16歳以上の来日外国人に指紋情報の提供を義務付け、入国審査だけ
でなく犯罪捜査にも利用するという出入国管理・難民認定法(入管法)
改正が5月17日に可決・成立しました。
共謀罪に関してはネット上では大いに盛り上がり、このブログでも何度
か取り上げました。教育基本法改正は、いまいち反応は鈍いものの、
自民党文教族が何十年も前から血道を上げ続けてきてるだけあって、
条文は知らなくても認知度は意外と高いように思います(その分、「よく
分からないけど賛成」派が多いという問題はありますが。)それに引き
換え、入管法改正はほとんどの人が審議されてることすら知らなかった
かも知れません。しかしこれは実のところ、共謀罪と並んで、「テロとの
戦い」のための最重要法案であったわけです。
米国が昨年、入国する外国人の指紋や顔写真などの提供を義務付け
たことは、日本でも大きく報じられました。そのような措置を採っている
のは、先進国では米国だけです。恐怖政治を敷いている「ならずもの
国家」でもそういう話は聞いたことがありません。
ところが、日本政府はものの見事に米国に追従して、「悪い見本」の
仲間入りをしてしまいました。指紋提供義務化がどれほどの大問題で、
反発を招くか、「在日」問題で痛感してる筈なのにね。
しかも、収集されたデータは、70年間も保存され、犯罪捜査にも流用
されること、要請があれば外国にも提供することが、審議の中で明らか
になっています。入管システムを担当するのは、米国の同システムも
受け持ったアクセンチュア社です。米企業が世界規模での個人情報
独占に乗り出していることも覗われます。
法改正は米中枢同時テロなどを受け、政府が'04年12月に策定した
「テロの未然防止に関する行動計画」を踏まえた内容で、法相がテロ
リストと認定した人物を退去させられる規定や、日本に入国する航空
機や船舶に対する乗員・乗客の名簿の事前提出義務も盛り込まれて
います。片やヨーロッパでは、欧州司法裁判所が先日、EUが航空機
の旅客情報を米国に提供することは違法との判断を下しました。この
違いはどこから来るのでしょうか。
いつもそうですが、この問題でも「別に悪いことしてなければ困らない
でしょ?」というおとぼけ発言が目につきました。指紋を採るなんて、
悪いことをした人がさせられることだと思うんですけど、こういう人は
指紋を採られる人の気持ちは分からないのでしょうか。
私の友人のミュージシャンMIXさんのブログには、こんなことが書いて
ありました。
ということを考えていた矢先にドイツで聞いた日本の入管法改正
のニュース。向こうのニュースでも外交欄のトップになってました。
ほぼ「鎖国時代に戻るのか」とか「アメリカの影響受けすぎじゃん」
っていう論調だったみたい。ちょうど友人に、「次はそっちが日本に
おいでよ」っていう 話しをしてた直後だったので、旦那さんと一緒に
かなりショックを受けてました。指紋とるって、やっぱりあなたは
外国人だからちょっと危ないんじゃないか疑ってますってことだもん
な…。私もびっくりしたし、法案があることすら知らなかった自分の
無知さも。
テロとか色々あるご時世、そりゃ爆弾とか薬とか銃を持ってたら
追い出されるのは当然だし、空港はそういうチェック機関でもある
わけで、そこは毅然としてればいいけど、それに加えて日本はもう
ちょっと胸はって「ようこそ」とも人を受け入れられる度量があって
もいいのでは。それを無くしてむやみに疑心暗鬼の塊だけで動く
ようになってくると、ちょっと怖い。
(すでにそういう傾向、政治レベルでも民間レベルでもだいぶある
気がする)
「この彼らが日本に来た時に指紋捺印させるのやだなー」っていう
感情の部分とはまた別に、社会の中でこういう人に対する疑念とか
警戒心が強まってくると、むしろ犯罪や紛争は増長するんじゃない
かっていう不安もあり、個人的にはタイミングもあいまってかなり
考えさせられたニュースでした。
海外在住の自分の友人が採られなきゃならないとしたら、あるいは
自分が外国に行って、同じ立場に置かれたら、どうでしょう。
もちろん、この問題の恐ろしいところはそれだけじゃなくて、集め
られた個人情報が悪用される懸念が払拭できない点にもあります。
警察や行政を本当に100%信用できますか?ということです。数々
の事件・不祥事に対する反応を見ていると、そういう人は皆無に
近いと思えてならないのですが。
ところで、前回取り上げた杉原千畝は、当時の盟友であったドイツ
('36年に防共協定を結んでおり、杉原がビザを発給していた頃に
はイタリアを含む三国軍事同盟が締結目前だった)の対ユダヤ人
政策とは相容れない行動を取っていました。それが通説通り杉原
の個人行動ならばもちろん、仮に日本政府の意向に沿ったもので
あったとしても、彼の取った行動はドイツとの関係を悪くし、国益を
損ないかねないものでした。
もしそのような行為が、後世評価され、誇るべきことになるのであれ
ば、今日、米国の「テロとの戦い」に全面協力し、米国政府の意向
に追従して、イスラムへの差別・偏見の増長にも加担している日本
政府・日本人はいかがなものなのでしょうか。アジアの人たちへの
態度はどうでしょうか。
杉原を誇りたいなら、大勢に流されること無く、人道主義を貫くべき
ではないのでしょうか。
でなく犯罪捜査にも利用するという出入国管理・難民認定法(入管法)
改正が5月17日に可決・成立しました。
共謀罪に関してはネット上では大いに盛り上がり、このブログでも何度
か取り上げました。教育基本法改正は、いまいち反応は鈍いものの、
自民党文教族が何十年も前から血道を上げ続けてきてるだけあって、
条文は知らなくても認知度は意外と高いように思います(その分、「よく
分からないけど賛成」派が多いという問題はありますが。)それに引き
換え、入管法改正はほとんどの人が審議されてることすら知らなかった
かも知れません。しかしこれは実のところ、共謀罪と並んで、「テロとの
戦い」のための最重要法案であったわけです。
米国が昨年、入国する外国人の指紋や顔写真などの提供を義務付け
たことは、日本でも大きく報じられました。そのような措置を採っている
のは、先進国では米国だけです。恐怖政治を敷いている「ならずもの
国家」でもそういう話は聞いたことがありません。
ところが、日本政府はものの見事に米国に追従して、「悪い見本」の
仲間入りをしてしまいました。指紋提供義務化がどれほどの大問題で、
反発を招くか、「在日」問題で痛感してる筈なのにね。
しかも、収集されたデータは、70年間も保存され、犯罪捜査にも流用
されること、要請があれば外国にも提供することが、審議の中で明らか
になっています。入管システムを担当するのは、米国の同システムも
受け持ったアクセンチュア社です。米企業が世界規模での個人情報
独占に乗り出していることも覗われます。
法改正は米中枢同時テロなどを受け、政府が'04年12月に策定した
「テロの未然防止に関する行動計画」を踏まえた内容で、法相がテロ
リストと認定した人物を退去させられる規定や、日本に入国する航空
機や船舶に対する乗員・乗客の名簿の事前提出義務も盛り込まれて
います。片やヨーロッパでは、欧州司法裁判所が先日、EUが航空機
の旅客情報を米国に提供することは違法との判断を下しました。この
違いはどこから来るのでしょうか。
いつもそうですが、この問題でも「別に悪いことしてなければ困らない
でしょ?」というおとぼけ発言が目につきました。指紋を採るなんて、
悪いことをした人がさせられることだと思うんですけど、こういう人は
指紋を採られる人の気持ちは分からないのでしょうか。
私の友人のミュージシャンMIXさんのブログには、こんなことが書いて
ありました。
ということを考えていた矢先にドイツで聞いた日本の入管法改正
のニュース。向こうのニュースでも外交欄のトップになってました。
ほぼ「鎖国時代に戻るのか」とか「アメリカの影響受けすぎじゃん」
っていう論調だったみたい。ちょうど友人に、「次はそっちが日本に
おいでよ」っていう 話しをしてた直後だったので、旦那さんと一緒に
かなりショックを受けてました。指紋とるって、やっぱりあなたは
外国人だからちょっと危ないんじゃないか疑ってますってことだもん
な…。私もびっくりしたし、法案があることすら知らなかった自分の
無知さも。
テロとか色々あるご時世、そりゃ爆弾とか薬とか銃を持ってたら
追い出されるのは当然だし、空港はそういうチェック機関でもある
わけで、そこは毅然としてればいいけど、それに加えて日本はもう
ちょっと胸はって「ようこそ」とも人を受け入れられる度量があって
もいいのでは。それを無くしてむやみに疑心暗鬼の塊だけで動く
ようになってくると、ちょっと怖い。
(すでにそういう傾向、政治レベルでも民間レベルでもだいぶある
気がする)
「この彼らが日本に来た時に指紋捺印させるのやだなー」っていう
感情の部分とはまた別に、社会の中でこういう人に対する疑念とか
警戒心が強まってくると、むしろ犯罪や紛争は増長するんじゃない
かっていう不安もあり、個人的にはタイミングもあいまってかなり
考えさせられたニュースでした。
海外在住の自分の友人が採られなきゃならないとしたら、あるいは
自分が外国に行って、同じ立場に置かれたら、どうでしょう。
もちろん、この問題の恐ろしいところはそれだけじゃなくて、集め
られた個人情報が悪用される懸念が払拭できない点にもあります。
警察や行政を本当に100%信用できますか?ということです。数々
の事件・不祥事に対する反応を見ていると、そういう人は皆無に
近いと思えてならないのですが。
ところで、前回取り上げた杉原千畝は、当時の盟友であったドイツ
('36年に防共協定を結んでおり、杉原がビザを発給していた頃に
はイタリアを含む三国軍事同盟が締結目前だった)の対ユダヤ人
政策とは相容れない行動を取っていました。それが通説通り杉原
の個人行動ならばもちろん、仮に日本政府の意向に沿ったもので
あったとしても、彼の取った行動はドイツとの関係を悪くし、国益を
損ないかねないものでした。
もしそのような行為が、後世評価され、誇るべきことになるのであれ
ば、今日、米国の「テロとの戦い」に全面協力し、米国政府の意向
に追従して、イスラムへの差別・偏見の増長にも加担している日本
政府・日本人はいかがなものなのでしょうか。アジアの人たちへの
態度はどうでしょうか。
杉原を誇りたいなら、大勢に流されること無く、人道主義を貫くべき
ではないのでしょうか。