Naked Heart

その時々の関心事をざっくばらんに語ります

イラクと自衛隊と牛肉

2006年06月23日 05時30分19秒 | 時事・社会
陸上自衛隊のイラク派遣部隊の「撤収」が発表されました。政府がこの
言葉を使ってから、メディアから一斉に「撤退」が消えてしまいましたね。
ネガティブイメージを消すのに躍起、ということでしょうか。
この間の活動について、「サマワの新生児死亡率が3分の1に減った」
とか「自衛隊が『給水』した水は市民の元には届いていない」とか、様々
な情報が飛び交っています。前者はサマワ母子病院の2002年上半期
データとの比較のようです。だとすると、「イラク戦争」の「開戦前」から、
サマワの衛生環境は非常に悪かったということになります。「復興支援」
とは趣きが異なってきますし、「湾岸戦争」以降の対イラク経済制裁など
の悪影響は無かったのか、十分な検証が必要です。後者については、
例えばフランスのNGO「ACTED」の活動ぶりなどを伝え聞くと、「日本の
自衛隊が給水活動の中心を担った」などという自己宣伝報道はかなり
怪しく思われます。少なくとも、「人道支援」ならば隊員の安全に関わる
最重要事項以外は情報をすべて開示し、きちんとチェックを受けるので
なければ、こうした批判を否定することもできないでしょう。
(会計検査院はイラクまで行って調べることはしないでしょうし。)

一方で、航空自衛隊の輸送業務は活動範囲を拡大します。
安倍官房長官は「空港は非戦闘地域」だとのたまったそうで。さすがは
ポスト小泉。頭の構造がそっくりなようです。
そもそも輸送業務は軍事行動そのもの。要は「兵站」です。何を以って
「非戦闘地域」と言うのか定義が分かりませんが、例えば自衛隊機が
在日米軍の基地間の武器輸送を請け負ったりすることが可能なのか
(そもそも日本がそんなことをする必要があるのか)を考えると、これは
「協力」ではなく立派な連合軍です。そう考えないと辻褄が合いません。

「空自支援拡大は陸自撤収とセット」という指摘は、さすがに日本国内
のメディアでも目にします。が、私にはもう1つセットになっているように
思えてなりません。それは米国産牛肉輸入再開合意です。あまりにも
良すぎるタイミング、そして国民の不安の声を全く無視した、最初から
「結論ありき」だったとしか思えない経過と内容。日米首脳会談への
手土産としてだけでなく、「陸自撤収」でますます高まるであろう米国
の厭戦ムードと対日バッシング(それはブッシュ大統領の支持率にも
影響します)への対応として意味合いを含んでいるでしょう。ブッシュと
小泉はお互いに「唯一の頼れる相手」のようですから。
しかし、600人の隊員の帰国のために全国民の食の安全を放棄したと
なると、「自衛隊員が無事に帰れて良かった」では済まされません。
さらに、空自も海自も「撤収」するには、何を提供しなければならないか
と考えると、先が思いやられます。少なくとも「安倍首相」だとね。

※補記
「空港は非戦闘地域」発言は額賀防衛庁長官でした。
ただし安倍官房長官も「空自撤収は状況を適切に判断して」と述べて
おり、現時点では「問題なし」と判断していることは明らかです。