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BL小説・風のゆくえには~2つの円の位置関係31

2019年01月11日 07時42分12秒 | BL小説・風のゆくえには~ 2つの円の位置関係

【享吾視点】


 クリスマスの朝の起床後、若干、気マズイような顔をした村上哲成だったけれども、すぐにいつもの調子に戻った。おそらく『アレ』は、すべてオレの寝ぼけた末の行動だった、とでも解釈することにしたのだろう。

『アレ』とは……

 膨張した股間を村上の臀部あたりにグリグリと押しつけながら、村上を後ろから抱きしめた……ってことだ。

 …………。

 …………。


(なんであんなことしたんだ……)

 自分でも頭を抱えたくなっている。


 そもそも、眠る前に、思わず村上の額にキスをしてしまったのもオカシイ。

 そして、翌朝、村上の気配がすぐ近くにあることに気が付いて、なぜかすごく幸せな気持ちになったこともオカシイ。

 それから、村上が松浦暁生の寝ている方へ身を寄せようとしているところを目撃して、カッとなって、強引に村上を抱き寄せて……その温もりを感じたら、なぜか勃ちあがってしまったことも、オカシイ。

 それだけでなく、欲望のままに、そのままグリグリとその猛りを村上に押しつけながら「ここにいろ」と引き留めた……なんて

(どういうことだ、オレ……)

 頭を抱えたくなってくる。
 途中で我に返って、抱きしめていた手をどかしてやると、村上は慌てたように部屋から出て行ってしまって……


 それからはまた眠れなかった。悶々としながら布団の中で待機し、約束していた起床時間に、隣の松浦暁生を起こして、一緒にリビングに下りて行くと、村上は朝食の用意をしてくれていた。

「おはよー」
「おお」

 村上のちょっと気マズイ顔をした挨拶に、軽く手を挙げ、得意のポーカーフェイスで答えると、村上は安心したように笑った。

 笑ってくれて、ホッとしたような、ガッカリしたような………

(…………なんなんだ)

 もう、本当に、訳がわからない。



 その朝、松浦暁生とオレが一緒に登校したことは、それなりに話題を呼んだようだった。

「仲直りしたんだ?」
「まあ……うん」

 学級委員で作成した掲示物を教室の壁に張りながら、西本ななえの問いかけに適当にうなずいていると、ふ、と視線を感じた。視線の主は村上だ。

 そういえば、昨晩、

『西本って、キョーゴのことが好きなんだと思うんだけど』

と、言われたんだった。まだ疑っているのだろうか。西本が好きなのは村上本人なのに………

(まあ、そんなことは教えてやらないけど)

 先日、西本が村上の頭を撫でていたことを思い出してモヤモヤしてくる。村上は、恋愛が分からないと言っていた。西本みたいな強引な女子にかかったら『気がついたら付き合うことになってた』なんてことになりかねない。オレが守ってやらないと……

(…………ん?)

 そこまで思って、考えをストップさせる。

 何言ってるんだオレ?
 守るってなんだ? なんでオレが?

と、また頭を抱えたくなっていたところ……

「!」

 いきなり、後ろから腕を掴まれた。振り返って、心臓が止まりそうになる。村上……っ

 でも、そんなオレの様子には気がつかないように、村上は、なぜか口を尖らせて、小さく言った。

「………近い」
「は?」

 近い?

「何……」
「近すぎる」
「?」

 何の話だ?

「だから………」
「……………」
「……………」
「……………」

 無言でそのまま腕を引っ張られ、一歩、二歩、後ろへ下がる。遠ざかる西本。

(近いって………)

 西本のことか? それは………

(オレが西本に近いのが嫌なのか? それとも西本がオレに近いのが嫌………?)

 なんてことを咄嗟に思って固まっていると、西本がムッとして言った。

「ちょっと、テツ君。邪魔しないで。あと2枚張るんだから」
「ん」

 その西本に、村上が手を差し出している。

「オレが張ってやる」
「……………」
「ほら」
「……………」

 西本はしばらく目をパシパシさせていたけれど、

「じゃ、よろしくね」

と、残り二枚のプリントを村上に渡して席に戻っていった。何か言いたげだったのは気のせいではないだろう。視線がまたこちらを向いている。

 残されたオレも、作業をしている村上の横顔をジッと見てしまう。

(村上……何を考えてる?)

 口を尖らせたままの村上。何を考えているか分からない。けど………

(何か……かわいい)

 思わず、頬がゆるんでしまう。
 それに気がついたように、村上が、更に口を尖らせて睨んできた。 

「なに見てんだよっ」
「……いや」

 何とかポーカーフェイスを取り戻して、持っていた画ビョウを渡す。と、

「………っ」
「!」

 手が触れて、お互い火がついたみたいに飛び離れた。

「……………」
「……………」
「……………」
「……………」

 何やってんだオレ達。

 変だ。やっぱり、変だ。

 もう、本当に、訳がわからない。



 でも、なんとなく浮かれているという自覚はあった。こんな風に気持ちが高揚することがあるなんて思いもしなかった。

 だから……

 正月明けに母が行方不明になったのは、オレが浮かれていたから、バチが当たったんだ、と思った。



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お読みくださりありがとうございました!
寝坊のため20分遅刻m(__)m
本当はもう一つエピソードあったけど、これ以上遅刻は嫌なので次回に持ち越しっ
次回、火曜日もどうぞよろしくお願いいたします!

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