【哲成視点】
誰かの腕の中で眠るなんて、何年ぶりだろう。
一人じゃないって、こんなに安心できて、こんなに嬉しくて、こんなに優しい気持ちになれるんだな……
あまり覚えてないけれど……
母の腕の中は、こんな感じだったかもしれない。
***
「男3人でクリスマス会をしよう」
と、松浦暁生が言い出したのは、クリスマスイブ前々日の朝のことだった。3人というのは、暁生とオレと、村上享吾のことだそうだ。
暁生と村上享吾は、殴ったり殴られたりするくらい仲が悪いのに、3人でクリスマス会?
「えーと……、仲直りパーティーってことか?」
「そうそう。今年はテツの家に泊まりでな!」
ニッとした暁生。
母が亡くなってからは、クリスマスイブは毎年、暁生の家に泊まらせてもらっていた。父はレストランで働いているため、毎年クリスマスは朝にならないと帰ってこられないからだ。
でも、暁生の妹の里穂ちゃんがもう小学校6年生だし、男のオレが泊まるのは迷惑になるから今年からは遠慮しようと思っていた。その矢先の、暁生の提案。最近、色々あったけれど、やっぱり暁生は暁生だ。オレのために考えてくれたんだ!ってすごく嬉しくなった。
「うん。しようしよう! 父ちゃんと田所さんに言っておく!」
「おーよろしく。享吾はオレが誘っておくから」
わー楽しみだ楽しみだ!
と、思ったものの……。
クリスマスイブ当日。
険悪な雰囲気の二人と同じ空間にいるというのは、なかなか居心地の悪いものだった……。
(仲直りする気なんて全然ないんじゃないか……?)
そう疑いたくなるくらい、暁生の村上享吾に対する言葉はイチイチ棘棘しいし 村上享吾はシラッと無視しているし……
自分のはしゃいだような声だけが、空々しく部屋に響く微妙な空気の中で、3人でケーキを食べ始めたところ、
「オレ、彼女できたんだよ」
ニッコリと暁生が言った。
「テツには一番に教えたかった」
なんて調子の良いことを言う暁生。相手はやっぱり例の、N高野球部マネージャー。「舞ちゃん」というそうだ。
(いまさら報告されても……ヤル事ヤッてたくせに)
と、内心思わないでもなかったけれど……やっぱり「一番に」なんて言われて嬉しくないわけがない。ヤル事はヤッてたけど、今までは彼女じゃなくて、ようやく正式に彼女になったってことだな。うん。そうだそうだ!
「おー、すげー。年上彼女!おめでとう!」
必要以上にはしゃいで手を打ってやると、暁生は「サンキュ」とニヤリと笑ってから、なぜか立ち上がった。
「暁生?」
「初めてのクリスマスだからさ、一緒に過ごしたいって言われてて。朝には帰って来るから」
「え」
それって……
オレがポカンとしている中、暁生は村上享吾に向き直った。
「じゃ、コート、借りるな? 傘も借りるから。雨まだ降ってるよな……」
「………」
村上享吾は知っていたようで、何も聞かず、暁生に向かって軽く肯いている。
オレだけが目をパチクリさせている間に、暁生はさっさと出て行ってしまって……
「…………なんで、コート?」
「親に見つからないためのカモフラージュだってさ」
オレの疑問に、村上享吾が肩をすくめて教えてくれた。
「キョーゴ知ってたんだ?」
「まあ……うん」
村上享吾は言いにくそうに肯くと、
「……オレだけじゃ不満か?」
ボソッと言った。その不貞腐れたような言い方がなんか可愛くて笑い出してしまうと、村上享吾もつられたように笑い出した。
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お読みくださりありがとうございました!
書き終わらなかったー悔しい!せっかく偶然にもクリスマスの時にクリスマスの話だったのにー!!
とりあえず書けたところまで。
続きは次回、金曜日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします。
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