《試練》――現在史研究のために

日本の新左翼運動をどう総括するのか、今後の方向をどう定めるのか

中核派への挽歌

2015-09-12 21:01:02 | 書評:『革共同政治局の敗北』
《管理者コメント》見出しは勝手ながら管理者がつけました。元の見出しは「新刊紹介」として著者名・書名など書誌データが記されたものです。見出し紹介に1カ所誤記があったので、訂正しました。
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中核派への挽歌
赤岩 光彦
『置文21』№29 新刊紹介『革共同政治局の敗北』の転載
(『曙光』改題第441号/『置文』改題第36号)
2015年5月15日刊

 本書は革共同中核派の元政治局員二名が執筆した中核派への挽歌である。二名とは水谷保孝(峰岸武夫、早大)、岸宏一(麻生浩、慶大)の両氏で、水谷氏は一九四五年、岸氏は一九四七年生まれの全共闘世代だ。これまでに日共も含む左翼の党派で、これほどに表と裏の政治局員名や政治局会議の内容、幹部達の重要な会話を暴露した市販本を私は知らない。本書には、中核派における政治路線の転換の軌跡とそれをめぐる内部抗争、故本多氏を除く大幹部たちの腐敗堕落、発覚した内部スパイ事件などについても詳細に描かれており、「反帝反スタ党派の組織事情」の物語として興味深いが、革共同外部者の私には真実か否かの判断はできない。

 本書の目次大項目は次のとおりである。
 序章 革共同は疾風怒濤の時代を開いた
 第1部 〇六年三・一四党内テロ・リンチと諸結果
 第1章 三・一四Ⅱの本質
 第2章 三・一四Ⅱの発生(〇六年三~九月)
 第3章 杉並、東西分裂、七月テーゼ(〇六年一〇月~〇八年四月)
 第4章 動労千葉特化路線と粛清の党(〇八年四月~)
 第5章 党内リンチ事件の根拠と構造
 第2部 政治局の腐蝕はいつから始まったか 
 第6章 本多延嘉書記長虐殺を超克しえたか
 第7章 歪曲と転落の分岐点=第五回大会
 第8章 本多内乱・内戦論の改ざん
 第9章 清水政治局の堕落と党員の英雄主義
 第10章 九一年五月テーゼの虚実
 第11章 〝革共同政治局の敗北〟から新しい道へ
 あとがき

    *            *
 革共同は今、中央派(清水議長)、関西派、九州派に分裂しているそうだ。〇六年に革共同を離党した著者らは「革共同を名乗る政治組織がいま堕落した姿をあらわにしながら恥知らずにも延命をつづけていることにはがまんがならない」と言う。さらには「腐りきった革共同、革共同ならざる革共同は、丸ごと歴史の屑籠に放りこまなければならない。」と弾劾している。ずい分と思いきった言い草だが、その情念が本書執筆の動機の一つだろう。

 私は全共闘世代で、小党派と大衆組織で六七―七〇年闘争を経験したので、新左翼の中では大党派の中核派をいつも横目で見てきた。個人的には革共同の「反帝反スタ」理論には暗鬱さがとぐろをまくイメージがあり、本書を読むと、その思いが増幅される。そもそも社会主義圏がとっくの昔に消滅した今日、いつまでも「反スタ」論にしがみつくことにどんな意義があるのか疑問だが、本書にはその問題意識はうかがえない。

 本書は、革共同政治局の実態を暴露した。中核派の関係者、シンパ層には大いに気になる本だろうと推察する。

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(付)同誌「まえがき」から

……第二書評の赤岩同人の取り上げる白順社刊の本はつい最近刊行されたもので、赤岩氏はいちはやくそれを入手し、〆切りギリギリで入稿された。新左翼運動の総括の気運は様々なところで出てきていると思うが、事実の経過を押さえることは、そのベースとして大事だと思う。…………(前田)

(編集 『置文21』編集同人/発行所 フェニックス社)

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