめる
 
「こいつもか また1人送り込まないといかんな」

そいつ
そいつは1人乗りの宇宙船で地上に降りた拍子に一部が壊れた
修理するには部品がいる まず、店に入り、服を盗み
追ってきた店員を30人力で倒し、ひきずったまま電機店で材料をとった
 
パトカーが来て、警察に連れて行かれたが、警官を殴り殺し
殺人罪で逮捕された 5000年以上の寿命があるため20年刑務所に入れられても平気だが
別の囚人とケンカになりまた殺した
 
そいつは500回ほど生き返ることが出来るから、死刑の1分後には生き返った
とうとう軍隊が来て爆弾を浴びせ、また生き返った
 
夜空にUFOが現れた そいつの世界の警察だ
そいつは逃げた 捕まったのかは知らないが
地球ではそいつを神さま扱いし拝む宗教ができた
 
「よくある話だ なぜ自分の世界の警察に追われていたんだ?」
無銭飲食をしたんだ 僕は日本一のSF作家になれるだろうか?」

こいつは天才かもしれない

追跡と逃走
ドランダンは走っていた そう生まれついているのだ
追う者も3人と決まっている 追いつかれたらバラバラにされる
 
ドランダンを追う者は65人になった
10年、100年が過ぎ、とうとう追いつかれた

残った14の追跡者はドランダンをバラバラにした
それぞれの部品は天のレンバートールの手で組み直され
今度はドランダダンが走り始める 追跡者は追う
 
天のレンバートールはまだこの惑星に水を与えず
あと500年ほどこの追跡と逃走を眺めるのだ
 
「よく分かる気がする お父さん
 おや、ドランダダンが笑っている 楽しいんだろうねえ

逃げる話
彼が逃げるには様々な理由がある 自殺を決行するのだ
どうせなら壮大なほうがいい
 
最初にタイムマシンを盗んだ 動力が尽きると新しいモデルを盗んだ
1万年飛ぶと動力が尽き、新型を盗んだ
ここまで来れば、地球は消滅しているだろう 70億年は来たはずだ
気づくとタイムマシンは消えていた
どこからかテレパシーが送られてきた
 
お前のような者は、いくらでもいた 私はお前たちのようなものを捕まえている
 逆転宇宙装置で捕まったのだ お前は新しい生命として新世界に誕生するのだ」
 
読み終えた時、目の前の男女は腹を抱えて笑っていた
笑いすぎて2人死んでしまい、僕は殺人罪で起訴され、死刑の判決を受けた

かなえてあげよう
全世界の人間たちに声にならない声が響いた

「お前たちの望みを1人1つずつかなえてやろう
 今から2時間後、その場にひざまずいて5分間、本気で声に出して祈ることだ」
 
僕はそんな変な話は信用出来ないと思いながらも
僕と愛する人たちがいつまでも死なずに幸福であるようにと祈った
 
周囲を見るとわめいていた
「私を神さまにしてください」
「世の中なんて、消えてしまえ!」
「世界中の富を、この手に持ちたい!」
 
世界中で、滅亡や繁栄を祈る者がいたのではないでしょうか
「望みは分かった 今すぐにかなえてやる」
そしてその通りになったのです
 
次の質問に答えなさい
1.地球はどうなったか?
2.これと同様のことが起きた惑星の名前を2つ記入しなさい
 
「こんなもの大学入試で出題出来るか!」一人の教授が叫んだ
若い助教授「こんな分かりきったこと、今の若者には簡単です」
「世の中、変わったのかなあ」
「いや、大学が遅れているだけですよ」

人生設計
アリジゴクがようやく穴を作ると、女のハイヒールでアリごと踏み潰された
女は男に絞め殺された その男はハンターに撃ち殺された
ハンターは執行猶予を勝ち取った 弁護士は喜んだがクルマに轢かれた
 
僕は初めて小説を書き上げた
たくさん金を稼いで、うんと酒を飲むんです
立派な病院に入り、看護婦と結婚する
子どもは3人 僕は悠々と仕送りで暮らすんです
 
何が可笑しいんですか? 僕は幸運を呼ぶ装置も備えている
これがそのボタンです そいつは胸のボタンを押した

運命のいたずら
運命をつかさどる神は、何百冊の分厚い名簿を眺めていた
最後にもっとも幸運な人間と、もっとも不幸な人間を一人ずつ選ぶのだ

神ははるか昔から繰り返していてうんざりしていて、何人かの運命を修正した
名簿の適当な名を指して祝福を与え、もう1つの名に呪いを放った
 
ご賢察の通り、天上の神の官僚体系は腐敗し、事大主義に陥っていた
 
天上の神々が惰性的になったため、地上にも神々が誕生していた
もっとも不運な人間に選ばれたのは根性の神だった
 
産まれてすぐ両親が死に、何度も怪我を負い、入学試験に落ちても根性で乗り切った
人々は彼を神と崇め奉るようになった
 
天上の神々がそれに気づき重加算の不運を送りつけたが
地上の神々は彼に味方し、天上の神々と戦い
天上の神々を地へ落として人間にした 革命だった
神は不死なのでずっと池の中で生きている

今はコンピュータが神と自称している
根性の神は結婚した その女は、運命をつかさどる神が指定した
もっとも幸運な人間だった

仕事場にて
仕事場に入って3日になる 締め切りは昨日だが、どうしてもいい筋書きが出来ない
私はストーリークリエーターなのにアイデアが出てこない
 
壁の向こうを見ると、男がカンバスを前に絵筆を握りうなっている
心を読むと、もう構想がある
おれの心を読んでばかりいないで早くやれよ、という思念が流れてきた
 
僕は集中し、仕事場に小さな踊り子を出現させたりしたが何も浮かんでこない
心を集中し、物語を作る才能のある人物を生み出したが
「わしだって天才じゃないんだ 5日はかかる」と言う
 
アイデア作りのためのアイデアも出てこない
覚悟を決めて、超能力でアイデアを出そうとすると
管理者が瞬間移動でやって来た

「自分が希望して登録した仕事をやる時は、
 その仕事にだけは超能力を使えないようになっているのは分かっているだろう! 真面目にやれ!」

ピッカピカ その(一)
ピッカピカが町に来た そいつは実はロボット爆弾です
命じられた時などに胸のボタンを押すと、周囲1kmが吹き飛ぶ
 
担当技師が酔って、ロボットの人工頭脳を演劇用に入れ替えた
ピッカピカはとてもプライドが高く、脱走した
 
商人が売れば大儲け出来ると話していると、
上空のヘリからロボット爆弾が脱走したと告げた

「ロボットを侮辱しないでください 悔しさのあまり自殺をはかるおそれがあります」
 
総員退去命令が出て、人々は町から逃げ出した

とある街角でピッカピカは1人のおじいさんと会った
「とてもぴかぴかで綺麗だな でもだいぶ汚れてるよ 磨いたらきっと素晴らしいぞ」
 
何日もたち、町の人は帰り、もとのように暮らし始めた
ピッカピカはおじいさんと一緒に暮らし
ひまさえあれば自分のボディを磨いている
 
(可愛いくも、なんだかホロっとする話

ピッカピカ その(二)
候補地を見に来た僕を出迎えた広報部長は「早速ご案内しましょう!」と叫んだ
「この町は名前の通りピッカピカになりました」
 
詳しく言うと面倒だから「ステキ」であります
若い女性アナウンサーが形容に困ると連発する便利な言葉です
 
「あれはピッカピカの乞食です」
「あれはピッカピカ政策に反対する人を処罰するピッカピカの処刑場ですよ」
「あれは配給のスープをもらっています ピッカピカのお椀でないと配給しません」
 
「どうです これなら旅行に最適でしょう?
 もちろん、来る時はピッカピカの服でないといけませんが」
 
「でも、僕の団体はヌーディストクラブだから」
「ピッカピカのヌードならいいんですよ
 ところで、このピッカピカ市は財政難で、チップで生活しています ガイド代ください」
 
報告を聞くと、ヌーディストクラブの連中はみんな「行こう!」と言った
だが、どれが本当のピッカピカか大激論が起きた 結論は当分出そうもない

ピッカピカ その(三)
オンボロ大王は、ピッカピカ王子を呼んだ
大王:国民が貧しいのに、それでは人の心はつなぎとめることはできないぞ
王子:
それは欺瞞です わが王家には国民からしぼりあげた莫大な富があります
金持ちは、金持ちらしく振る舞えばよいのです
 
大王はメチャクチャ親衛隊長に王子を捕らえるよう命じたが姿はなく、家来もいない
兵隊もいないし、国民もいない
 
この文献はいつの時代のものか判断不能である
右の通り、研究結果を報告する 文献研究所長

ピッカピカ その(四)
ピッカピカは外に出た 1年生になったばかりで嬉しいのだ
突然、嵐が襲い、川は渦巻き、消えた
 
その頃からピッカピカは、自分は何の1年生なのだろう?
ピッカピカは本当の名前だろうか?
自分が人間かどうかも分からなくなった
 
振り返るともう家はない
自分がもう1年生じゃないからだと気づいた
 
さっきの嵐の時の池の水が流れてきて、ピッカピカは流された
道に倒れたピッカピカはもうピッカピカではないと気づいた
 
たぶん、あの家からは別のピッカピカが外に出て
そいつも似たようなコースをたどるのだろう

ピッカピカ その(五)
あなたの本をわが社で出させていただくことに決まりました
題名はピッカピカの人生です
 
あなたは生まれも名家のピッカピカ
財産は捨てるほどある、学校も超一流でピッカピカ
お庭に縛られているのは誰です?
 
うちのピッカピカの奴隷です
これからピッカピカのムチで叩きます
 
でもあれは第三惑星の人間に似てますな
我々もこの10日間は人間です 延長すればもっと長くなりますが
 
私は48回期間延長しました スキヤキが好きなので
 
おや、奴隷がふくれてきましたよ
ピッカピカの風船です
 
では決闘を始めましょう
例の話は、両方とも生き残ったら続けましょう
 
それが作法ですからね ピッカピカの決闘ですな
全くいいですなあ
 
 
 

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