限りなき知の探訪

45年間、『知の探訪』を続けてきた。いま座っている『人類四千年の特等席』からの見晴らしをつづる。

想溢筆翔:(第?回目)『語源辞書の活用で伸びる英語力』

2024-03-17 08:40:25 | 日記
「現代社会において、英語ができることはいろいろな面で非常に良いことがある。」

こういうとたいていの人は「職業選択の幅も増えるし、給料も上がるだろう」というような実利を連想するであろう。確かに、そういった経済的メリットは認めるものの、私がここで言いたいのは精神的なものである。精神的なものというと、「そうだね、英語ができると英語に対するコンプレックスを感じなくて済むね」という反応が返ってきそうだ。確かに、私の身近にも押しも押されもしない高学歴でありながら、英語が出来ないことに強いコンプレックスに感じている人がいた。しかし、またもや私がいいたいのはそういう精神的なことではなく「英語という言語を通じて広がる知的水平線」がもたらす知的充足感のことである。

以前、出版した『社会人のリベラルアーツ』の最後『第6章 ギリシャ語・ラテン語を学ぶ ― TOEIC英語より多言語の語学を』というタイトルで、英語以外の語学を学ぶことを勧めた。日本人(だけでなく、世界の多くの人は)は語学と言えば実利をもたらす英語しか興味のない人が多いので、多言語、とりわけ実利には無縁のギリシャ語・ラテン語などは全く興味を示さないことだろう。しかし、このギリシャ語・ラテン語こそが、実は英語能力の向上につながるというのが、この章の一つのポイントでもあった。ギリシャ語・ラテン語を通じて英語の語源を知ることで、英単語の意味を正しく理解できるだけでなく、単語力増強に非常に役立つからである。つまり「英語力を上げたいのなら、語源辞書を積極的に利用する」ことが重要だ。



私は英語やドイツ語の本や記事を読んでいるときは、知っている単語であっても、気になる単語では今でも必ず語源辞書をチェックする。それは、昔から英語やドイツ語の辞書を引く時に、語源欄を丹念にチェックしていて語学力がかなり向上したからだ。英語の場合、語源欄をみると文章語(つまり、ちょっと難しい単語)の約7割から8割の語源は必ずギリシャ語かラテン語に行きつく。何度も何度もギリシャ語やラテン語に出会ったので、「果たしてこれらギリシャ語やラテン語の単語は本来のどういった意味はもっていたのか」と疑問に思うようになった。これが一つのきっかけとなり、後日、ギリシャ語とラテン語を独習し、さらにギリシャ語やラテン語の語源辞書まで購入した。長年の経験から、今では英語やドイツ語を読んでいる時に、別に辞書を引かずとも語源が推定できることが多く、直接、ギリシャ語やラテン語の語源辞書を引いて、本来の意味を調べることができるようになった。そうすると一層、各言語の関連がよく分かるようになった。

日本語環境で育つと、あまりにも漢字の影響力が強いため、つい言葉の意味を理解するのに視覚的要素が重要だと考えるようになってしまう。さらに、日本語はいわば孤立語であるため、語源不明の語彙がほとんどであるので、語源を探求するという習慣が文化として定着していない。しかし、ヨーロッパ語(印欧語)は、日本語とまったく逆で、音素が意味と密接に連携している。ヨーロッパ語を語源から学ぶと、言語とはまず、音韻から発達したと知るようになる。

たとえば、私の経験からいうと、知っている英単語数が1万単語位を超えてくると、英語の文章に、英語の土着語(he, it, cut, set などいわゆるアングロサクソン語)の合間に、ギリシャ語やラテン語語源のの難しい単語が見えると、丁度、白黒写真の合間に赤や青の点が混ざっている写真のように、その単語だけ色彩が異なって浮かび上がってくる。この「単語色彩」に鋭敏でない眼しかなければ(語彙力が少なければ)全てが白黒写真にしか見えないのであるが、「単語色彩」に鋭敏であれば((語彙力が多ければ))白黒写真の中に色鮮やかに点在しているギリシャ語やラテン語が目に飛び込んでくる。

一例として、英語、ギリシャ語(古典ギリシャ語)、ラテン語で同じ意味を持つ単語、「健康」と「切る」を比べてみよう。
英語 healing cut
ギリシャ語 hygene tomy (例:dichotomy)
ラテン語 sanus sect

どうだろう、ギリシャ語やラテン語の意味が分かると、知っている英単語の中から数多くの同系統の単語を見つけ出すことができるではなかろうか。英単語の意味を調べるとき、わずかな時間でも語源欄を読む習慣をつければ、知らず知らずのうちに必ずや語彙力が向上すること間違いない!

【参照ブログ】
 想溢筆翔:(第443回目)『ギリシャ語とラテン語は日本の知識人の鬼門(補遺)』



コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 智嚢聚銘:(第51回目)『中... | トップ | 智嚢聚銘:(第52回目)『中... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事