原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

【刑訴】訴訟費用の負担

2011-06-12 | 刑訴法的内容
今日は,弁護士倫理の課題の起案。LS在学中にやりますよね,弁護士(法曹)倫理。利益相反であるとか,守秘義務であるとか,刑事弁護における真実義務と誠実義務とか。久しぶりで,職務基本規程なんかを結構忘れていました。

さて,あえてマイナー分野。なぜここを書くかは最後に。

訴訟費用,具体的には,証人の日当とか,鑑定人の鑑定料,国選弁護人の報酬などです。実は,これが結構かさみます。精神鑑定なんかをやった場合,鑑定料が40万円くらいになったりします。

原則として,これらは被告人の負担です(181Ⅰ本文)。ただ,押えておきたいのは,「刑の言渡」があった場合に被告人負担となり(「刑の言渡」がない場合とは,無罪・免訴・公訴棄却など),そして,全部負担か一部負担かは,裁判所の自由裁量です(大判S.7.9.8)。被告人が犯罪をやって,あくまでも被告人の故意なり過失なりによってかかった費用なのだから自分で払え,血税をあてるのは筋が通らない,そういう趣旨です。

ですから,「刑の言渡」をしない場合であっても,被告人の責に帰すべき事由で生じた費用は,被告人に負担させることができます(同Ⅱ)。逆に,被告人に責められる事由がない場合,検察官のみが控訴してそれが棄却されたり,その取下げがあった場合は,被告人に負担させることができません(同Ⅲ本文)。

では,公訴提起に至らなかった場合(例えば,証拠不十分で不起訴)に,被疑者が費用負担することがあるか?短答肢風に書くと,「費用は,公訴提起に至って発生するものであるから,公訴提起に至らなかった場合に,被疑者が費用負担を命じられることはない」となりましょうか。

答えは,×です(同Ⅳ)。被疑者の責に帰すべき事由で発生したものは,負担を命じられる場合があります。趣旨からしてそうですよね。被疑者の間に費用が生ずるのか疑問に思うかもしれませんが,被疑者国選なんかの報酬あたりが考えられるでしょうか。

もう一点,181の趣旨から考えるべきこととして,相被告人との関係での証人の日当等といえど,費用は費用なのだから,負担すべきなのか?併合審理されている以上,相被告人とともに負担すべきなのか?

答えは,×です(最判S46.4.27)。これに関しては,相被告人が負担すべきなんですね。当該被告人には関係なく(その責めに帰する事由によって発生した費用ではなく),負担させられるいわれはないわけです。

さて,訴訟費用を負担させるか,させるとしてどの程度負担させるかは裁判所の自由裁量であると上に述べましたが,昨今,積極的に負担させる傾向にあるようです。国選事件であっても,かなり負担させるようです。国家の厳しい台所事情を反映して,特に,裁判員裁判には莫大な予算が必要でして(裁判員の日当なんかだけでも大きいし,国選弁護人も2人付されることが通常で,かつ,公判前なんかも回数が多いので弁護人の報酬もかなり大きくなる),それでいて費用負担させないのは国民の批判にさらされる…,ということが背景なのではないか,とも言われているようです(一般論として)。

さて,あなたが国選弁護人で,被告人には資力がないのに,費用負担を命じられてしまった。どうするか?

執行の免除の申立てをすることができます(500Ⅰ)。そして,申立期間は,裁判の確定後,20日以内です(同Ⅱ)。

このテーマについては,これくらい知っておけばいいでしょう。ここ2年の短答の傾向を見る限り,このあたりの細かな手続も侮れません。

久しぶりの刑訴ネタでした。

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2 コメント

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Unknown (はら)
2011-06-13 18:36:31
ロー3年さん,はじめまして。

その別の方への返信の中でも書いたのですが,DVD・再放映等については,残念ながら私の知るところではありませんで,直接,辰巳法律研究所に問い合わせていただきたく思います。

あと11か月もあると思うと,あっと言う間に試験は来てしまいますので,この時期から試験を見据えて勉強をしてください!
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はじめまして (ロー3年)
2011-06-13 11:11:26
先生のブログ、いつも楽しく読ませていただいています。とても勉強になります。

別の方もおっしゃっていましたが、私も去年の先生のスタ短特訓が聴きたいです。その方法がありましたら、お教えください。私からもお願いいたします。よろしくお願いいたします。
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