メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

絵本『しろうさぎとりんごの木』 石井睦美/さく 文溪堂

2022-10-12 17:21:59 | 
「作家別」カテゴリー内「酒井駒子」に追加します


石井睦美
神奈川県生まれ
『五月のはじめ、日曜日の朝』で毎日新聞小さな童話大賞
『パスカルの恋』朝日新人文学賞などなど受賞

2013年初版

私の大好きなりんごの話だし
うさぎの絵もとってもかわいい!
ココロが癒やされて、豊かになる1冊

以前、樹の絵を見た時にとてもシンプルに描いていたから
キャラクター以外はざっくり描く人なのかなと思っていたけれども
この生き生きとしたリンゴの木はとても素敵






【内容抜粋メモ】
しろうさぎは森の中の小さな家で生まれました
小さな家でしたけれど
しろうさぎにとって必要なものは何でも揃っていました
大好きなお父さんとお母さん








小さな家には玄関だってありました
玄関の脇にはリンゴの木もありました

大きな木ではないけれど
秋になると真っ赤なりんごの実がなりました
うさぎの一家が食べるには十分なくらい








うさぎのお母さんはりんごを使ってジャムを作ります
コンポートというのも作ります

ある日、しろうさぎは初めてジャム付きのパンを食べました







美味しい!

それはねりんごのジャムよ
玄関の脇に木があるでしょう

あの木がこんなに美味しいなんて
早速明日かじってみようと思いました(笑


しろうさぎはいつもより早くおやすみなさいを言いました
早く眠ればそのぶん早く明日が来ると思っているのです







いい子ね
えらい?
すごく偉いよ

お母さんは毛布をかけて
ぽんぽんと身体を優しく叩いて
おやすみを言ってくれました

でもしろうさぎはワクワクしすぎて全然眠れません

でも眠らなくちゃ
じゃないと明日が来ないもん

モゾモゾしていると手に触ったものがあって
取ってみるとお母さんが作ってくれた
ぬいぐるみのくろうさぎちゃん








しろうさぎはベッドの中で
明日が待ち遠しいことなどを話しました

くろウサギはいつまでも聞いてくれました
いつまでも
いつまでも


目が覚めた時は明日が来ていました
なんだ心配なんかしなくてもよかったのね

朝ごはんを残そうかと考えましたが
残したらお母さんに理由を話さなくちゃいけないかしらと心配する

とうもろこしのスープ
りんごジャムのついたパン
レタスのサラダ
どれも美味しくて気が付くと全部なくなっていました

お利口ね
えらい?
とってもえらいわ

お母さんが笑うとしろうさぎはいつも嬉しい気持ちになります

お出かけするから
どちらに?
ちょっとそこまで

そこまでってどこまで?
答えは二つ 本当のこととうそっこのこと
どっちが聞きたい?

本当のことが聞きたいわ

玄関の向こう りんごの下あたり

(子供って正直で本当に純粋だよねw

嘘っこの方の答え聞きたくない?
そうね聞きたいわ

うそっこの答えはねずっとずっとどこまでも

それだとうんと遠くまでって言うんじゃない?
迷子になるくらい
帰って来られないくらい

止めて!
ちょっとそこまで行くだけなんだから











りんごの木に着くと
どこをジャムにしたのかしら?
葉っぱじゃないわ
だって葉っぱは緑色
ジャムはもっと白っぽいの
きっとこの辺だと思う

しろうさぎは自慢の前歯で幹にかじりつきました(笑

痛い痛い!

泣いているとお母さんが心配して飛び出してきて
しろうさぎの背中をゆっくりと撫でて
だんだんと落ち着いてくる

りんご

食いしん坊ね










お母さんはいつまでも笑っています
そんなお母さんを見ていると
しろうさぎも嬉しくなって一緒に笑い出してしまいます

お母さんが使ったのはリンゴの実
リンゴはそのままでも食べられるのよ
ほらあったわ
りんごの赤ちゃん








まだ青い小さなりんごの実を
しろうさぎも見つけることができました

とっても綺麗な絵!

家の中に入ってお母さんはりんごの絵を書いてくれる







りんごはいつ食べられるの?
秋よ

秋っていつくるの?
夏が終わったら

しろうさぎはそれがいつなのかやっぱりよくわからないのです


でも心配は要りません
この家にはしろうさぎに必要なものは全部揃っているからです

大好きなお母さんもお父さんも
赤いクレヨンも











お母さん絵うますぎ!
これは美大を出た人の絵だよね

ちっちゃいお家でも
今あるものにとても満足して幸せなことが伝わってくる

それにとても大切なのは
子どもの心に寄り添って
不安な時には背中をポンポンとたたいてあげたり
なんでも褒めてあげることだね

毎日が忙しすぎると
こうした些細なことも忘れがちになってしまうから



コメント

ハヤカワ・ノヴェルズ『カーテン ポアロ最後の事件』 アガサ・クリスティー/著 早川書房

2022-10-10 13:44:03 | 
昭和50年初版

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【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください




これはアガサの最初の小説『スタイルズ荘の怪事件』を読んでからのほうが良かったなと
読み始めてから気づいたけれども

ポワロ最後の事件がどうしても気になったから
順番が逆になってしまった

ポアロの最後を飾る作品をずっと前に書いていたのは驚き

また犯人当てに参加して、最も犯人像から遠い人物を推理して
ヘイスティングズの娘ジュディスか?

いや、彼女の犯行は冒頭に匂わせてあったから
いかにもおっちょこちょいぽいフランクリンか?

それともまさかアガサは、最後にポワロを犯人に仕立てた?!
命が短いのを知って、夫婦仲や親子仲を取り戻したり
暗い過去に苦しむ女性を救ったり?

犯罪を憎むと同時に人情もある人だよね
最後にこれくらいのインパクトは用意したかも…!?

まだ1度も読んだことがないミス・マープルものも気になってきた
テレビで見かけたことがある
「ジェシカおばさんの事件簿」みたいな感じかな?



<登場人物>
エルキュール・ポアロ:私立探偵
カーティス:ポアロの従僕
ジョージ:ポアロのもと従僕

アーサー・ヘイスティングズ:陸軍大尉。ポアロの親友
ジュディス・ヘイスティングズ:ヘイスティングズ大尉娘。フランクリン医師の秘書

ジョージ・ラトレル:スタイルズ荘持ち主。大佐
デイジー・ラトレル:ラトレル大佐夫人

ジョン・フランクリン:医師
バーバラ・フランクリン:フランクリン医師妻
クレイヴン:フランクリン医師夫人看護婦
サー・ウィリアム・ボイド・キャリントン:准男爵。バーバラ・フランクリン旧友
スティーヴン・ノートン:スタイルズ荘宿泊客
アラートン:スタイルズ荘宿泊客。少佐
エリザベス・コール:スタイルズ荘宿泊客



【内容抜粋メモ】

スタイルズ荘の宿泊客
ヘイスティングズの妻シンシア・マードック
若くして遺伝性のアルコール依存症で亡くなり/驚
アルゼンチンに葬られている

息子の1人は海軍、もう1人は結婚してアルゼンチンで農場経営
娘グレースは軍人に嫁いでインドにいる

ポワロは時々危険な心臓発作を起こし
関節炎のため、エジプトに療養に行ったが
かえって悪くなりすっかり痩せて衰えている

従僕のジョージは父が病気で故郷に帰っているため
カーティスが世話をしている

高級下宿(ゲストハウス)となったスタイルズ荘にいて、ヘイスティングズを誘う

ヘイスティングズの下の娘ジュディスもいる
理学士の学位をとり、フランクリン医師の助手となって働いている
フランクリンはいつも不器用であちこちにぶつかってばかりいる

フランクリンの妻バーバラはとくにどこが悪いというわけではないのに
人の気をひくためにあちこちが痛いという話ばかりで
看護婦のクレイヴンは嫌気がさしている

ノートンは小鳥気違いで気弱い男

サー・ウィリアム・ボイド・キャリントンはバーバラの幼馴染
溌剌とした男らしさでヘイスティングズのお気に入りとなる

アラートンは女たらし

エリザベス・コールは美人だが、どこか悲し気

ポワロはこの中に仮にXと名付けた殺人犯がいると話す

5つの殺人事件に関わり、自分では手を下さず
常に誰からも疑いようのない犯人が用意されているのが特徴

ポワロ:
Xはこの家にいるのだよ 近いうちに殺人事件が起きる ここで
やれることは3つ
狙われている人物に警告すること
犯人に警告すること
犯人を捕らえること

しかし、ポワロはヘイスティングズにXが誰かを
どうしても明かさないためモヤモヤする

ポワロいわくヘイスティングズは正直で顔にすぐ表れてしまうから
犯人に気づかれたら危険だというのが理由

ジュディス:人によっては殺されても文句の言えない人もいるのよ

ヘイスティングズはジュディスとアラートンが親し気なのが心配で
忠告すると、もう大人なんだからと怒る

ポワロ:女は常に自堕落な男に惹かれるのだよ


ブリッジ
ジョージは昔、部下から怖れられる大佐だったのに
今では下宿を切り盛りする妻デイジーに完全に尻に敷かれている

ブリッジで熱くなったデイジーはジョージをひどく罵り
一緒にゲームをしていたヘイスティングズらはいたたまれないほど

ノートンはジュディスとアラートンの仲が気になると
ヘイスティングズに漏らす


カラバル豆の研究
フランクリンとジュディスはほとんど研究室にこもって
カラバル豆の実験をしている

フランクリン:
西アフリカの部族は、この豆が正邪を裁くと信じていた
食べると罪あるものは死に、罪なき者は助かる
現地でもっと調査しなくては
魂を売ってでも・・・
僕にだって殺してやりたい人間がいくらでもいます
人類の約80%は抹殺されて然るべきですよ

去年、アフリカで研究する話を受けたが
バーバラが反対してダメになったそう


ヘイスティングズはウィリアムに誘われてナットンの豪邸を見に行く
叔父から多額の遺産をもらって裕福な暮らしをしている
下宿人の中で一番金持ちだろう

ヘイスティングズはポワロにウィリアムがいかに魅力的か話すと

ポワロ:
退屈な男だ 要するに見掛け倒しというやつだよ
記憶が悪いから人から聞いた話を話した当人に後でまた話す始末だ

エリザベス:
ここに集まってくるのは落伍者ばかり
人生に打ちひしがれ、年をとり、希望もない人

エリザベスは5つの事件の1つの被害者と分かる
姉マーガレットが妹たちのために父を殺した事件
姉が犯人だといまだ信じられない様子


猟銃事件
ジョージがみんなに酒をおごると言って家に入ると
デイジーが店の酒をタダで飲ませるなんてダメだと言う声が聞こえてきて

また気まずくなり、ウィリアムは兄を撃ち殺した弟の話をして
ノートンはさらに空気が重くなる話をしてしまう

ジョージが鳥を狙って撃った弾はデイジーの肩に当たり
ひどく出血して、大きなショックを受けるジョージ

狩猟会の舞踏会で一目惚れした思い出を語り
意識が戻ったデイジーが夫に会いたいというと喜んで駆けつける

ポワロは、これこそXの仕業だと話す

バーバラ:
健康でない人は生きる資格がないから
静かに死ねばいいんですわ
私がどれほどジョンの重荷になっているか分かっています
ジョンは本当に聖者のような人です
あの恐ろしい豆で自分を実験台にするんじゃないかと気がかりで

その後、安楽死の話題となり

ジュディス:
衰弱している人は決定する気力がない
代わって決めてやるのが病人を愛する人の義務ですわ
役に立たない人はこの世から取り除くべきです

ノートン:
アラートンは妻がいるのに以前から若い娘にちょっかいを出して
後に女性は睡眠薬で自殺した

ヘイスティングズはジュディスが心配でならない

ノートンは双眼鏡で珍しい鳥を見た後、なにか目撃して
ジュディスとアラートンではないかと思ったヘイスティングズが見ようとすると止める

ヘイスティングズ:今後、あの男と付き合うのを絶対に禁止する!



四阿
ヘイスティングズはジュディスとアラートンがキスするのを見て激怒するも
ノートンに連れ戻される

アラートンは明日イプスウィッチに、ジュディスはロンドンに行き
落ち合う約束をするのが聞こえる

ヘイスティングズはとうとうアスピリンの瓶に睡眠薬を入れ
ウイスキーに混ぜてアラートンに飲ませる計画を立てる

ポワロに毎晩その日あったことを手足となって報告していたが
頭痛がするというと、ホットチョコレートを飲むよう言われ
その晩、アラートンを待つ間に寝入ってしまい
自分がしようとしたことを思い返して深く後悔し、ポワロに打ち明ける

「暗黒の日も、明日まで待てば過ぎ去るものだ」

ポワロ:
ここに来て間もなく、私の部屋のカギがなくなったから
代わりをつくらせた
夜は内側から戸締りしておいたほうがいい
私ならジュディスを信用するよ

アラートンはイプスウィッチに出かけたが、ジュディスは研究室にこもる
駆け落ちをしなかったことに心底ほっとするヘイスティングズ

バーバラとウィリアムは買い物に出かけて、バーバラは疲れたと言い
クレイヴンは友だちに会う予定をキャンセルせざるを得なくなった

フランクリン:そうだ近道だ それが一番いい方法なのだ

ラトレル夫婦は仲が戻り幸せそう

結婚と離婚の話題になり

フランクリン:
男は妻を選ぶ
妻が死ぬまで夫の責任なのです


コーヒー
とても上機嫌なバーバラはみんなを部屋に呼びコーヒーを淹れる
流れ星を見て、願い事をするジュディスら

ヘイスティングズは妻のことを思い出して涙し
ジュディスに見られないように書架を回して『オセロ』を読む

『昨日、お前を見舞ったあの安らかな眠りは二度と訪れまい』

「ずっと前からやろうと思っていたことをとうとうやった」と
フランクリンも上機嫌(伏線がたくさんあるな

その24時間後、バーバラはカラバル豆の毒で死んでいるのが見つかる

警察の調べで、バーバラは何度か自殺をほのめかしていたことがあり
ポワロが研究室から瓶を持ったバーバラを見たと証言し自殺と判断されるが
ヘイスティングズには、これもXの仕業だと明かす

ポワロ:
これは私の最後の事件になるだろう
機械はすり減るものなのだ
自動車のエンジンのようにつけかえるわけにはいかない

フランクリンの見立てでは、いつポワロの心臓が止まるか分からないと言われて
絶望するヘイスティングズ

妻が死んだばかりなのに、フランクリンはまたアフリカに行けることを喜ぶ

フランクリン:
夫婦仲も互いにとっくに冷めていた
最初の誘いを断ったのは、経済的な事情から
妻が自殺したとは信じられないが
私は真相を知りたくない

ノートンが見た事柄についてポワロに相談してみたらとすすめるヘイスティングズ

ポワロ:
用心するんだヘイスティングズ
今夜、ノートンが私の部屋に来るようにしてくれ

ヘイスティングズはエリザベスに父を殺したのは姉ではないと告げる

ウィリアムはナットンへ引っ越す

ウィリアム:
この家は邪悪なものに憑かれている
バーバラは世界中で一番自殺しそうにない女ですよ

ポワロ:
Xは恐ろしく頭がいい男だ
私に万一のことがあったら、必要なヒントはちゃんと準備してある
君を真相の解明に導いてくれるはずだ

ヘイスティングズは心の奥底ではすでに知っている気がする



夜、ノートンが部屋に入り、内側からカギをかけるのを見たヘイスティングズ
朝、いくら呼んでも来ないため、部屋を開けるとノートンが死んでいる

額の真ん中を撃たれて
カギはポケットの中の密室事件
警察は再び自殺として片付ける

ポワロ:
身長は誤魔化せるものじゃない
ここにいる者はみな背が高い

「わが友よ(シェー・ラミ)」

これがヘイスティングズにかけた彼の最後の言葉となる



ポワロの死
警察は心臓発作で死亡したと判断

ヒントを書いた書類はなくなっている
その代わり、『オセロ』と『ジョン・ファーガスン』の本があり
「ジョージと話したまえ」というメモが入っている

ジュディスはフランクリンと結婚して一緒にアフリカに行くと話す

ヘイスティングズはジョージに会いに行く
父の看病ではなく、カーティスを雇うために休暇をもらったようなものだと話す
今度はカーティスを疑うヘイスティングズ


ポワロの手記
ポワロの死の4か月後、法律事務所に預けられたポワロの手記を渡される

ポワロの手記:
1人の人間が5つの殺人事件に関わるとはあり得ない
『オセロ』には殺人芸術の完璧な見本がある

人はみな潜在的殺人者だ
どんな人間にも、殺してやりたいと思うことがある

Xのテクニックは良心の抵抗力を押しつぶす方法なのだ
“食べればなお食欲が出る”というやつだ

ここで犯罪が起きるという私の確信には根拠があった
犯罪を犯すのは私自身だったから

私は無実の人間を救う、殺人を阻止するのを生涯の仕事にしてきた
だからこれしか方法がなかった

ノートンがXだった
彼は流血を嫌い、弱虫と思われ、面目を失ったため
あまり注意を払われないことを利用して
大胆に振る舞う機会を待っていた

フランクリンとジュディスは愛し合っていた
四阿で会っていたのはこの2人

クレイヴンが会うはずだった友人とはアラートンのこと
2人はねんごろの間柄でアラートンは二股かけていた

ノートンが双眼鏡でなにか見たというのもウソ

Xの罠にヘイスティングズもかかり、アラートンを殺そうとした晩
チョコレートの中に睡眠薬を入れて眠らせた

バーバラを殺したのはヘイスティングズ!
バーバラはフランクリンを殺して、ウィリアムと結婚しようと
コーヒーのカップに毒を入れたが
書架を回したことに気づかず自分で飲んでしまった!

私は私の言うことを疑問も抱かずに信じてくれる人間が必要だった

歩けないフリもウソ
それがバレる怖れがあるからジョージを帰らせた

ノートンにXの話をして、すすめたチョコレートの中にも睡眠薬を入れた
ヘイスティングズが見たノートンは、ポワロの変装姿

額を撃ってから、部屋に戻ってこの手記を書いた
射殺は私の好みを示している
シンメトリーを考慮して額の中心を撃った

フランクリンとジュディスは真相を知っていた

これを読んだら、エリザベスにノートンが犯人だと教えてやりたまえ

今は幼い子どものようにこう言うだけだ
これが正しかったか私には分からない

さようなら、わが友よ
思えば素晴らしい日々だった・・・


ヘイスティングズはノートンの額を見て気づいていた
カインの印そっくりだと




エルキュール・ポワロの死の謎
アガサは80歳に80冊目の『フランクフルトへの乗客』を出した

「毎年クリスマス用に1冊書かないと、地球が軌道から外れる」と催促する
読者のために新作を発表

自分の死後も読者が2年間楽しめるように2編用意していた
1つはポアロ、1つはマープルという噂は以前から有名だった

『カーテン』は『書斎の死体』の後に書かれた
1冊は夫、1冊は娘に贈り、死後、出版することで収入が得られることを望んだ

なぜ予定を変更して生前に発表したか?
映画『オリエント急行殺人事件』の成功でポアロを待ち望む声が高まったが
病弱で新作を出せなかったからという話もある

アガサ:
ポアロにはいささか倦きているが
死なすことができないのは、死ぬ前に物語を作らねばならないから
それはポアロを死なせるより難しい

時代が進むにつれ、ポアロは非現実的になるように思う
今日では私立探偵が事件にあたることはない


(寅さんが現代にそぐわなくなってきたのと似てるな

アガサの絶頂期は30~40年代


ニューヨーク・タイムズは、ポアロの死を黒枠の囲み記事で大きく報じた

「どんな辺鄙な町の図書館員でも『カーテン』を知らないものはいない」

ポアロティアンのエッセイ『さよなら、ポワロ』

ミス・マープル『カリブ海の秘密』『復讐の女神』


コメント

文研の名作ミステリー7『英仏海峡のなぞ』 F・W・クロフツ 文研出版

2022-10-09 12:09:30 | 
昭和52年初版 中尾明/訳 山本卓美/デザイン 樽喜八/イラストレーション


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フリーマン・フロフツ
1879年 アイルランドのダブリン生
17歳で鉄道技師見習いとなる
40歳頃から推理小説を書きはじめる


あとがきにもあるが、フレンチ警部
ホームズやポワロのような華やかさはなく

何度も現場を行き来し、同じ人に何度も話を聞き
推理を実際に確かめて捜査を進めるため
地味だがリアル

一人一人関係者を洗い、間違えても諦めない
事件が解決するまでほとんど不眠不休でハードワーク

一人でなんでもやるのでなく
地元や知り合いの刑事、専門家の力を借りる
紙幣の番号を調べるなんて途方もない作業だな!

犯人もなかなか計画的で、最後まで誰が犯人か分からない代わりに
分かっても意外性もない

淡々とした文章で、とにかく船と海に詳しい人なんだなということは分かる



【内容抜粋メモ】











■ヨットの死体
チチスター号はイギリスのニューヘイブンからフランスのディエップへ向かう途中
ニンフ号と書かれた1隻のヨットを見つける

そこには銃で撃たれた男の死体が2体
どちらも船に乗るような服装ではない









その後、ノランという男がモクスンを探していると
ランチに乗ってやって来る

死体を見て、モクスン証券会社の社長モクスンと
副社長ディーピングだと分かり驚く

フランスのパスツールという金融業者に会う予定だった
昨夜ロンドンで大きな夕食会では2人とも元気だった

もう1人の重役レイモンドも一緒に行く予定だったが
待っても来ないため、先に船を出して来た

現場に凶器の銃はなかった

その後の調べで、モクスン証券会社は倒産寸前だと分かる
ノランにも尾行がつけられる


■フレンチ警部
フレンチ警部が倒産の話をすると、全面否定するノラン
会社経営は社長と副社長が行っているため、重役も知らされないことが多い

会計主任のエスデールはパリに出張中

ディーピングの息子に死体検証をしてもらい
父がずっと元気がなかったと話す

モクスンらは気心の知れた者に撃たれたと推理
デッキに血の跡がついていることから犯人が負傷している可能性もある
そして逃亡には船を使った

モクスン証券会社は噂通りに倒産する
金庫から150万ポンドが消えている

モクスンらが持ち逃げしようとしたと思われるため
銀行に連絡して、札の番号を調べさせる


フレンチ警部はまずレイモンドを疑い、捜査する

重役の1人ノールズは風邪で休んでいた
倒産しそうなことをノランが知らないはずはないと答える


■スピード実験
チチスター号の船長はほかにも黒い船を目撃している

フレンチ警部はそれぞれの船の速さを聞いて
アリバイと死亡時刻が一致するかを計算させる

ノランの乗っていたランチは平均10ノット
13ノット出すことはムリと分かり、容疑者から排除する


■2つのスーツケース
高額の札ではすぐ足がつくため、5、10、20ポンド紙幣に
あらかじめ換金されていて、計画的犯罪だと分かる

当日、大きなはしけが使われた
海事専門家の警部に聞くと、現場は最も船の往来が少ない場所だという

事件は大々的に報道され、レイモンドの服装、特徴が指名手配される

黒い船に乗っていたのは、悪党3人組
別々に話を聞くと食い違いがあり、ウソをついている

レイモンドはフランスに渡り、服を買い、髪を染め、ホテルで食事をとった
彼によく似た男がスーツケースを買った
そこに盗んだ現金を詰めたか?

取引先の銀行から問題の番号の札がたくさん見つかる
事件の数か月前から、流通させていた


■ダイヤモンド
150万ポンドで宝石商からダイヤモンドに替えたと分かる
外国で磨いてしまえば証拠が消えてしまう

ダイヤモンドを買ったのは小指が曲がった男エスデールと思われる


■麻薬
レイモンドが船のかまたき人夫として働いていると船長から連絡が入る
レイモンドを逮捕すると、殺人を否定

はしけに乗り、ニンフ号に合流した後、麻薬入りのウィスキーを飲まされ
海岸に寝かされたいたと話す

新聞で事件を知り、疑われるのを恐れて船員になりすました

悪党3人を「事後従犯」の罪で悪魔島に送ると脅して
正直に話せば、罪にしないと約束すると

モクスンから金をもらい、レイモンドを海岸に運んだと明かす
その後、殺人事件と分かり、怖くなって偽証した

レイモンドの疑いは晴れる



■エスデール
エスデールがパリに向かったと見せかけて
イギリスに戻り3人を殺したのか?

船外モーターを買ったことが分かる

死体収容所から連絡があり、死んで相当経つ銃殺死体が
エスデールと分かり、捜査はまた振り出しに戻る

ニンフ号の血の跡は、エスデールを船から落とした時のもの

ノールズが風邪をひいたとウソをついているのか?

ニンフ号に2つのくぼみを見つけたフレンチ警部はついにひらめく


■くぼみのなぞ
くぼみは船外モーターを取り付けた跡
ランチに付ければ13ノット出すことが可能になる

ノランに犯人はノールズと思わせ、モーターの話をして動くのを待つ

予想通り、ノランはモーターを外しに来て
船の影からダイヤモンドを入れた袋を取り出す







フレンチ警部が入ると、時限焼夷弾を仕掛けてあると気づく
銃を使えば船ごと爆破され、ダイヤモンドも燃えて消える

銃をつきつけられたフレンチ警部
船の外から部下がノランの手を撃ち抜く








暗闇の中で格闘となり、フレンチ警部は失神する
意識が戻ると、事件は解決している

モクスン、ディーピング、エスデール、ノランの4人が
現金を持って逃げようとして、ノランは3人を撃ち
エスデールを海底に沈めた

小指を曲げたり、ポケットに隠すことでエスデールと思わせ
捜査をかく乱し、後でダイヤモンドを持ち出すつもりが
尾行に気づいて計画が狂った

モーターの話で自分が疑われていることを察知して
フレンチ警部も巻き添えにしようとして失敗

ダイヤモンドは投資した人々への支払いにあてられ
損害を小さく食い止める

フレンチ警部は警視に昇格できるかと期待するが
副総監は次の仕事を命じただけだった

エリスン副総監:
負傷が回復したら、メイドストーン行きの列車に乗ってくれ
アイルズフォード強盗事件を調べて欲しい




解説 中尾明
ホームズやバン・ダインが生んだファイロ・バンスなどは天才型の名探偵
比べて、フレンチ警部はありきたりの警察官で努力型の名刑事
人間味があり、推理小説ファンに広く愛されている




コメント

怪盗ルパン名作選集 4 水晶の栓 M・ルブラン 秋田書店

2022-10-08 11:39:18 | 
昭和60年初版 訳/中島河太郎・松村喜雄 表紙・挿絵/斎藤寿夫


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これも一気読み
江戸川乱歩がリストに入れていただけあって
本当に二転、三転、よんてん、ごてん、ろくてん、、、

どれだけルパンがとことんまで追い詰められたことか!

ルパンシリーズも面白いなあ
全巻読みたくなってきた

「怪盗ルパン名作選集」全6巻






「世界怪奇スリラー全集」の6巻「世界の円盤ミステリー」て超気になる!







毎回、美女が出てきて、結婚を申し込んでないか?w
フランス人だから恋愛重視なんだな

初版本で貴重
とてもいい状態で読まれているのはさすが図書館
閉架なのは残念

挿絵も時代を感じさせていい味が出てる
刑事や乳母ですらが目の前で見ても見抜けない変装の名人って!?

少年探偵団にも似た要素がいろいろ出てくる
縄ばしごとか、義眼とか

美術品を乗せるのも手漕ぎボートってのんびりした時代
ルパン三世ならモーターボートだよね


■はじめに
怪盗アルセーヌ・ルパンの盗みは一種の趣味で
富豪、政治家など裏で不正のにおいのする特権階級から正々堂々と盗む

時には警察とは別の方法で悪人を追及する
すると警察がコケにされたことになり大衆は拍手を送る



【内容抜粋メモ】


■水晶の栓
9月の末(ちょうどコレを読んでる時期とリンクした/驚

ルパンは信頼の部下ジルベールとボーシュレーに教えられた屋敷に盗みに入る
屋敷の主人ドーブレック代議士は芝居を観に外出





下男レオナールもパリに行ったはずが家にいて
ボーシュレーはノドを刺して殺してしまう

ルパン:日頃から人を殺すことだけは固く禁じているはずなのに、なぜ?

死ぬ間際に警察に通報したせいで、屋敷を包囲される
ルパンは部下を必ず助けると誓って、その場から逃げる
盗んだ女神像に帽子をかぶせて、隠れ家に戻る

2人が躍起になって探していたモノを見ると、水晶でできた栓
それをマントルピースに置いて寝て起きたら消えていた

寝室のカギは閉まっていたし、この隠れ家を知るのは部下のみ


■怪紳士ドーブレックと警視庁事務総長プラビル
ルパンは変装してドーブレックの屋敷を見張ると
大統領のお気に入りプラビルが屋敷を見張っている
彼らもまた水晶の栓を探していると分かる

ドーブレックは目が悪いのか、普通のメガネの上に黒いメガネを二重にかけている
召使から入ってきた人数が9人と聞き、出て行ったのが8人で
1人屋敷内に潜んでいることを知り
カーテンの影に隠れたルパンを警官と思って、プラビルに手紙を渡すように言う





シャンゼリゼ近くの隠れ家にミシェル・ボーモンとして住んでいるルパン
下男のアシルは忠実な部下

自分のいない間に女性の客があり、ジルベールからの手紙を盗んでいったと分かる
この隠れ家も前と同様、ドアの板の1枚が細工してあった


■乳母ビルトアール
乳母ビルトアールが料理女としてドーブレックの屋敷に入り
水晶の栓を探しつつ、ルパンに報告

屋敷に侵入すると、美しい女性が入って来て
ドーブレックをナイフで殺そうとして失敗して泣く






ドーブレックは上流社会の紳士らを脅迫して得た金で富豪になったと分かる

ルパンはロシア貴族に変装して、ドーブレックと女性の芝居見物の隣りの席に座る
電話で席を外したタイミングで隣りに行くと
女性は昨日ナイフで襲っていた同一人物

ルパン:ドーブレックは共通の敵です 私があなたを救おう

ここでもドーブレックにバレて、空手チョップで応戦し(!)
その間に女性はクルマで逃げる







運転しているのはルパンの部下
生まれて初めて部下に裏切られたショックで茫然とする

監獄にいるジルベールから「親分、怖い、助けてくれ」という悲痛の手紙が届く


■再び盗まれた水晶の栓
公園でビルトアールから水晶の栓を手に入れるが
いつの間にかポケットからなくなっている

夜中、ドーブレックの屋敷に入る賊の姿を見張っていると
外した板から入って行ったのは、6、7歳の男の子ジャック







ジャックを探しに来る、母クラリス(!
ルパンを裏切った部下グロニャールとル・バリュも一緒

ルパン:
私に何もかも打ち明けてください
私の目的はジルベールとボーシュレーの命を救うことです

クラリス:
夫は3年前に亡くなった代議士のメルジー
ドーブレックは私との結婚を迫り、メルジーを脅して自殺させ
息子ジルベールを悪の道に誘いこんだ



■運河建設不正事件
フランスの政界の大物27人が起こした有名な収賄事件
その名簿をドーブレックが入手して脅迫
メルジーの名もあった

名簿の紙は水晶の栓の中に隠してあるため
クラリスはジャックを使って盗み出したが
中には何もなかった

最初にドーブレックの屋敷に盗みに入るようルパンを騙した首謀者はボーシュレー

ルパン:
私はまだ負けたことのない男です
ドーブレックに二度と会わないと約束してください



■ジャックを誘拐
サン・ジェントルマンの女友だちの家にクラリスを送るが
ジャックがドーブレックに連れ去られ、絶望して服毒し命は助かった
今夜12時までにジャックを助けると誓うルパン

ベルヌという医者に変身してドーブレックに会い
クラリスが服毒したことを伝える

ドーブレックはまたもやルパンだと見破り、警察に電話
ビルトアールも乳母と分かっていた
隠れ家の住所まで知っていて、警察を向かわせる
今度もルパンの完全に負け

ドーブレック:
オレはこの復讐に20年もかかった!
クラリスがオレと結婚しないかぎり、ジルベールは間違いなく死刑になる

ルパン:27人のリストはオレが頂くし、ジルベールは死刑にはしない

クラリスにジャックを返して、ドーブレックを誘拐する計画を立てるが
ジルベールの死刑が確定となる

ルパン:今夜すべてが解決する と約束するも
ドーブレックは4人組に連れ去られたと分かる







■ドーブレックを誘拐
ルパンはジャックの家庭教師ニコルに変装してプラビルに会う





27人の中の誰かが誘拐犯
ステッキの握りにナポレオンの横顔があったことから
ナポレオンに仕えたコルシカ人の子孫、アルビュフェ侯爵が誘拐犯だと推理
他の3人は息子たち

モンモール大公と狩りに出かけた隙に古城を調べる
ドーブレックは塔の上に監禁され、息子らが見張っている

昔、恋人を救おうとして男性がこの塔をのぼったという歴史を読んで
同じ方法を一か八か試してみるルパン

ハシゴをつなぎ合わせて絶壁を登り、爪が剥がれる/汗×5000



■拷問
ドーブレックは侯爵に脅され、息子らに拷問を受けている
底なしの地下牢に入れられたら、助かる見込みはない
とうとう「マリー」とひと言言うのが聞こえる

彼らが去った後、ドーブレックの従妹に書かせた手紙を投げ込み
鉄格子をやすりで切り取り、縄梯子をおろす

ドーブレックは弱ったフリをしていたが、ルパンの肩にナイフを刺して
1人でハシゴを降りると銃弾が聞こえ、ルパンは気を失う

ここでもルパンの敗北に終わる







■ジルベール死刑まで1週間
ルパンは部下に助けられたが、肩の傷で高熱が出て何日も寝込む
ドーブレックも重傷のまま従妹の家にいるところを目撃される

侯爵は刑務所で動脈を切って自殺

ドーブレックが警察に見張られている屋敷に戻り
20秒ほどで出たと報告を受ける


■クラリスの追跡
クラリスはドーブレックを追い、ルパンと部下はクラリスを追うが
ことごとくすれ違って、その都度、ホテルや汽車のスタッフから伝言を受ける







処刑はあと2日!

プラビルは27人のリストにはないが、前代議士のポラングラードに頼まれて
大金を収賄したと分かる

ドーブレックはクラリスを食事に誘い
ルパンらは元刑事で秘密探偵社のジャコブに騙されて
今ごろはイタリアにいると明かし
処刑には間に合わないと絶望したクラリスが結婚を受けようとすると
ルパンが現れ、ドーブレックにクロロフォルムをかがせて気絶させる








■愛用のマリーランド
屋敷からドーブレックが持ち出したモノで「マリー」と言えばタバコの銘柄
その中に水晶の栓が入っていて、2つに割るとリストの紙が出てくる!

ドーブレックをトランクに詰めて、部下にクルマで運ばせ
ルパンとクラリスはドーブレックが用意した汽車で帰る


■大統領の特赦
プラビルにリストを渡すのと引き換えにジルベールとボーシュレーを救うよう取引する
流刑地送りにすれば脱獄できる

プラビルは小箱の中の紙と照らし合わせるが
すかし模様のかぎ十字のすかしがないから、その紙はニセモノだと言う

プラビルはニコルがルパンだと気づき、大勢の警官に伝える

ポラングラードはロンドンに出かけて明日の晩でないと帰らない
最後の切り札も万策尽きて、眠り込むルパン


■死刑当日
先に断頭台に連れて行かれるボーシュレーが撃たれて死ぬ
死刑執行人は肩を撃たれて騒然となり、ジルベールの死刑は明日に延期となる

ルパンはアジトを抜け出し、近くの店の高い所からボーシュレーを撃ったと分かる


■ルパン×プラビル
クラリスがドーブレックの心臓に針を刺し
本物のリストのありかを聞き出す

クラリス:いつもメガネで隠れているこの人の目が見たいわ

黒いメガネを外すと、左目は義眼 その中にリストが入っていた!
用心深いドーブレックは水晶の栓に入れたと思わせて、常に身につけていた

プラビルに渡すと、ルパンを逮捕すると言い出す

ルパン:
大統領の特赦とルパンをここから無事に出さないと
4大新聞社にプラビルの収賄について書いた手紙が渡る
ジルベールの脱獄した2か月後に手紙を返す

ポラングラードから買い取るために使った4万フランの小切手と
半年以内に警視庁を辞職すること

プラビルは観念して警戒を解くよう伝え、大統領の特赦を持って来て
4万フランの小切手を渡す







ドーブレックが来て、ポラングラードはロンドンにいると話し
プラビルがルパンからもらった手紙は白紙と分かる

慌ててポラングラードに会うと、手紙は売ったという
売った相手はルパンの部下だった

背後でドーブレックが自分の頭を撃ち抜く音がする

ルパン:静かに眠れよ








終身刑に減刑されたジルベールは、流刑地に行く前に脱獄

ルパンが筆者(ルブラン)の家でその後の話をする!

クラリスにプロポーズしたが
結婚したいなら泥棒稼業を止めることと言われてフラれたと明かす

ルパン:
でも、彼女は僕を愛していた
世の中の女性で、僕を愛さない者はいないからね


うぬぼれにシラけたが、それもルパンらしいところだ


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絵本『小さな犬』 町田尚子/著 白泉社

2022-10-07 11:13:54 | 
「町田尚子 まとめ」に追加します


2007年 初版

1994年 ひとつば展入選
『うそつきの進化論』 NHK出版



小窓みたいに絵を覗ける




犬の柔らかいカラダ、よく動く目、耳、シッポなどが見えてくるようだ

おかっぱの女のコもカワイイ
色も鮮やかで、とても丁寧に描かれていて
町田さんの絵と文は本当に好き

なんだか分からず泣いている女のコのために
ボタンを拾ってきてあげたり
いじめっ子に仕返ししたり

得意の鼻、耳などを使って
なんとか助けてあげたいと一生懸命考えて手伝う






















動物の無償の愛ってこんなだよね
そばに座って涙を舐めると
ようやく笑顔になる女のコ










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『あした、せかいが』 三角みづ紀

2022-10-06 13:29:58 | 
たしかインスタで紹介されてた

ザラザラした紙に絵の具を自由に重ねて
写真に撮ったみたいな感じ
微妙な色合い、質感がちゃんと出ていてスゴイ







【内容抜粋メモ】







明日、世界が終わったら何をする?

夕ご飯の用意をして
空を飛ぶ練習をして
花の種を植える

感謝して、幸せだったねと言い合う2人




私なら何をするだろう?と考えさせられる
私は家族とZOOMしたいけど
みんなでそうしたら回線混んで繋がらなそう

ムリしてでも新幹線に乗って帰省して
家族と一緒に過ごしたいかな
でも交通機関も大混雑しそう


1時間後に世界が終わったら
という投げかけもあるけど
やっぱり家族に「ありがとう」と言いたいな

世界の終わりの時も、一人で部屋にいそうだから
私をずっと支えてくれたモノたちにも感謝

友だちにも感謝

こうした問いかけをすることで
自分が結局なにを一番大切に思っているかが分かるのかも



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おばけ話絵本 5『ばけねこ』 杉山亮/作 ポプラ社

2022-10-05 12:10:20 | 
2011年初版

町田尚子さんに似たテイストの絵に惹かれた


【内容抜粋メモ】




父親と暮らしている女の子

飼い猫のタマがいなくなり
猫は年を取ると猫耳山で最期の時を迎えると聞いて
行っちゃいけないと言われたのにこっそり出かける
心配になった飼い犬のシロがついていく






森に入ると霧に包まれた家の明かりが見えて
入るとおかみさんが泊まって行きなさいとすすめる






おばあさんが部屋に入ってきて

私がタマです
ここは猫屋敷です
猫は人間になり人間は猫にされてしまう
朝になったらすぐにお家に帰りなさい

夕飯が運ばれてきますが
どんなに美味しそうでも食べてはいけません
猫になってしまいます

(むしろ猫になりたいけどね







その後おかみさん達が美味しそうなご馳走を
沢山持ってくるけれども食べずに断る






おかみさんが行灯を持ってくると
障子に映った影には猫の姿

びっくりして月明かりの中、外に逃げると
秘密を知られたからには返すわけにはいかないと
たくさんの猫が追いかけてくる

お湯をふくらはぎにかけられて
シロがお父さんを連れてきてくれる

二人は小判のおかげで裕福に暮らす
お湯をかけられたふくらはぎからは猫の毛が生えてくる!







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世界の名作推理全集 7 ジュニア版 アクロイド殺害事件 アガサ・クリスティー

2022-10-02 12:12:49 | 
昭和58年 初版 昭和62年 再版 中島河太郎/監修 山村正夫/訳 秋田書店
表紙デザイン/岩尾収蔵 表紙・口絵・挿絵/彩田あきら

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください







読者の間で物議が交わされたという本作

今回も4時間ほどで一気読み
面白かった! アガサは天才

絵は前から刺されているが、文には後ろからとあるけど???





ポワロの絵も前回と全然違うテイスト
昭和発行の本が借りられたのは良かったが
挿し絵が微妙w

みんなが騙されたとなると
文の中で疑われている人物は犯人じゃない

夫人が養子をかくまったとも考えたが
電話は誰がかけたのか?

聞こえた声が『』つきで、文章みたいで録音だと確信
録音機を買ったこと、医者が機械いじりが趣味なのが繋がる

一番意外なのは筆者では?
ポワロがやけに医者に証拠品を見せるのは
小説の進行のせいにしては変だし
でも動機が分からない

そもそも殺人事件が起きた家の隣りに
ポワロが引退して越して来てるなんて偶然が可笑しい

犯人はついてなかったね



【内容抜粋メモ】

はじめに 山村正夫
長編推理の名作を選ぶベストテンに必ず上位に入る
アガサの巧みなミス・ディレクション(読者を誤った方向に導く記述)
まんまとひっかかる

<登場人物>
ロージャー・アクロイド ファーンリー荘の主人
ラルフ・ペイトン ロージャーの亡妻の連れ子
フロラ・アクロイド ロージャーの姪
ジョン・パーカー 執事
シェパード医師
カロライン シェパードの姉
エルキュール・ポワロ 名探偵


密室殺人
シェパード医師はロージャー・アクロイドの住むファーンリー荘を訪ねる
室内でカタンという妙な音を聞き
家政婦ラッセルが慌てていてぶつかりそうになる

ラッセルは今朝、診察に来たが
薬品棚の麻薬についてやたら聞いていたのも気になる

銀のテーブルはガラス張りのフタになっていて
いろんな貴重なモノが飾られている

ロージャーの姪フロラは、ラルフ・ペイトンと婚約したと話す
ロージャーの亡妻の連れ子でトラブルを起こして家出したきり

アクロイドの友だちファラーズ夫人と歩いていたのを見たと話すと
今ロンドンにいるはずと驚くアクロイド

急性胃炎で死亡したアシュレ・ファラーズは
夫人に毒殺されたと明かすロージャー

ファラーズ夫人から1通の青い封筒が来て
脅迫者の名前が書いてあると思われる

シェパード医師が帰ろうとすると、執事のパーカーが立ち聞きしていた







帰宅する途中で道を聞く怪しい男とすれ違う

その夜、パーカーから主人が殺されたと電話があり駆けつけるが
パーカーは電話していないという

2人でドアを蹴破ると、ロージャーは胸をひと突きされて死んでいる
友人ブラント少佐、秘書のレイモンドは玉突き室にいた
ファラーズ夫人の封筒は消えている


ラグラン警部の捜査
窓が開いていて、外に男の足跡を見つける






9時半に話し声を聞いたレイモンド
金銭上の話だった

フロラが9時45分に父におやすみを言ったと証言

部屋の見取り図





パーカーを怪しむシェパード医師

凶器の短剣は、ブラント少佐がロージャーに贈ったもの
銀のテーブルにあったはずがない


名探偵エルキュール・ポワロ
フロラが隣りに住んでいるのは、名探偵ポワロだと明かす
引退して毎日カボチャを作っている(!

シェパード医師がラルフが泊まる村はずれのホテルに行ったことを知り
それきり行方不明のため、一番に疑われるのを心配して
ポワロに捜査をお願いする

ポワロ:
どんな結果になっても、最後まで仕事を投げ出さない
引退した身だから、自分の名前を出さない
ことを条件に引き受ける


安楽いすの位置
部屋の安楽いすの位置が少しズレていることに目をつけるポワロ






ポワロ:
みなさん、なにかしら秘密をお持ちのようですな
窓が開いていたのは、誰かを引き入れるためか?

シェパード医師への電話はキングス・アボット駅の公衆電話からかけられたと分かる
ラルフが犯人で逃げたのだろうか?







白い布の切れ端
警部は足跡とラルフの靴のサイズがピッタリだと調べる

ガーデンハウスに入ると犬のように這って
ガチョウの羽と白い布の切れ端を見つけるポワロ

池からは「R」とイニシャルの入った結婚指輪を見つける






遺産
ロージャーの遺産分配を調べると、セシル夫人に毎年1万ポンド
フロラに2万ポンド、ラルフに残りが渡る

昨晩、ロージャーが100ポンドを現金化して
寝室のケースに入れたのを確かめると40ポンド盗まれている

女中頭のアーシュラ・ボーンだけアリバイがなく
すぐに辞めたいとロージャーに言ったと分かる

ポワロ:
ガチョウの羽はアメリカの麻薬中毒者が鼻にあててかぐのに使う
ラルフの動機が3つもあることで、逆に無罪を信じている


セシル夫人の証言
銀のテーブルを開けたのはセシル夫人
中の銀製品を古道具屋に見せるため

あの晩の再現をフロラとパーカーに演じてもらう

ファラーズ夫人はこの1年間に2万ポンドもの株券を売り払っていた
脅迫犯に渡していた模様 夫殺しを後悔して自殺した

ブラント少佐は最近、2万ポンドの遺産が入った


麻薬中毒者ケント
リバプールで麻薬中毒者のケントが捕まった
シェパード医師が庭で道を聞かれた男

ガーデンハウスに行ったのは認めるが、9時25分には出たと証言
その後、酒場で大金を見せびらかしていたアリバイが証明される

ポワロ:
私は若いお嬢さんのおっしゃることは信じないたちなんです
パーカーはフロラがドアの前に立っているのを見たが
部屋から出て来るのを見たわけではない
ロージャーは金にうるさい人だった

フロラが40ポンド盗んだことを明かす
ラルフが家を出たのもロージャーがあまりにケチだったから

フロラをかばうレイモンドを見て、2人が愛し合っていると告げるポワロ


アリバイ
ラルフがリバプールで逮捕されたとウソを新聞に載せることを思いつくポワロ
シェパード医師は趣味の機械いじりを自慢して見せる

病院にラッセルを呼び、ケントが逮捕されたと教える
ケントは息子で、ガーデンハウスで2人で会ったことを明かす

麻薬中毒をなんとか治したいとシェパード医師にいろいろ聞いた

ポワロは夜9時にパーティーを開くから
関係者をみな呼んで欲しいとシェパード医師に頼む

フロラはレイモンドと婚約


秘密の結婚
アーシュラはラルフと結婚していたと指摘するポワロ
ラルフは多額の借金を返すためにフロラと婚約

アーシュラは取り乱して、ロージャーに結婚のことを話したのが9時半
(なぜみんなそんなにしっかり時間を覚えてるの?

シェパード医師がこれまでの記録を文章にして
小説として発表しようとしていた原稿をポワロに見せると喜ぶ


ポワロのパーティー
みんなが揃い、ポワロはここにいる全員が容疑者だと話す






ポワロ:
ガーデンハウスでは2人の男女が別々に会っていた
アーシュラとラルフ、ラッセルとケント
白い布は女中がつけるサロン前かけ

その部屋にラルフが入ってきて、無実だと言う

シェパード医師がホテルにラルフを訪ねて
このままだと疑われるため、精神病院に患者として入れてかくまっていた

ラルフ君を助けるには、ここで真犯人が自白すればいい
明日には、私の報告書が警部に届くでしょう
私には自信があります 犯人は絶対逃げられない


誰も自白することなく、パーティーはお開きになる



真犯人

ポワロ:
ドアが破られた時、自分がその場に居合わせることで容疑を免れようとした

レイモンドが聞いた声は、ロージャーが買った録音機の声
それが現場に残っていたため、窓から持ち去るために安楽椅子が動かされた

ロージャーは9時半にはもう死んでいた
パーカーが警察に連絡する間、書斎にいた者
すなわち、シェパード先生が犯人!

家まで徒歩5分と言ったのに、10分かかったのは
ラルフの靴で足跡をつけていたから

先生は株で大金をすった
診察に来た患者にアメリカ航路の給仕がいて
ロージャーに手紙を出し、駅から電話するように頼んだ
それをパーカーからの電話のように見せかけた

例の手記は最後まで書くことをすすめます
警察が来る前に、自分で始末をつける
例えば、睡眠薬の飲みすぎとか








シェパード医師の小説
ポワロの失敗を記録するつもりだった医師は
手記の原稿をポワロ宛てに送るてはずをつけて自殺を決意する

いまいましくてならないのは
引退したエルキュール・ポワロが
この村へカボチャ作りなどに来なければ良かったということだ(w



解説 山村正夫
本書に対して、ヴァン・ダインはフェア・プレーではないと非難したが

イギリスの女流作家ドロシイ・セイヤーズ

「作者のトリックにかかった悔し紛れ
 推理に必要な材料はすべて示されていた」と作品を支持した

江戸川乱歩もアガサの代表作として今作を挙げている

アガサは20年来、メリー・ウェスマコットという別名でも普通の小説を書いた

本格推理小説には厳しい制約があり
初期に名作を発表した推理作家の晩年は見劣りする作品が多いが

アガサは80歳を過ぎても
1年に1度、クリスマス前に長編を発表した

半世紀に85冊の小説、17冊の戯曲を残した


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絵本『てつぞうはね』 ミロコマチコ/著 ブロンズ新社

2022-09-30 15:11:57 | 
2013年初版

インスタを見ていると
猫つながりでいろんなイラストレーターさんを知ることができる
みんな繋がっているんだな

ミロコマチコ
画家、絵本作家
1981年大阪府生まれ








まんまるなおにぎりみたいにおっきなてつぞう
グレーの優しい線、金色の眼







ほんとうは上手く描けるんだろうけど
敢えてこれだけ自由な子どものように
くずすのはとっても難しいと思う

文もシンプルで癒やされる
8kgてなかなかの大きさ!







ハム、パイナップルが好物
ミントの香りフェチらしく
ハミガキしてるとスリスリ



桜の花びらを追う春





洗面台にぴったりおさまる夏

雷が鳴ると平べったくなる秋

あったかいお風呂の前に寝る冬









8回目の冬、虹の世界へ旅立つ

春に2匹のハチワレさんが来た
兄弟で捨てられていたソトとボウ
面白い名前だね

2人ともてつぞうと同じ皿で食べ
同じ洗面台で寝て
春は桜を追いかける











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ハヤカワ文庫 『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティー

2022-09-25 13:59:33 | 
1976年初版 1990年59刷 清水俊二/訳

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください


これも本当はジュヴェナイルで読みたかったが単行本しかなかったから
挿絵がまったくなくて寂しい

さすがハヤカワミステリー 59刷はスゴイな


これだけ有名な作品をなぜ今までスルーしてきたのか?
映画化も見てなかったのが不思議なくらい

そして誰もいなくなった (1945年の映画) - Wikipedia

そして誰もいなくなった (1974年の映画) - Wikipedia


読み始めてほぼ一気読み
どんどん謎の事件に引き込まれていく

メインの話し手はヴェラという女性
私の推理では一番ありえなさそうな真犯人として
彼女が仕組んだと思っていた

自分の弱さを吐露するリアルな文章は
スティーヴン・キングの小説を読んでいるような感じが終始あった

元のタイトルは『TEN LITTLE NIGGERS』
ニガーという差別言葉が使われていて意外
元々この歌はどういう意味で作られたのか?

日本の童謡にも♪かごめかごめ など
都市伝説っぽい解釈ができる話がいろいろあるけれども
『マザーグース』もかなり謎だよね

罪を償わせるのが動機と言っても
ちょっと微妙な感じで、警部が言うとおり法律で裁けない範囲の事件が多い




【内容抜粋メモ】

<登場人物>

ローレンス・ウォーグレイヴ:高名なもと判事 「首吊り判事」と呼ぶ者もいる
ヴェラ・クレイソーン:秘書・家庭教師
フィリップ・ロンバード:もと陸軍大尉
エミリーブレント:信心深い老夫人 マカーサーと同じ連隊にいたトムの姪
マカーサー将軍:退役将軍
アームストロング:医師
アンソニー・マーストン:遊び好きな青年
ブロア:もと警部
ロジャース・妻エセル:オーエン家の召使




インディアン島
オーエンという富豪が島を買い取ったが
その正体はハリウッドスターのゲブリエル・タールだと噂がもちきり

「ウォーグレイヴ判事」
一等喫煙車でインディアン島に向かう
謎めいた女性コンスタンス・カルミントンからの手紙で招待された


「ヴェラ・クレイソーン」
三等車に乗り島へ向かう
オーエン氏から秘書として雇いたいという手紙をもらった


「フィリップ・ロンバード」
アイザック・モリスから100ギニーもらい島に行って
人々を監視するよう言われる
食べるのにも困っていた彼は飛びついた


「エミリー・ブレント」
U.Nのあとは読めない相手から夏の休暇を島で過ごさないかと誘われた
いつか会ったオリヴァー婦人だろうか 思い出せない


「マカーサー将軍」
旧友と一緒に島で過ごしませんか?という手紙がきた


「アームストロング医師」
島の持ち主の財産も地位もある婦人が病気で
夫は妻に気づかれずに診察してほしいという依頼を受けた


「アンソニー・マーストン」
自動車を飛ばして来る
背の高いハンサムで快活な男性


「ブロア氏」
南アフリカで事業をしていたデイヴィスという偽名を使って島に向かう
途中、老船員から「嵐が来るぜ 審判の日はすぐそばまで来ている 祈るんだ」と言われる


オークブリッジ駅~ボートで島へ
タクシーは2台しかなく、互いに見知らぬ人々は相乗りして行くことにする

インディアン島は巨大なインディアンの頭部に似た岩だらけの島

1日1回、フレッド・ナラカットが食料品をボートで運ぶため
この日も彼が島に人々を運ぶが
彼もオーエン夫妻に会ったことはない

ナラカット(何から何まで信じられないほど不思議だ・・・

低い四角い建物の近代的建築の邸
きちんとした召使のロジャース夫婦を見て、いくらか安心する人々

ロジャース:あいにくですが、オーエン様は遅れて、明日にならなければお見えになりません

ロジャース夫人が幽霊のように血の気がない様子に皆驚く
しかも、この2人も雇われたばかりで、オーエン夫妻を見たことがないと言う

それぞれの寝室も申し分なく
額縁に大きな羊皮紙があり、古い子守唄が書かれていた



Ten little Indian boys went out to dine;
10人のインディアンの少年が食事に出かけた)
One choked his little self and then there were nine.
(一人が喉を詰まらせて、9人になった)

Nine little Indian boys sat up very late;
(9人のインディアンの少年がおそくまで起きていた)
One overslept himself and then there were eight.
(一人が寝過ごして、8人になった)

Eight little Indian boys travelling in Devon;
(8人のインディアンの少年がデヴォンを旅していた)
One said he'd stay there and then there were seven.
(一人がそこに残って、7人になった)

Seven little Indian boys chopping up sticks;
(7人のインディアンの少年が薪を割っていた)
One chopped himself in half and then there were six.
(一人が自分を真っ二つに割って、6人になった)

Six little Indian boys playing with a hive;
(6人のインディアンの少年が蜂の巣にいたずらしていた)
A bumblebee stung one and then there were five.
(蜂が一人を刺して、5人になった)

Five little Indian boys going in for law;
(5人のインディアンの少年が訴訟を起こした)
One got in Chancery and then there were four.
(一人が裁判所に行って、4人になった)

Four little Indian boys going out to sea,
(4人のインディアンの少年が海に出かけた)
A red herring swallowed one and then there were three.
(燻製ニシンが一人を呑み込んで、3人になった)

Three little Indian boys walking in the zoo;
(3人のインディアンの少年が動物園を歩いていた。)
A big bear hugged one and then there were two.
(大熊が一人を抱きしめ、2人になった)

Two Little Indian boys sitting in the sun;
(2人のインディアンの少年が日向に座った)
One got frizzled up and then there was one.
(一人が陽に焼かれ、1人になった)

One little Indian boy living all alone;
(1人のインディアンの少年は一人ぼっちで暮らしていた)
He got married, and then there were none.
(彼が結婚し、そして誰もいなくなった)


(あれ?小説では「彼が首をくくり」となっている




夕食後の断罪

アームストロング医師(成功の岸に着いたら、どんなことがあってもすがりついていなければならないのだ
島には不思議な力がある
世間との交渉がなくなる

ブロア(人間が未来を予想できないのは、いいことかもしれない

食事に大満足して、ふと見ると、インディアンの小さな陶器が10人置いてある
島の名前に模したのだろうと笑う人々

女主人はオリヴァーではなく、オーエンだと聞いて
そんな人は知らないと言うブレント


ロジャースがレコードをかけると、10人の客の罪状が読み上げられる声が聞こえる

アームストロング医師はルイザを死なせた

ブレントはビートリス・テイラーを死なせた

ブロアはジェイムズ・ランダーを死なせた

クレイソーンはシリルを殺した

ロンバードは、村落の原住民21人を殺した

マカーサーは妻の愛人アーサーを死地に送った

アンソニーは2人の子どもを殺した

ロジャース夫妻は女主人を死なせた

ウォーグレイヴはエドワード・シートンを殺した



人々は罪を否定し、隣りの部屋を探して蓄音機から流れた声だと確かめる
ロジャースはオーエンに指示されたと話し、レコードには「白鳥の歌」とある
妻エセルはショックで失神し、寝室に運ばれる



ユリック・ノーマン・オーエン
手紙の差出人ユリック・ノーマン・オーエンに招かれながら
誰も彼について知る者はいない

それぞれどういう経緯でここに招かれたかを話すと
皆、しばらく音信がなかった知人から招かれたがウソだと分かる

レコードにデイヴィスはなく、ブロアは本名を明かす
もと警部で今は探偵として雇われて来た

オーエン夫人の宝石のためにみんなの行動を見張るのが役目だが
そんな夫人はいない

ユリック・ノーマン・オーエンの頭文字から「UN KNOWN(誰でもない人)」だと分かる



釈明

判事:
我々は気が狂った人間に招かれた おそらく危険な殺人狂だろう!
彼は我々をよく知っている
私は正しい判決を受けた殺人犯に死刑を宣告し、義務を果たしただけだ

被告に私怨があったという噂もある

ヴェラ:
シリルの家庭教師をしていた
遠くまで泳いではいけないと言ったが沖にいって
泳いで追ったが間に合わなかった

マカーサー:
リチモンドは部下だったが、偵察に出して戦死した
戦時には珍しくない

ロンバード:
戦時中、2人の仲間と食料を持って逃げた
自分を護るのは人間の第一の義務だろう

アンソニー:
2人の子どもを轢いた 運が悪かったんだ
英国の道路が悪い スピードらしいスピードも出せないんだから

ロジャース:
女主人の容態が急変した晩は嵐で電話が通じず
医者を呼びに行ったが間に合わなかった
その後、相応の遺産をもらった

ブロア:
ランダーは銀行強盗
終身刑で1年後に監獄で死んだ

アームストロング医師:
そんな名前の患者は覚えていない
(酔って手術して手元が狂った
 看護婦は知っていたが、互いに秘密を暴くことはない

ブレント:私は良心のままに行動して、やましいことは1つもない


ナラカットが毎朝、食料を運びに来るから
明日、立ち去ろうということに決まる



アンソニー
アンソニー:ぼくは犯罪を礼賛しますよ! 犯罪に乾杯!

ウイスキーを飲みほし、急に顔が紫色になり、そのまま倒れて死ぬ
あんなに快活な青年が突然死んで信じられない人々

「自殺する人には見えない」という意見でまとまる
青酸カリで殺された?

ブレント:死はいつでも私たちを待っているのです

それぞれは寝室に戻る
ロジャースが後で見ると、テーブルのインディアン人形が1個なくなっていた


マカーサーは妻レスリーを愛していたが
部下のリチモンドとの関係を知り、生きて帰れない偵察に派遣して戻らなかった
3年後に妻は肺炎で死んだ もう15、6年も前のこと

島のいいところは、一度来てしまえば、もうその先へは行かれないことだ
すべての終わりへ来てしまったのだ

彼は島を去りたくないと悟る


ヴェラは家庭教師をしていた邸の主人ユーゴーと愛し合っていた
シリルがいなければ遺産が入り、結婚できるかもしれない


エセル・ロジャース
エセルが寝室で死んでいるのを夫が発見
ゆうべアームストロング医師が渡した睡眠薬がないが
ロジャースは妻は何も飲まなかったと証言

レコードを聞いてうろたえた妻が自供するのを恐れて夫が殺した?と疑う人々


ナラカットがいつも来る時間に来ない
嵐になれば1週間陸と断絶することもざらにある

ブロア:これも最初から計画されていたんだ

テーブルの人形が8個になっていた

ブレント:
汝の罪はかならずあらわれるべし
ビートリスは私が使っていたが、不倫して妊娠したため追い出した
その後、河に身を投げた
自分の犯した罪があの娘を自殺させたのです

アームストロング医師:世間には、犯人を罪に落とすことができない犯罪がある



島の探索
ロジャースは妻の死体が寝室に置いて
小さな客室に移る


マカーサー:
我々は皆終わりを待っているのだ
もう重荷を背負わないといいと分かった時、救いが訪れるのだ
レスリー・・・

ロンバードがピストルを所持しているため怪しむブロア

ロンバード、ブロア、アームストロング医師の3人で
島にオーエンが隠れる場所がないか探索するが
周りは岩ばかり、邸にも隠し部屋はないと分かる

島には彼ら8人のほか誰もいないのだった



マカーサー将軍
食事に来ないため、アームストロング医師が海に呼びに行くと
後頭部を殴られて死んでいた

テーブルには7個の人形しかない

アームストロング医師:オーエンは我々の中の1人だ!

ブレント:私たちのうちの一人が悪魔に憑りつかれている


判事の詰問
判事は最初の事件から、それぞれのアリバイを聞き
完全に嫌疑を免れる者はいないと結論

いかに生命の安全を確保するか検討したほうがいいと提案

判事:
すべての事件をつぶさに検討すると
ある一人の人間をはっきり指示できると思う


ロジャースは浴室の深紅のカーテンがない
ブレントは編み物の毛糸の玉がないと言う


ロジャース
早朝、1人で薪を割っている時、後ろから襲われて死んでいた
陶器の人形はあと6個

ブロアは偽証して無実の男を有罪にして昇進したことを白状する

ブロア:
これまでも随分危険な目に遭ったが
今度も必ず切り抜けてみせる!

ブレント(他の者は死ぬかもしれないが、自分は死なない!

皆はそれぞれがオーエンではないかと疑いながら平静を装おうとする


ブレント
缶詰の食事の後、フラフラして、次の歌に来るミツバチが見える
首のわきを刺された感触がして死んでいるのが見つかる

ミツバチではなく、注射器の打った跡があり
それを持っているのはアームストロング医師のみ
カバンを開けると注射器だけがなくなっている


身体、荷物検査
判事は、医師の薬品、ロンバードのピストルなどをひとまとめにしてしまおうと提案
そのため、身体、荷物検査が始まる

ロンバードのピストルは引き出しから消えていた!

台所の食器入れに薬品類をしまって、箱のカギをロンバード
戸棚のカギをブロアが持つことにする

5人とも人間ではなく動物にかえってしまっていた

部屋から出る者は1度に1人と決められた



判事
頭痛がして部屋に戻ったヴェラは、ノドに天井からさがった海藻が触れて絶叫する
みんな駆けつけて介抱するが判事だけいない

アームストロング医師が呼びに行くと、頭を撃ち抜かれて死んでいた
深紅のカーテン+判事のカツラの中には毛糸の玉が入っている

ロンバードが部屋に戻ると、引き出しにピストルが戻っている!

夜中に足音を聞いたブロアは、正面ドアから出て行く人影を見る
他の部屋をノックすると、アームストロング医師だけが答えない

目に見える危険は怖くない
ブロアが恐怖を感じるのは、目に見えない危険だった

食堂の窓ガラスが割られて、テーブルの人形は3個になっている



ブロア

ブロア:この島に動物園はない

ヴェラ:
動物は私たちよ
いつも誰かに見られているように感じない?

食事をしに邸に戻ったブロアは、ヴェラの部屋にあった
熊の形の大理石で頭を潰されて倒れていた


3つの人形
岩の合間にアームストロング医師が溺死しているのを発見する2人

ヴェラはすかさずロンバードのピストルを奪って
ロンバードの心臓を撃ちぬく

そうだ、ユーゴーは2階で私を待っている

部屋に入ると、歌の最後にある首をくくる輪が用意されている
ヴェラは首を入れて、イスを蹴った


ロンドン警視庁の捜査
トマス・レッグ副警視総監とメイン警部はこの不可解すぎる事件に頭を抱える

嵐の後、ボートでインディアン島に行った地元民によって
10人の死体が発見された

判事とロンバードは射殺
ブレントとアンソニーは青酸カリ中毒
エセルはクロラールののみすぎ
ロジャースは後頭部を割られ、ブロアは頭部を潰され
アームストロング医師は溺死
マカーサーは後頭部を殴打、ヴェラは首を吊っていた

アイザック・モリスも死んでいた 麻薬の密売などをしていた

買い主の名前は分からない

ボーイスカウトの一行が救助信号に気づいたが
いつも島では突拍子もない事が起きていたから
村人は慣れてしまっていたし

10人で賭けをしているから、助けないようにと言われていた

レコードの罪状を調べると、それぞれが当てはまるが
法律の届かない事件ばかり

ヴェラ、ブレントの日記、ブロアのメモなどから事件のあらましを知り
10人の他は誰も島に出入りしていないから
オーエンは10人のうちの1人と推察される

ピストルからヴェラの指紋が出た
首を吊ったとしても、イスがきちんと片付けられていた謎が残る



漁船の船長から警視庁に送られた告白書

告白書:
私は幼少の頃から性格の矛盾に気づいていた
死を見ると病的な快楽を覚え、虫にいろんな実験をした

職業に法律を選び、あらゆる探偵小説、怪奇小説を読んだ
自ら殺人を行いたくなったが、正義感が強く
罪のない者が苦しんではならぬ

ロジャース夫妻は、老婦人に興奮剤を与えないことで死なせた

聞き慣れた子守唄を思い出し、ひそかに他の犠牲者も探した

ユーゴーはヴェラが子どもを殺したことに気づいていた
ヴェラを愛していたが、子どもも愛していた

もう手術を受けてもムダと分かった
死に至るまでの短い時間を華々しく生きたかった

モリスに島を買い取らせ、10人を招待してから、クスリで殺した

罪の軽い者から死ぬべきだ

レコードに驚いている間にマーストンのグラスにクスリを入れた
エセルも同様

薪を割っているロジャースの後ろから襲い
混乱の中、ロンバードのピストルを盗んだ

ブレントのカップにクスリを入れて朦朧としている時に注射器を刺して
自分のクスリはなくなったため、身体検査で見つからずに済んだ

自分も死体になることで真犯人を見つけると
アームストロング医師に言って、即死だと皆に思わせた

崖を覗き込むようにして、医師を突き落とし
食堂の窓から入り、自分のベッドで寝た

ピストルは貯蔵庫の一番下の缶詰を開けて隠した

ヴェラの部屋から大理石を落としてブロアを殺害
ヴェラがロンバードを撃つ予想は当たり
部屋に首吊りの用意をして、心理的実験通りになるのを見届けてイスを片付けた

芸術家が他人に認めてもらいたいと思うように
私も完璧な殺人を認めてもらいたいために告白を書き
ビンに入れて、海に投げる

警察はシートンが有罪だと知っている
殺人を犯していない人間が犯人だと推測できる

私の額に残された赤い斑点はカインの刻印だ

ベッドに寝た状態でピストルが頭を射抜くよう設置
発見される頃には死亡時刻は正確に分からないだろう


ローレンス・ウォーグレイヴ(!!



童謡殺人 各務三郎
「今は昔、まだ動物が口をきいていた頃・・・」
昔話の冒頭を聞くと、時空を跳躍する気分になる

星新一が駆使する類型化描写は、受け手の想像力をかきたてる

ミステリーも童話のヴァリエーションの1つに過ぎない

とくに「パズルストーリー」の魅力は
謎と迫力あるストーリーテリングにある

ブキミで残酷でナンセンスなわらべ歌に惹かれたミステリー作家はたくさんいる
ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』もマザーグースに終始する

童謡殺人といえばクリスティー
『ねじれた家』はとくに愛着を感じているそう

全作品中もっとも素晴らしいのは「予告殺人パターン」に入る本書

なぜ、犯罪を解く手がかりがないのか?
真相はひらめいた読者に分かればいいという態度が濃厚

映画化もされ、小説とは違うエンディング
「結婚して誰もいなくなった」という終わりもある

蔑視語の「黒ん坊」でなく「10人の小さなインディアン」として発売された
アメリカでは第二次世界大戦の兵力に黒人が必要だったことが
差別禁止の推力として働いたことは間違いない

「インディアン」なら差別にならないというのが
当時のアメリカ情況だった

アイヌ人のように“被保護者”から脱して
市民の地位を得たのは1924年




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