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小説/産み分けsex(11/12)

2011年07月09日 14時00分00秒 | 産み分けSEX(R18)
「……え」
 慌てて出ていくと、薫が小さなスプレーの缶を玩んでいた。優吾さんは眠っているようだ。睡眠薬なのだろうか?
「そういうの、どこで買うの?」
「そこ?」
 ブッと薫が噴き出した。
「これだけの状況を目の当たりにして、はじめにつっこむのがそこなの? ホント面白いよね。お義姉さんって」
 薫はクツクツと楽しげに笑っている。
「いつから私に気がついてたの?」
「兄さんが起き上がったとき。そっちから物音がしたからさ。ねえ、そんなことより気にならないの? オレと兄さんに体の関係があったかどうか、とか」
「………」
 想像ができ……なくもない。薫は中性的な顔立ちをしている。そういう趣味があったとしても違和感はあまりない。それに優吾さんは先ほどの薫の行動にさほど驚いた様子がなかった。過去にそういう事実があったとしても……。
「冗談だよ。ないから安心して」
 肩をすくめて薫が言う。
「一年くらい前に飲んだ勢いで誘ったことあったんだけどね。全然ダメだった。冗談ですまされちゃった。兄さんそっちの気、全然ないみたい」
「そ、そうなんだ……」
 自分の中のイケナイ想像を打ち消す。
薫がこちらに手を差し伸べた。
「オレは両方いけるよ。お義姉さんとだってできるよ。する?」
「しない」
 呆れて、その手を弾き飛ばす。
「自分で言ったじゃない。SEXは愛を確かめ合うためにするものだって。私とあなたの間に確かめ合う愛はないでしょ」
「だね」
 フッと笑って、薫が優吾さんを見下ろす。
「でも、それじゃ子供を作るためだけにするSEXってどうなの? それに産み分けを考えたSEXなんて邪道じゃない? 特に女の子希望のためのSEXなんてさ、あっさり淡白に結合も浅く、だって。それSEXっていえるのかな。ただの射精行為じゃないの?」
「それは……」
 優吾さんの寝顔。優吾さんの夢見る家族。私とだったら幸せな家庭が築けると言ってくれた。
「愛を確かめ合った二人になら許されるんじゃないかな。自分達の理想の家庭像を求めるのは悪いことじゃないと思う」
「お義姉さんってさ……」
 ふいに薫が立ちあがった。
「ムカつく。愛されてる自信たっぷりって感じで。さっきも母さんに似てるっていわれて嬉しいとか言っちゃって。本当はそんなこと思ってないでしょ? ねえ?」
 声を荒げる薫。初めてみた。
「ただ一人の人になりたいって思うのが人間の欲じゃないの? オレはなりたいよ。兄さんをオレだけのものにしたい。兄さんの大切な母さんもあんたもいなくなればいいっていつも思ってるよ。いなくなればいいって」
 綺麗な瞳から、一筋の涙が零れ落ちた。
「薫君……」
「でも、あんた達がいなくなったら兄さんが悲しむから。兄さんの大切な人達だから大切にしないといけないって分かってるから」
 もう一筋、涙が落ちる。
「だから……オレがいなくなるよ」
「え?」
それどういう……。
「死んだりはしないから安心して。オレが死んだら兄さんが悲しむって知ってるから」
 薫はそっと優吾さんの頬に唇をおろした。
「ばいばい。兄さん」
「待って。薫君!」
 去ろうとする薫の背中に言葉を投げる。
 ようやく気が付いた。私と薫は同じなんだ。愛に飢えた子供。でも、愛はここにある。
「そんな小さなものじゃないと思う。優吾さんの胸」
 薫が立ち止まる。
「私の両親、弟を溺愛していて私には関心がなかったの。でも人の愛の量なんてそんなものだと思ってた。だから優吾さんに会って、こんな人もいるんだって驚いたの」
病院で会う子供達への愛、母親への愛、薫への愛、たくさんの愛で溢れている人。私もその愛に包まれている。
「優吾さん、あなたのこと愛しているよ」
「でも……」
「薫君の居場所、ちゃんとあるよ。大丈夫だよ」
「だって……」
「薫」
 いつの間に、優吾さんが目覚めていた。逃げ出そうとした薫の腕を掴んでいる。
「ほんとに、馬鹿だなあ、お前」
「兄さん……」
 薫は小さな子供のようにしゃくりあげて泣きはじめた。大きな優吾さんの胸の中で。


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