メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

少女名作シリーズ32 あらしの白ばと グザヴィエ・ド・メーストル 偕成社

2024-05-20 18:15:48 | 
1973年初版 1982年9刷 野田開作/編著
山下一徳/カバー図案 武部本一郎/カバー絵・口絵・挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


これまたロシアの僧侶が書いたような、“清く正しく美しく”を文章にしたような作品
作者は意外にもフランス人で、フランスの楽観的な太陽の暑さを感じさせないのに驚いた

ロシアの中でもさらに極寒の地シベリアは、囚人が流されるほどのへき地
そこから3000kmも旅をする少女

弱い人間にとって、自然は脅威で、そこから信仰が生まれ
なにか大きな力に頼らなきゃ生きていけない気持ちがよく分かる

皇帝や貴族など身分の高い人々がとても高貴に描かれているけれども
実際そうだったかは分からず、かなり美化されている感がある


【内容抜粋メモ】

ポール1世が治めていた頃のロシア
政府は囚人をシベリアに流して、荒野の開拓をさせていた
イシム村もそうした1つ

そこに住むプラスコビアは野菊のように飾り気がなく、清らかで強い少女






父は元軍人だったが、ある男の計略にかかって無実の罪でここに来た
県知事や友人に何度も手紙を出してもムダに終わったと嘆く







プラスコビアは父の無実の罪をはらすため
遠いペテルブルグの都にいる皇帝陛下に会って許しを請うと誓い
毎日シラカバの森で神に祈る








父にペテルブルグ行きを話すと、県知事の旅行許可証がないと村から出られないし
身分の低い者が皇帝陛下に直接話すことは叶わないと言われる



父母に内緒で県知事に手紙を出して3年後、プラスコビアが15歳の時
ひと月に1度しか来ない郵便屋が来て旅行許可証が届いて驚く







聖書を開いて、そこに書かれたことで占ってみると
「何事を成すにも、怖れることなかれ」と出て勇気を出すプラスコビア

聖母マリアのお祭りがある9月8日に出発
父はなけなしの1ルーブル(90円)を持たせる









隣村では親切な百姓が泊めてくれる
シベリアのすさまじい嵐に遭い、道で倒れているところを
百姓の男が担いで次の村まで荷車に乗せる







村が大きくなるほど人々は冷たく当たり、乞食扱いして追い払われる
そんな中でも親切な女性に巡り合い、1週間ほど泊めてもらう

プラスコビアは世話になるばかりでなく、まず自分が働くことを学び
行く先々で家の手伝いをしたため、旅行の予定は遅れがちになる

シベリアのオオカミに襲われているところを人相の悪い老人に救われ
家に連れて来られ、さらに恐ろしい目つきの奥さんに
お金を持っているかと聞かれて夜も眠れない









だが、食事を与え、翌日のお弁当もつくり、財布にはお金も入れてくれて
見た目だけでは判断できないことを知る









ウラルの山を越えるそりの一隊に頼んで乗せてもらうが
山の上の寒さはいっそう厳しく、頬や手足が凍傷になる
男たちは同情して、外套を貸してくれる
プラスコビアは人の幸せを祈ることを学ぶ










寒さと過労で体を壊し、宿屋の女将さんは
情け深いミリン夫人に相談すればいいと教える

教会でお祈りした帰りにミリン夫人に偶然出会い
春になり雪がとけるまでゆっくりするよう言われる







学校に行ったことのないプラスコビアのために勉強も教えてくれ
出発には新しい服や薬、お金などを持たせてくれる







川を渡る船に乗ると、つむじ風で傾き、冷たい川に落ちてずぶ濡れになり
ひどい風邪をひいて、修道院で1年ちかく世話になり
感謝の気持ちから将来、修道女になろうと決心する







院長はモスクワまでのそりを用意し、公爵夫人宛てに紹介状も書いてくれる



ようやくペテルブルグに着き、商人の家に泊まる
公爵夫人宛ての紹介状を見せると、身分が高すぎて
どう取り次いでいいか分からないと言うので諦める







その代わり、元老院に願書を出せば、父の無実を調べてもらえると聞いて
複雑な手続きがあるのを知らず、長い手紙を書いて元老院に入ると
番人につまみ出されてしまう







プラスコビアは元老院の前で何日も待ち、身分の高そうな人に声をかけ続ける
ようやく声をかけてくれた男性は、手紙にお金をくるんで追い払う







復活祭の日、商人の妻は気晴らしに見物に誘う
ネバ川のイギリス河岸の公園には前皇帝陛下、ピーター大帝の像がある

新しくできた橋の向こうはワシリー島で、公爵夫人の邸宅もある
ダメ元で頼みに屋敷に行くと、番人は何日も前から待っていたと言う







公爵夫人は修道院長からできるだけのことをしてあげてほしいと頼まれて待っていた
ごちそうに呼ばれた客もプラスコビアの事情を聞いて同情し
元老院では調べてもらえないと分かる







その後、皇帝陛下の親戚の妃殿下の使いが来て、御殿で暮らすように言われる
2頭だての馬車に乗り、何十人も召使いがいる大きな屋敷に圧倒される







その日から花園のような寝室に寝て、食事のマナー、歩き方、話し方などを学ぶ
皇太后の侍従が事情を聞いて、皇太后と面会する







宮殿でこれまでの経緯を話すプラスコビアを気に入り
帰る時に300ルーブルももらう







数日後、とうとう皇帝陛下と会う
皇帝陛下:大臣が調べ直し、もし父親が無実だったら、許してくれるか?









父は無実となり、イシム村のほかの数人の軽い罪も許されることとなる

プラスコビアには皇帝陛下らから毎月お金がもらえると言われるが断わる

プラスコビア:
私は神さまの力がどれほど強く、お恵みがどんなに深いか知りました
私は一生神さまにおつかえしたいと思います

プラスコビアは“聖少女”という大評判が広がる



これまでプラスコビアからの手紙は役所で調べられ、焼き捨てられていたため
父母は心配していたが、県知事が皇帝陛下からの手紙を届けて
父とその他数人が無実となったしらせを聞いて抱き合って喜ぶ

その後、イシム村は囚人の村ではなくなり、素晴らしく発展する

プラスコビアからの手紙には200ルーブル入っていて
ニジユニの修道院で待っているとあり、父母は喜んで出発し
ふたたび親子3人で暮らせることを夢見る







修道院では院長がプラスコビアを連れて来て
一生を神に捧げる決心を聞いて驚く







プラスコビアは神の子になったのだと思い
1年に1度くらいは一緒にゆっくりすることができると約束して別れ
母の故郷のウラジミールに出発する



その後、プラスコビアは以前悪くした胸の病気が悪化する
プラスコビア:あの雪を見ると、シベリアを思い出すわ
と言って、静かな永遠の眠りにつく









■解説

グザビエ・ド・メストル
1763年フランス生まれ
当時の貴族の通例で軍人になる
ケンカをして、42日間家に閉じこめられたことを『室内旅行』に書いたのが小説のはじめ
26歳で伯爵となり、フランス革命が起きるとロシアに行って少尉となる
1852年死去

本書の原題は『シベリアの少女』
事実をもとに書いたとされる

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