メランコリア

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少女名作シリーズ34 愛のバイオリン マルドリュース 偕成社

2024-05-21 19:06:04 | 
1973年初版 1982年12刷 山主敏子/編著
山下一徳/カバー図案 西村保史/カバー絵・口絵・挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


ほかの作品と違って、本作のヒロインはわがままで
時に意地悪も平気でする少女なのが面白い

両親の離婚、戦争、親類を転々としながらも
バイオリンの才能に支えられて逞しく生きていく

ドイツの爆撃機に襲われるパリと
広々とした豊かな自然の郊外との対比も素晴らしい

いとこのマリも家族から除け者にされる孤独を抱え
ナルシスに邪険にされながらも愛を求める様は
ナルシスと共鳴する部分がある

このシリーズはもとは大人向けの長編だけれども
今の私にとっては児童向けにやわらかい表現に訳されたほうが有り難い
きっと原著は戦争の悲惨さも生々しく描かれて、耐えられないと思う


【内容抜粋メモ】

登場人物
ババル一家
ナルシス バイオリンの才能を持つ美しい少女
父 ジェローム 軍人
母 アメリー
祖母 マリ 父の母
アンジェール 女中
ノバール 叔母 父の妹 ピアノ教師
娘 ジャーヌ、マリ・フランス




1914年
パリの郊外にある屋敷に住む10歳のナルシス
有名なバイオリニストだった祖父の血を継いで、バイオリンを習っている
父は戦争に行き、母は野戦病院で働いている

隣りに住むいとこのジャン、ポール、イボンヌ、ジャックらと遊ぶのが楽しいナルシス
夜は叔母の家で勉強している

ナルシスはイボンヌとケンカしてルプーティエ夫人に叱られ、日曜でも家にいるよう言われる







庭で羊飼いごっこをしていると、父が休暇で帰るが悲しい様子











父と祖母に会いに行き、母とうまくいっていないと打ち明けて泣いているのを見て戸惑うナルシス
母は娘を音楽家にしたいとは思っていないため、バイオリンの稽古を止めさせる









ルプーティエ一家は急にロンドンに引っ越して、隣家は売家となる
遊ぶ友だちもなく、一人ぼっちになるナルシス







母は急に南部に召集されて、もう帰らないという
父:お前はおばあさまの所へ行くんだ

両親は離婚し、母は貧しく身分の低い祖母をバカにしていたため
ナルシスも祖母が嫌いで、祖母に話しかけられても無視する
父は戦地に戻り、ナルシスはまた一人ぼっちとなる

祖母は毎朝ナルシスに新聞を読ませて戦況を知る








初めて電車に乗ってノバール叔母を訪ねる






叔母はピアノ教師でたくさんの生徒が習いに来ている
昼はバイオリン、夜は祖母が勉強をみてくれる

バイオリニストのミリエ先生に習いに行くと
たくさんの生徒が切磋琢磨していて、ナルシスは中級のクラスから始める

母はバイオリンを嫌っていたが、祖母は亡くなった祖父と同じ音がすると褒めてくれる
小さい頃は強情だったと話して、友だちのように感じはじめる









祖母:
人間の値打ちは財産があるとか、美しいとかでは決められません
立派な人間であることだけだと覚えておきなさいね


だんだん祖母の家での暮らしに慣れてきたナルシス
毎年、暮れには大音楽会があり、同い年のガストン少年はソロ演奏をまかされるが
ナルシスはまだ大勢で子どもの組曲を弾くことに決まる

祖母も音楽会に行くというと、体が弱いのにムリしてはダメだとノバール叔母が止める
祖母:おばさんはあなたを妬んでいるんですよ

ナルシスは祖母好みの地味なドレスを選び♪子ども組曲 ト長調を演奏して拍手をもらう
祖母:どうしてあんたをみんなの後ろへ置いたのかしら
ガッカリした祖母と一緒に泣くナルシス

来年こそは独奏できるように、祖母がピアノ伴奏をしてますます練習に励む
昔は娘がバイオリンを習うことなどなかったと話す祖母
7歳の頃の二月革命などの話もしてくれる







祖母は親戚に内緒で祖父の高価なバイオリンをナルシスにあげる
ナルシス:このバイオリンが弾けるようになったら、おばあさまと同じマリって名前をつけるわ







1915年の年末、ナルシスは見事に独奏して拍手をもらう
1916年にはガストンを追い越してシューベルトの♪みつばち などを弾く

祖母はめっきり体が弱くなり、持病の心臓発作が起きると1週間もあえいでいる
あんなに好きだったナルシスのバイオリンもうるさがり
手を握ると嫌がられ、傷つき、戸惑うナルシス







祖母:死ぬってことは、とてもカンタンなんですよ
とつぶやいて亡くなる

親戚は形見分けで賑わい、ナルシスはノバール叔母に預けられることとなる

ナルシス:
私にはバイオリンがある
おばあさまの気に入るために立派な芸術家にならなければいけない



ノバール叔母の家では、幼いマリ・フランスと同じ部屋となる
マリはナルシスと仲良くなりたいが、ナルシスは邪険にする
ジャーヌはナルシスが邪魔でならない

ノバール叔母:
あなたは3年も遅くバイオリンを始めたのだから
人より遅れていることを忘れないでね

女中のアンジュールが田舎に帰省して、また一人ぼっちになるナルシスは
一心不乱にバイオリンを練習する







ノバール叔母:映画館で働くとずいぶんいいお金になるそうよ

芸術家を目指しているナルシスはショックを受けて
1人で祖母のお墓参りに行き、赤いバラを1本たむける
ナルシス:私もひいおじいさまのような立派な芸術家になってみせます







帰省した父は思い詰めてナルシスに訴える
父:もしも私の身になにか起きても、けしてお母さんの所へは行かないと約束してくれないか
父もまた寂しいのだと分かり、約束するナルシス







父は前線の歩兵隊に志願して、その後、戦死のしらせが届く
当時の女性はみんな父、夫、息子がいつ戦争にとられるかという不安に怯えながら暮らしていた

ジャーヌの夫ピエールも戦地で病気になったとしらせが入る
その後、ピエールが帰還し、セロを弾いて、トリオで演奏する

ナルシスは寝食も忘れてバイオリンを弾いたため
医師から貧血で過労と言われ、アンジェールのいる田舎に行くよう言われる









マリ・フランスも一緒に行くことに不満なナルシス
アンジェールの家は自然にあふれ、野菜畑の先は緑の牧場
ドイツ軍の爆撃のおそれもなくぐっすりと眠る2人

ナルシスはこれまで忘れていた子どもらしく遊ぶ気持ちがよみがえる
マリ・フランスはナルシスの後をつけて、なんでもマネをする







マリ・フランス:バイオリンを弾いて聴かせて!
マリ・フランスが音楽が好きと知り、バイオリンを教えるととても上手で驚く







叔母から「スグカエレ」と電報がくる
音楽会での演奏が決まったのではないかと思い、慌てて帰るナルシス


叔母は映画館に職を見つけたと話す
ナルシス:私にはひいおじいさまが遺したお金があるっておばあさまがおっしゃいました

ノバール叔母は、ナルシスの両親とも破産して、ピアノの生徒も減り
ババルの遺産の年利は生活費だけで消えると話す

ナルシスはパリ郊外の映画館でテストを受け、マネージャーに褒められ
来週の日曜から働くことになる







自分の身の上が悲しくて泣いていると、マリ・フランスがなぐさめる
マリ・フランス:おねえさま、私の小さいママになってちょうだい

2人の少女は頬を寄せ合って、元気がわいてくる










解説

リュシー・ドラリュー・マルドリュース
1880年フランス生まれ
女流詩人として有名となる
小説も詩的で神秘的、ヒトの心の奥深くを掘り下げて見せる

本書の原題は『3つの顔をもつ魂』 40歳の時に発表
第一次世界大戦のフランスを舞台に
ナルシス、祖母、マリ・フランスの音楽一家を描いた

マルドリュースは12冊の長編小説を書き、1945年に死去
コレット女史らとともにフランス文壇で高く評価されている

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