goo

「地下鉄(メトロ)に乗って」(6)~不夜城~

カリブ海は暖かい南国の海ですが、カスピ海は冷たい塩湖です。ぜんぜんイメージが違います。

リー・チガイ監督の脚本には途中まで健一のバーが登場していました。
その名前が「バー・カスピ海」

そのネーミングをとても面白いと感じた種田さんはどこかにそのイメージを移し替えたいと考えていて、「夏美と健一の隠れ家」にそれを利用したのです。



「工事中のマンション」という設定だけど、はじめて不夜城を見た時は「なんでこんなに冷たくてよそよそしい」感じのマンションに!?
と、とても不思議に思った記憶があります。
だってとても「熱々の」カップルが入りたいと思うようなマンションじゃありませんよね(もちろん二人の関係は熱くもあり冷たくもありですけど)

ビニールが水の青さを感じさせる。
←DVDよりキャプチャ。

ふ~~ん、あの天井からぶら下がっているたくさんのビニール、すごく印象的でしたが、そんな意味合いがあったとは!

床は黒いタイル。太陽が届かないカスピ海の海底だ。健一と夏美は床の上でタイルの冷たさを肌に感じるはずだ

←DVDより。

なるほど~、これがそのシーンなんですね。
まっ暗い画面(始めてみた時はTVが壊れたかとぎょっとしました)の中から二人の声が聞こえてきて、またまた電話のベル(電話をかけてきたのはあの『ハンサム・スーツ』の天文さんです)が鳴って、健一がシーツの下からガバッと出てきます。

寒かったでしょうね~、ただでさえ真冬の、しかもたくさん雪の降ったあの年の冬、カスピ海の底(タイル)の上で(やれやれ、俳優さんも楽じゃありません)

カメラはその黒いタイルがよく映るように、健一の背中の真上から映しているんですね~~それにしてもこの健一の躍動的な背中の動きはすごいですね!その後の電話の退廃的なしゃべり方もなかなか~です。

種田さんがこう書いています。
部屋そのものがカスピ海だ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「地下鉄(メトロ)に乗って」(5)~不夜城~

実は私は不夜城のロケ地見学ってしたことがありません、ただ一か所を除いては。

メトロの新宿三丁目駅を降りると、そこはすぐ歌舞伎町です。
2004年の暮、東京でただ一か所上映された「ターンレフトターンライと」をみる時、ある友達が「それなら不夜城コースでミラノ座へ行ってみては?」とその詳しい道順を教えてくださって、私はようやく風林会館とかコマ劇場とか見ることができました。もちろんドトールコーヒー(靖国通りの)も。

先日買い損ねてしまった種田陽平さんの「TOWN for the FILMS」をお友達に貸していただき、読むことができました(大感謝!)。

120ページ余りの写真集の2/3は「不夜城」で、もちろん劉 健一も登場します(少ないですけど。でもあきらかに写真集Ryu Kenichiとは違うショットです)

すごーーーーーーく面白いです。
目から鱗とはこのことです。
メイキングのメイキングといったお話が展開されて、なるほどこんな風に「不夜城」ができたんだなぁと納得。

不夜城にはロケーションあり、室内セットあり、そして種田さん渾身の作であるオープンセットの歌舞伎町(この本ではSLEEPLESS TOWNと書かれています)が混然一体となって、どこが本物の歌舞伎町でどこがセットの歌舞伎町なのかぜんぜん映画を見ただけではわかりません。

この本ではすべての写真に「shinjuku」「sleepless town」と注釈が書いてあり、それを見て初めて、あぁあの健一のあのシーンがセットで、あれはロケなんだと納得した次第です。

中でもすごく面白かったのが「カリブ海の部屋」と「カスピ海の部屋」です。

不夜城の原作に出てくる健一の持っている「バー・カリビアン」は監督の最終脚本からは削除されたため、映画の中で健一の住まいはあのビデオ店の屋上の「ペントハウス」です。
でも、種田さんはどうしても「バー・カリビアン」をどこかに作りたくて。。。。。

↑健一のベットの後ろにCARIBBEANと書いたポスターを貼ったのです。

どうしてか、それは健一が「いつか新宿を出て、台湾にも上海にも香港にも行かず、カリブの島へ行くのだ」と夢見ているから。

そこで、私ははたと気づきました
健一の夢って、ダウンタウンシャドーのジャッカルの夢と同じじゃない!!

ブタペストの遊覧船に武とチャーリーが二人きりで乗ったとき、これからどうするのとチャーリーに聞かれた武は「カリブ海」と一言答えます(耳で聞くとカリビ・ハイですね

映画のシーンでもこのポスターはしっかり写っています。


「テラスは広い。くたびれ果てている椰子の鉢を置いた」


この夢にうなされ、夏美からの電話で汗びっしょりになって目を覚まし、テラスで電話を取りシーン、DVDで見ると暗くてよく見えませんが、スクリーンで見るととても明るく健一の表情など見えました。

長くなるので「カスピ海の部屋」についてはまたあとで。

この屋上の部屋についてはゆきんこさんが詳しく書いてくださっています。私も白ネズミさんにはまったく気がつきませんでした
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする