京都社会保障推進協議会ブログ

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再び生活保護通院移送費の支給停止について(その2)

2008年04月25日 04時24分07秒 | 資料&情報
 前回に続き、生活保護通院移送費打ち切り問題の資料を紹介します。


 後述しますが、厚労省は4月16日の交渉で、問題点を指摘されると「福祉事務所の判断」「その地方の状況で」など、無責任な態度をとっています。
 厚労省への撤回要求とともに自治体の態度も問われるものであり、全京都生活と健康を守る連合会が京都府に申し入れた文書を掲載します。

移送費は、これまでどおり支給するよう、国に強く求めてください
京都府知事 山田啓二 様
全京都生活と健康を守る連合会
会長 平本克行

 日頃は、府民の暮らしを守るためにご尽力いただき、ありがとうございます。
 さて、この間の生活保護基準の切り下げや、灯油を初めとした諸物価の値上がりで、生活保護を利用している人たちの生活は、大変厳しいものとなっています。
 厚生労働省が、3月3日に示した「通院移送費の取り扱い見直し」は、医療移送費の大幅な制限であり、通院治療を続ける保護利用者にとって、「病院に行くな」と言わんばかりの仕打ちです。
 厚労省は、北海道滝川市の事件を口実にして、今回の「見直し」を出してきましたが、まったく問題の本質が違います。
 打ち切られた通院移送費を生活費(生活扶助)から出すことになれば、実質、保護基準の切り下げになり、最低限度の生活が侵害されることになります。
 生活保護利用者が安心して医療が受けられるよう、そして健康で文化的な最低限度の生活が保障されるよう求めます。
 通院移送費は、これまで通り支給するよう、国に強く求めてください。
以上
2008年3月21日


 首都圏や大阪市で「重大な影響」と厚労省に要請

 朝日新聞の報道では、東京都や横浜市など首都圏7自治体は「受給者に重大な影響をあたえる」と厚労省に要請書を出しています。また大阪市では具体的な判断の目安が明らかになるまで見合すとしています。同時に、すでに移送費支給を打ち切られた例が出るなど、すでに深刻な被害も生まれているとしています。

 朝日新聞報道記事


4月16日、12団体よびかけの厚労省交渉内容メモ(七瀬氏のブログより)
 生活保護問題対策全国会議、中央社保協、全国公扶研、全日本民医連、NPO法人もやい、全生連、DPI日本会議が呼びかけた交渉経過について、ブログ(七瀬さん)で公表されています。個人のブログですが、「転送・転載歓迎」とされていますので、参考資料として掲載します。なお、あきらかに入力変換間違いと思われる単語もありますがそのまま記載しています(社保協事務局 山本)



2008年4月16日(水)通院移送費等の削減の撤回と、通知に関わる質問に関する厚生労働省交渉

厚労省への質問内容

1、この問題での国会質問において、舛添要一厚生労働大臣は「必要な医療を受けられないという事態は起こさない」と及び、中村秀一社会・援護局長の「現に受けられている方の継続性については充分配慮してまいりたい」という国会答弁をしているが、今回の通知等のどの部分で明示されているのかを明らかにすること。
2、私たちは「通院に係る交通費は生活扶助費には含まれていない」と考えるが、今回の通知は「生活扶助費に含まれている」という考え方によるものなのか、そうだとしたらその算定根拠について明らかにすること。
3、今回の通知等によれば移送費の一般的支給は、国民健康保険の例により、災害現場等から緊急搬送する場合、離島等で対応できる最寄りの医療機関に搬送する場合等、緊急の場合のみに限定する内容となっているが、従前認められていた移送費の支給範囲を、国民健康保険の例により、緊急の場合のみに限定した根拠を資料等含めて明らかにすること。
4、そして、上記の範囲で対応が困難な場合は、「例外的給付」として①身体障害者等により電車・バス等の利用が著しく困難な場合 ②ひき地等により最寄の医療機関に通院する場合 ③健診命令により健診を受ける場合 ④往診等の4点に限定した上、例外的給付を認める場合であっても、受診する医療機関は原則として福祉事務所管内の医療機関としているが、その根拠について明らかにすること。
5、今回の「改正」によって、経済的理由により、通院困難者が大量に発生することになれば、傷病者等の自立において著しい障害になるものと考えられるが、今まで通院交通費を受給されていた方の内、どれくらいの割合の方が受給できなくなるのか、その人数、割合、支給量等を明らかにすること。
6、また、精神障がい者の方たちも精神科への通院交通費が大幅に制限されることは同様であるが、「精神病院からの退院促進」を目標に掲げている厚生労働省の方針にも反していると考えるところであるが、そのことについてどのような見解をもっているのかを明らかにすること。
7、従来保障していた大多数の生活保護利用者の方たちの通院移送費を制限することは、生活保護法の必要即応の原則を踏みにじるものであり、生活保護法違反と考えるが、そのことについてどのような見解をもっているのかを明らかにすること。
8、また、移送の給付を認める場合、「原則として福祉事務所管内の医療機関とすること」は、生活保護利用者の医療を受ける権利を著しく侵害することになり、「法のもとでの平等」を明記している憲法の規定にも違反していると考えるが、そのことについてどのような見解をもっているのかを明らかにすること。
9、2008年3月の主管課長会議資料によれば、「通院移送費の全国調査のないようについて集計等を行っている」となっているが、その調査は、月額3万円以上通院移送費を支給している世帯だけを調査したものと聞いているところであるが、通院移送費を支給している世帯の全数調査をなぜ実施しないのか、その理由を明らかにすること。
10、従来であれば、全国のブロック会議等で地方自治体等の意見を聞いたうえで、今回のような「改正」等を実施していたのが通例であるが、何故今回は、地方自治体等の意見聴取を行わず、一方的な実施を行ったのか、その理由を明らかにすること。
11、3月21日付けで、埼玉県、千葉県、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市及び東京都が連名で「通院移送費に係る医療扶助運営要領の改正について」という意見を提出しているが、これに対する考え方を明らかにすること。


通院移送費等の削減の撤回と、通知に関わる質問に関する厚生労働省交渉メモ(宮下)ー(その1)

七瀬です。私も交渉に参加いたしました。私のした質問は「へき地」の意味を広辞苑で調べた上で使うべきだ(23区も「へき地等」として自治体の福祉事務所が判断しうるとの発言がありましたので)というものですが、メモには記載されておりません。他にも多くの質問・発言がメモですから載っておりません。全発言、会場の机の上においたあったテープレコーダーに録音されております。
以下、転送・転載歓迎!(リンクも可)
なお、以下 「こ」 と略記されているのは厚生労働省側のことををさします。
2008年4月16日(水)
通院移送費等の削減の撤回と、通知に関わる質問に関する厚生労働省交渉メモ(宮下)

団体:生活保護問題対策全国会議、中央社保協、全国公扶研、全日本民医連、NPO法人もやい、全生連、DPI日本会議
対応:厚生労働省社会援護局医療係長・アンビル(安蛭?)氏

厚労省からの回答
1.医療扶助の支給費に関する通知は4月1日の通知により、国保世帯の例による。例外的給付として身体障害などにより、必要な場合にだすことは。必要な医療を受けれない状況はないと考えてる。
点に受けられている方の継続性について。4月4日の課長通知にもよる。現在通院移送費を受けている人に対し、是正期間をもうけることを国として明示した。十分な検討をしないで打切りをするような事態が起こらないように各自治体に徹底しているところ。
2.通院に係る交通費は生活扶助に含まれるかどうかについて。
生活扶助基準そのものが、日常生活に最低必要なものを指している。この中に、当然通院費も含まれている。通院交通費だけをクリアカットにくり抜いての、算定根拠については把握していない。
3.一般的給付の要件について。
生活保護法52条によると「国保の診療報酬の規定によること」としているので、国保で支給される給付の範囲としたところ。
4.例外的給付について。
受診する医療機関・医療扶助は、そもそも被保護者の方の要望にそってやるものだと考える。ただし、必要な医療を受けるためにやむを得ない場合など、福祉事務所管外の医療機関での受診が必要な場合は移送費が支給されることがある。
5.今回の「改正」によって、どれくらいの割合の人が受給できなくなるのか。
どのくらいの人が支給できなくなるか、という現状は把握していない。
6.精神障害の人たちの人への対応について。
精神障害の人であっても、移送の給付が必要な場合、保護の実施機関である福祉事務所が認めた場合は大丈夫なので、必要な医療が受けられない状況はないと思っている。
7.従来保障していた通院移送費を制限することが生活保護法の必要即応の原則を踏みにじるため、憲法違反になる、という考えについて。
被保護者の生活状態をみて、移送費が必要な場合には支給できるので、憲法違反には当たらないと考えている。
8.かかる医療機関を「福祉事務所館内」とすることは憲法違反だという考えについて
まずは通院できる医療期間内で通院できれば必要な医療を受けられないようなことはない。所管外の医療機関を受診できるようにも配慮しているので、憲法違反にはあたらないと考えている。
9.通院移送費の調査対象が限定されていることについて。
全国の通院移送費の支給実態については、毎年度実施している。昨年度は130万件で44億円かかった。今回の調査は、そのものが通院移送費に多額の不正受給がおこなわれていたことをきっかけに行ったもので、過大な給付が出ていないか調査した。したがって、三万以上のところで限定して調査したもの。
10.地方自治体の意見をきかず一方的に実施した理由。
滝川市をはじめとした不正受給をきっかけに、移送費は必要な最低限度の額を明確にする必要があった。
移送に必要な最低限度の額を変更するのではなく、全国の自治体の基準となるものを明示したにすぎないので、意見を聞かずに改正した。
11.全国の自治体からの「時期宗匠ではないか」という意見にたいして。
この指摘があったことは理解しているが、一般国民からは移送に対する疑念の声が多数きこえた。全国的な移送の基準を早急に判断する必要があった。

以下、実際のやりとり(7→要請7団体、こ→厚労省)
 
7 「国民の多数の声」というが、具体的にその数を把握しているのか
こ 国勢調査受給というものがあり、それで理解しているつもり。
通院移送費の「高額」という趣旨についての判断は、各地域で一般世帯の基準(通院交通費がどのくらいかかっているのかなど)を決めてほしい。厚労省としてこの基準を示すつもりはない。

7 わたしは福祉事務所にいるが、今回の通知を自治体が使えば、「へき地」でない東京は、8~9割の人が通院移送費は出なくなるという認識になる。特に精神科を受信している被保護者は受けられない人が多い。厚労省の認識と地方自治体の認識とは違うと思うがどうか。(田川)
こ 山間地帯などというように、「へき地」を国としては明確に示してはいない。東京23区内にあっても、通院いそう非が必要な場合はだすことができる。

7 厚労省が「へき地」といったら、東京の福祉事務所としては、当然駄目だとおもってしまう。(田川)
7 今までバスを使って通院していた。移送費を申請していたが、これを駄目だというのか。
こ 基本的には、生活保護費の中に含まれていると考えているので、突発的な風邪などを外し、慢性的に通院する場合などは(支給は)考えていない。

7 一般世帯の所得状況と被保護者の所得状況は明らかに違う。それなのに、いきなり通院移送費が出なくなるというのはあまりにも乱暴だと思う。
こ 通院移送費が出るかどうかの判断は、高額であるかどうかだと思っている。
1000~2000円という額なら、生活保護費の中から出してほしいと思っている。
高額であるかどうか(あったとしても)、やむを得ない場合は出すものだと考えている。

7 「へき地等」というところを、明確にしないのはおかしい。
こ これは徹底していきたいと思う。(各自治体に)

7 厚労省の通知は限定的な文章なので、文言を「へき地等」にしておいて、この中身を読み込め、と自治体に求めるのは無理だと思う(田川)
こ ・・・(こたえられない)
  
厚労大臣が言っているのは、「必要な医療がうけられない状況はないように考えている」といっている。

7 厚労省が記載している「移送の給付ができるひと」というのは、ほとんどの人が対象にならないと思うがどうか。
こ 最終的には保護の実施機関である自治体が判断して、対象にならないということはないと思う。

7 自治体の職場の職員が8~9割が対象にならないと読み込めるのだと言っている。このような状態だと国民がとても困る。わたしたちはこのことを言っているのだが?(田川)
こ 自治体によって認識の違いがある、というのは認識している。「へき地」については、今後Q&Aなどを出して定めていきたいと思う。


通院移送費等の削減の撤回と、通知に関わる質問に関する厚生労働省交渉メモ(宮下)ー(その2)

7 滝川のような事態が起こらないように、というのが本当なら、地域でこのような事件があったのか調査しているのか。全国一律というが、それはどういうことか。
こ 審査の基準などを全国一律ということを検討した。これをもって地域の実情に応じて判断すると思う。

7 福祉事務所単位で調査もしていないのに「地域の実情に応じたもの」にはできない。これに対して指示などを出しているのか。
こ 東京都では2000円という金額をだしている。

7 東京では、国に対する質問状を上げているが回答がない。地域の実情についてどう調査するのか。普通に読むと、23区は「へき地」に含まれないと思ってしまう。
こ これまで出していた人に対して今後出せない、ということはないと思う。是正措置期間をおいて、移送費の適正化を述べ配慮する。「是正措置」というのが「継続性」としている。

7 一番近い医療機関に通っている人も移送費が出なくなると困る。こういった実状についてはどうやって把握するのか
こ ・・・(こたえられない)

7 さいたま市では「通院交通費が廃止になりました」と通知している。へき地を除いたところでかつ、電車・バスを利用できない、高額である、という要件にあてはまらない場合は通院移送費は出ないということなのか
こ そうです。

7 これによって、何人が通院できなくなるのか、調査したのか
こ していない。そもそも、通院移送費は医療扶助で全てみていたのかわからない。生活扶助の中に通院移送費が入っていると思っている。

7 それは違う。今までも、乗車券等、受け取って通院移送費を出していたことに対して調査で指摘されたこともなかった。さいたま市の例は間違っていると思うがどうか。
こ 若干間違っている。例外の部分が書いていない

7 今まで一度も指摘されたことのない通院移送費が今後はどうなったのか
こ 移送に必要な額というのは、明確な判断がない。医療移送なのか、生活移送なのか、明確な判断がなかったので、国として指導ができなかった。

7 東京都は、路上生活者に対して、生活扶助を出さず、医療移送を出していた。
生活移送とは別のものだと言う認識から出してきた。今後はだせないのか。このことに対して質問も出している。(田川)

7 福祉事務所にいるが、現場では混乱が起きている。へき地とは?という規定をいいあてないと、はっきりしない。誤解や質問が出てしている。誤解を招かない通達を出す必要があると思うし、本来出すはずの移送費が出なくなることに対して、行政としての責任を感じてしまう(田中)

7 支給基準が不明確だったのを明確にした。変更はないといっているが、実際、あまりにも矛盾が大きすぎる。
こ 移送という基準自体をかえるのもではない。

7 わたしはウスイコツ脳動脈瘤という病気。統合失調症で15年も入院してきた。ある日突然、保護から通院費が出なくなるといわれた。いつ、どこで、だれが、どのようなことでこんなことになったのか。片道何百円かが、積み重なれば大きな金額になる。却下されることは許されない(受給者)

7 埼玉県に住む40代の保護受給者だが、前月に移送費がなくなる、という通知もなかった。わたしは通常は市内の開業医にかかっているが、体調がすぐれないので、市外の病院に通いたいと言ったら「医療券も同じ科なのでだせない。一度総合病院にかかるのであれば、ずっとそっちに罹ってください。移送費も出せない」といわれた。検査して異常がなければ近所のかかりつけ医にかかるのが通常だと思う。変えたくても変えられない、かかる通院移送費は生活費の中でまかなえというのはおかしい。食費を削らないといけないのか(受給者)

7 夫に精神障害があり紙おむつをしていて月8千円かかる。夫は介護を受けないといけない情況。月に計算すると1万2千円から5千円というお金を、現実に生活費の中から搾り出している。こういった現状をどう思うのか(受給者)
こ 移送の支給が出るかどうか、というのは、高額になるか、などの用件と、月に何回罹らなければならないのか、というような医師の判断があれば出せる。

7 8回以上病院に罹ると、「国の監査の対象になるからそれ以内に押さえてくれ」と自治体にいわれ、押さえている

7 へき地というのは法律用語なのか
こ 厚労省としての見解を持っていないのでなんともいえない。
  医療扶助における移送の給付について今回は出したもの。それ以外の医療扶助については、かわっていない。その福祉事務所がおかしいと思う。
こ そこに行くまでの金額が高いかどうか、ということは各地によって違う。

7 功労賞が判断できないものを福祉事務所が判断できると思うのか
こ 各地域で判断するもの

7 担当のケースワーカーが判断すれば、通院非は出るのか。電車とバスを通常使う場合には、ワーカーも判断できる。(田川)
こ 地域によって違う。自治体の判断による。

7 いちいち「自分が保護日をいくら使ってしまって、お金がないので通院移送費を出してください」と福祉事務所に申請しなければいけないのか。病院に行くたびに、受給者が福祉事務所に申請しないといけないのか。
こ その都度立証しなければいけないのか、という部分は・・・。(こたえらえられない)

7 出せなくなるので自治体は困っていると言っている(田川)

7 ソーシャルワーカーをやっている。受給者の通っていた医療機関が生活保護受給者を診ないことになり、別の遠い医療機関に通わなければならなくなった。今まで通院い相費を出していたことに対して指摘されたことはない。これをいちいち、立証しなければならないとなると、この人(受給者)の移送費780円を出すのは生活が切迫してしまい困る。

7 福祉事務所としては、切迫した人が来られても「これは駄目だ」と断るしかないので困っている(田川)

7 精神疾患の患者団体だが、受給者自体が、明確な意志を持って通院している人が全員ではない。精神科のデイケアへ行くのはどうなるのか。
こ 精神のデイケアは、月にどのくらいの額がかかるのか、ということを各福祉事務所で判断することになる。

7 へき地でないと、この文書からすると、福祉事務所は判断できない。
 わたしたち受給者にとっては、生きるか死ぬかの瀬戸際 (以上)





 その他の記事です。

 3月31日の行動を伝える自治労連のニュース

 最後に、日本共産党高知市会議員団の市長宛申し入れ文書と反応についての記事を紹介します。

 高知市長あて申し入れ


(以上)











 


 

 

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