隠岐病院、11月から複数医師赴任
中国新聞ニュース '06/5/14
▽島内出産再開へ
島根県隠岐の島町の隠岐病院が、常勤の産婦人科医師を確保できず
院内出産への対応を断念した問題で、同病院を運営する隠岐広域連合
(連合長・松田和久隠岐の島町長)は13日、11月から複数の常勤医師の
派遣を受けられるめどが立った、と発表した。島根県が新たに医師を確保
したためで、島内での出産が再開できる見通しとなった。
県や同連合によると、赴任の内諾を得たのは県外の医師。離島での1人
体制では医師の負担が大きく、複数体制の構築が課題だったが、県が医
師を確保できたことで県立中央病院(出雲市)が支援体制を組めるように
なった。同病院からの派遣も加え、2人体制での常駐を想定している。
12日夜、医師確保の見通しを県から伝えられた松田町長は13日、町役
場で会見。「島内で安全、安心な体制で出産できることになり、大変うれ
しい。島民に対し責任が果たせた」と話した。
隠岐病院の後任の産婦人科医師をめぐっては、同町と島根大医学部と
の交渉で、安来市立病院の医師(62)が一時、赴任の意向を固めたが、
支援体制の在り方などをめぐって調整が難航していた。
隠岐病院では、同大からの派遣医師が引き揚げられた後、県立中央病
院から臨時的な派遣を受けてきた。しかし、同病院でも医師不足が深刻
となり、4月15日以降の派遣を断念。島で出産を予定していた妊婦は、本
土での出産を余儀なくされた。今月12日までに19人が松江市などに渡り、
七人が出産している。(城戸収)
▽関係機関 欠かせぬ協調
【解説】 隠岐病院(隠岐の島町)で常勤の産婦人科医師が不在となった
問題は、県が新たに県外の医師を確保したことで事態が打開する見通しと
なった。だが、これは「対症療法」でしかない。産婦人科に限らず、医師不
足という構造的な問題は今後、中山間地域などでもさらに深刻さを増す。
公立病院とそれを開設する自治体、県、県内唯一の医師養成機関の島根
大医学部。難局に立ち向かうには三者の役割分担を明確にし、真の協調
関係を構築する必要がある。(城戸収)
県が隠岐病院の後任医師の確保に力を注いだのは、病院を運営する隠
岐広域連合に名を連ねていることや、離島という特殊性があったからだ。
各地の病院が医師不足に悲鳴を上げる中で、すべてのニーズに応える
力は県にはない。そして、人材確保に一義的に責任を負うのは病院と自治
体であり、県は支援者との立場。しかし、県の「正論」がどこまで自治体に
理解されているだろうか。
今回の後任探しの過程では、関係機関の対立が露呈した。隠岐の島町
側が島根大医学部産婦人科教授と交渉し、いったんは安来市立病院の
医師が赴任の意向を示したが、支援体制などについて「県への不信感」
から態度を保留したという。背景に、産婦人科医療体制や人事権などを
めぐって県側と教授側との意見の対立があった、と関係者は口をそろえる。
ただ、県や同町は一貫して、「医局」人事ではなく、組織としての責任を
明確にする大学人事扱いでの派遣を求めた。地域医療機関への医師派
遣の役割を担う島根大医学部として内部調整できず、答えを出せなかった
ことは、町民や妊婦たちを振り回すことになってしまった。
この先も間違いなく続く医師不足という現実を見据え、関係機関がいか
に歩調を合わせ、自らの役割と責任を果たせるか。隠岐病院問題が映し
出した課題である。
先日、'05年の合計特殊出生率が1.25にまで下がったことが報じられて
いました。政府の少子化対策も、「百年安心」の「改革」も全く効果を発揮
しなかったわけです。猪口少子化対策担当大臣は「結婚件数の増加は
明るい兆し」などとのたまってましたが、晩婚化も進んでいますし、少子化
は今に始まったことではなく、これから結婚適齢期を迎える人がどんどん
減っていくわけですから、子どもの数が劇的に増えることはまずありえま
せん。「第三次ベビーブーム」は起こらない、というのが専門家の一致した
見方です。
人口も1899年に統計を取り始めて以来初の自然減となり、この国の将来
が案じられるところです。
ところが、子どもを産もうにも産科医がいない地域があるというのですから
困った話です。少し前には、岩手県が中国人の研修医を受け入れたこと
で騒がれていましたが、産科医の不足は深刻化しているようです。
それにしても、最終的にはどうにか目途が立ったとはいえ、隠岐でも医師
の確保に苦労するようでは、竹島を実効支配したとしても、人が住むのは
到底無理だろうな、と思わずにはいられません。
「くれてやればいい」という朝日新聞の主張はどうかと思いますが、結局
のところ生活がかかっている地元の漁業関係者を除けば、シンボリックな
存在でしかないのかな。
中国新聞ニュース '06/5/14
▽島内出産再開へ
島根県隠岐の島町の隠岐病院が、常勤の産婦人科医師を確保できず
院内出産への対応を断念した問題で、同病院を運営する隠岐広域連合
(連合長・松田和久隠岐の島町長)は13日、11月から複数の常勤医師の
派遣を受けられるめどが立った、と発表した。島根県が新たに医師を確保
したためで、島内での出産が再開できる見通しとなった。
県や同連合によると、赴任の内諾を得たのは県外の医師。離島での1人
体制では医師の負担が大きく、複数体制の構築が課題だったが、県が医
師を確保できたことで県立中央病院(出雲市)が支援体制を組めるように
なった。同病院からの派遣も加え、2人体制での常駐を想定している。
12日夜、医師確保の見通しを県から伝えられた松田町長は13日、町役
場で会見。「島内で安全、安心な体制で出産できることになり、大変うれ
しい。島民に対し責任が果たせた」と話した。
隠岐病院の後任の産婦人科医師をめぐっては、同町と島根大医学部と
の交渉で、安来市立病院の医師(62)が一時、赴任の意向を固めたが、
支援体制の在り方などをめぐって調整が難航していた。
隠岐病院では、同大からの派遣医師が引き揚げられた後、県立中央病
院から臨時的な派遣を受けてきた。しかし、同病院でも医師不足が深刻
となり、4月15日以降の派遣を断念。島で出産を予定していた妊婦は、本
土での出産を余儀なくされた。今月12日までに19人が松江市などに渡り、
七人が出産している。(城戸収)
▽関係機関 欠かせぬ協調
【解説】 隠岐病院(隠岐の島町)で常勤の産婦人科医師が不在となった
問題は、県が新たに県外の医師を確保したことで事態が打開する見通しと
なった。だが、これは「対症療法」でしかない。産婦人科に限らず、医師不
足という構造的な問題は今後、中山間地域などでもさらに深刻さを増す。
公立病院とそれを開設する自治体、県、県内唯一の医師養成機関の島根
大医学部。難局に立ち向かうには三者の役割分担を明確にし、真の協調
関係を構築する必要がある。(城戸収)
県が隠岐病院の後任医師の確保に力を注いだのは、病院を運営する隠
岐広域連合に名を連ねていることや、離島という特殊性があったからだ。
各地の病院が医師不足に悲鳴を上げる中で、すべてのニーズに応える
力は県にはない。そして、人材確保に一義的に責任を負うのは病院と自治
体であり、県は支援者との立場。しかし、県の「正論」がどこまで自治体に
理解されているだろうか。
今回の後任探しの過程では、関係機関の対立が露呈した。隠岐の島町
側が島根大医学部産婦人科教授と交渉し、いったんは安来市立病院の
医師が赴任の意向を示したが、支援体制などについて「県への不信感」
から態度を保留したという。背景に、産婦人科医療体制や人事権などを
めぐって県側と教授側との意見の対立があった、と関係者は口をそろえる。
ただ、県や同町は一貫して、「医局」人事ではなく、組織としての責任を
明確にする大学人事扱いでの派遣を求めた。地域医療機関への医師派
遣の役割を担う島根大医学部として内部調整できず、答えを出せなかった
ことは、町民や妊婦たちを振り回すことになってしまった。
この先も間違いなく続く医師不足という現実を見据え、関係機関がいか
に歩調を合わせ、自らの役割と責任を果たせるか。隠岐病院問題が映し
出した課題である。
先日、'05年の合計特殊出生率が1.25にまで下がったことが報じられて
いました。政府の少子化対策も、「百年安心」の「改革」も全く効果を発揮
しなかったわけです。猪口少子化対策担当大臣は「結婚件数の増加は
明るい兆し」などとのたまってましたが、晩婚化も進んでいますし、少子化
は今に始まったことではなく、これから結婚適齢期を迎える人がどんどん
減っていくわけですから、子どもの数が劇的に増えることはまずありえま
せん。「第三次ベビーブーム」は起こらない、というのが専門家の一致した
見方です。
人口も1899年に統計を取り始めて以来初の自然減となり、この国の将来
が案じられるところです。
ところが、子どもを産もうにも産科医がいない地域があるというのですから
困った話です。少し前には、岩手県が中国人の研修医を受け入れたこと
で騒がれていましたが、産科医の不足は深刻化しているようです。
それにしても、最終的にはどうにか目途が立ったとはいえ、隠岐でも医師
の確保に苦労するようでは、竹島を実効支配したとしても、人が住むのは
到底無理だろうな、と思わずにはいられません。
「くれてやればいい」という朝日新聞の主張はどうかと思いますが、結局
のところ生活がかかっている地元の漁業関係者を除けば、シンボリックな
存在でしかないのかな。