ほりでぃ・キッチン

たわいもない日常を暮らす中で感じた
たわいもない事を綴ります。
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逆ホームシック

2011-05-13 00:12:45 | 家族のハナシ
娘が上京してから、早くも2カ月が経とうとしています。

上京したのは、東日本大震災の直後。
頻繁な余震、計画停電、原発事故、飲料水や農産物の放射能被害…
楽しみにしていた武道館での入学式も中止され、
ただただ不安の中での上京でした。

引っ越しや、娘の持病の悪化を心配して、
私も一緒に約1ヵ月間の東京滞在。

その間、本当にいろんなことがありました。

例えば、初めて聞く携帯電話の緊急地震速報に驚いたり、
例えば、計画停電のため、午後5時に閉店するスーパーに急いで買い物にいったり、
例えば、計画停電中にも営業しているコンビニの入店規制を経験したり、
例えば、まったく何も陳列されていないコンビニやスーパーの棚に唖然としたり、
例えば、地下鉄をのぞく、ほとんどの駅のエスカレーターが止められていたり、
例えば、飲料水がまったく買えなかったり、
例えば、電車の灯りも駅の灯りも有名な観光地も節電されていたり、
例えば、毎日揺れる地面で地震酔いになったり
例えば…例えば…

数え上げたらキリがありません。

この連休、たった3泊ではありましたが、
娘が帰省してきました。

そして、今の東京の状況を聞きました。
すると、
計画停電はなくなり、
物資も不自由なく買えるようになり、
電車のダイヤも復旧し、
余震も少なくなったとのこと。
でも、
やっぱり東京電力管轄地域の節電は続いていて、
やっぱりエスカレーターは止まったままで、
竹下通りも暗いままだと…

こちらに住んでいると、
ともすれば忘れがちな震災被害。
被災地はもちろん、東京でも、いまだその爪後は残っているんだなあと
改めて実感。

連休が終わり、
再び娘を空港から見送りました。
そして、次の日から、
私は逆ホームシックにかかったようで、
毎日、ひとりになると朝晩をとわず、涙がじわり…

東京へ行きたい。
東京へ「帰りたい」。
こどもたちのところに戻りたい。
ご飯を作ってあげたい。
掃除をしてあげたい。
洗濯をしてあげたい。

娘を抱きしめたい。
息子の就活を応援したい。

夫は言います。「子離れしろ」と。
実家の両親は言います。「子ども達だけのほうが成長するよ」と。

わかっています。
わかっています。

すべては私のエゴだということ。
すべては私の勘違いだということ。

もう、子どもは巣立ったのだと。
もう、親の仕事は終焉に近づいているのだと。

それでも、
夫婦ふたりの生活には、慣れなくて。
日に日に、彼の地への想いは深くなる一方で。

それでも、
私は、ここで生きて行かねばなりません。
子ども達の成長を妨げないように、
子ども達の巣立ちの邪魔をしないように…

私が母親の仕事を終え、
東京を発つ数日前、
入学式が行われるはずだった武道館に立ち寄りました。

桜が咲いていました。

日本の哀しみを感じたのか、
例年よりもずいぶん遅い開花でしたが、
千鳥が淵の桜は、
昨年と同じように美しく、
昨年と同じように満開で、
昨年と同じように水面に花筏を浮かべていました。

春は、忘れていませんでした。
哀しみも苦しみも飲みこんで、
桜は、そこに凛として咲き誇っておりました。

大丈夫。
日本はきっと大丈夫。
東京はきっと大丈夫。
子ども達はきっと大丈夫。
私はきっと大丈夫。

満開の桜の下、
涙で曇るディスプレイを見ながら、何度もシャッターを押しました。



連休も終わりました。
熊本の桜は、すっかり葉桜になり、
新緑がまぶしく輝いています。

娘を乗せた飛行機は、
日出る方向へ飛び立ちました。



今度会うのは夏ですね。
いってらっしゃい。あなたの街へ。




機影が見えなくなった空の下には、
桜の緑が、深く深く萌えて…

熊本は、もう初夏です。



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