京都社会保障推進協議会ブログ

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一部負担金に係る2つの通知文書(5)

2009年08月11日 06時32分39秒 | 資料&情報
 7月10日付「国民健康保険における一部負担金の適切な運用に係るモデル事業の実施について」の検討に入ります。

 「モデル事業」とは、8月7日掲載の(3)の、参議院厚生労働委員会での質疑で述べられている事業のことですが、これまでの国保44条の活用による一部負担金減免問題と異質な内容をもった通知文書です。



  国民健康保険における一部負担金の適切な運用に係るモデル事業の実施について


 まず、モデル事業は
①各都道府県で少なくとも1市町村を選定する。
②実施期間は、今年9月から来年3月までの7ヶ月間。
③モデル事業の結果を検証し、来年度中には全市町村で実施予定。
となっています。


 ところが、問題はモデル事業の内容です。
内容として「協力医療機や生活保護部局を含めた協議会等を設ける」など、行政と医療機関との連携体制をとることは重要なことですが、

2.医療機関等との連携による一部負担金等の適切な運用
(1)省略
(2)市町村は、あらかじめ定めた基準に該当し、減免の決定をしたときは、(中略)一部負担金減免証明書を交付する。ただし、その基準については次のすべてに該当する世帯を減免の対象として含むものとする
 ①協力医療機関において入院治療を受ける被保険者がいる世帯
 ②災害や事業の休廃止、失業等により収入が著しく減少した世帯
 ③収入が生活保護基準以下、かつ、預貯金が生活保護基準の3か月以下である世帯

と、厚労省が「対象として含む」としながら、一定の減免基準を示している点です。上記の3点のすべてに該当する世帯に対象者を限定すれば、事実上、一部負担金減免が極めて狭い範囲に限定されることは明らかです。
 これでは、「低所得者」世帯や、「生保基準の1.5以内」等の減免規定を持っている自治体の規準を、引き下げることになりかねません。



 もうひとつは、
3.保険者徴収制度の活用
(5)前略…ただし、保険料の滞納処分を実施する状態である者については、保険料徴収が未収金徴収に優先するため、徴収額から保険料滞納分を差し引いた額が請求額に満たない場合、その差し引いた額の範囲で協力医療機関に支払う。
としている点です。

 実際には医療機関にとって未収金対策にならない、「保険料滞納」に利用されるだけの結果となりかねないものです。この方式が、全国の自治体で実践されれば「保険料収納率向上対策」の決め手として使われる可能性があります。

 なお、国保42条第2項による保険者徴収の実施そのものが、低所得者世帯への強制的な徴収です。
 問題の解決には、一部負担金減免制度の拡充や無料低額診療実施医療機関の拡大など、社会的なセーフティーネットとしての整備こそ求められるものです。


(以上 おわり)

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