京都社会保障推進協議会ブログ

京都社保協のニュースや取り組み案内、タイムリーな情報・資料などを掲載していきます。

一部負担金に係る2つの通知文書(2)

2009年08月06日 07時55分00秒 | 資料&情報

 まず「生活に困窮する国民健康保険の被保険者に対する対応について」(以下、「通知文書」と記載)から見ていきます。

 「通知文書」では、
「(前略)医療機関の未収金は「生活困窮」と「悪質滞納」が主要な発生原因と指摘されているところである。このうち「生活困窮」が原因である未収金に関しては、国民健康保険における一部負担金減免制度の適切な運用や医療機関・国保・生活保護の連携によるきめ細かな対応により一定程度の未然防止が可能であると考えられる」とし、具体的には、「国民健康保険法(昭和33年法律第192号)第44条第1項では、保険者は特別の理由がある被保険者で保険医療機関等に一部負担金を支払うことが困難と認められるものに対し、一部負担金の減免又は徴収猶予の措置を採ることができることとされている。実際の運用では適用の基準を設けている市町村が多くあるところであり、こうした基準や運営方針について、医療機関及び生活保護担当部局とも情報を共有し、対象者に対して適切に制度が適用されるよう努めること。」
と、記載しています。

 通知文書「生活に困窮する国民健康保険の被保険者に対する対応について」



 問題は、いくら「対象者に対して適切に制度が適用されるよう努める」としても、実際の国保44条による減免・猶予規定がどうなっており、適切な運用がされているかが問題です。


 京都市の国民健康保険条例を参考にしてみてみます(具体的に運用基準を定めている市町村もほぼ同様の内容になっています)。


 京都市国保条例では

第5条 市長は,災害その他特別の理由により,法第36条第1項各号に掲げる給付に関する一部負担金を支払うことが困難であると認められる被保険者に対し,次の各号に掲げる措置を採ることができる。
(1) 一部負担金を減額すること。
(2) 一部負担金の支払を免除すること。
(3) 健康保険法第63条第3項第1号に規定する保険医療機関又は保険薬局に対する支払に代えて,一部負担金を直接に徴収することとし,その徴収を猶予すること。

と規定されており、京都市健康保険条例施行細則で

第6条 条例第5条の規定により一部負担金の減免又は徴収猶予を受けようとする世帯主は,国民健康保険一部負担金減額(免除・徴収猶予)申請書にその理由を証明する書類を添えて,区長に提出しなければならない。
2 区長は,前項の申請があったときは,速やかに当該申請の承認又は不承認を決定し,文書によりその旨を当該世帯主に通知しなければならない。
3 区長は,前項の規定により承認を決定したときは,当該承認に係る証明書を当該世帯主に交付しなければならない。

と、申請書が提出されたら、速やかに承認又は不承認を決定し文書による通知を義務付けています。


ところが、国保条例第5条にある「災害その他特別の理由」については、同じく国保条例施行細則では、

第5条 条例第5条及び第20条に規定する災害その他特別の理由とは,次の各号に掲げるものをいう。
(1) 被保険者又は納付義務者(以下「被保険者等」という。)が,その資産について災害を受け,又はその資産を盗まれたこと。
(2) 被保険者等がその事業又は業務を廃止し,又は休止したこと。
(3) 被保険者等がその事業又は業務について大きな損害を受けたこと。
(4) 前3号に掲げる理由に類する理由があること。


 これでは、多くの「生活困窮者」が一部負担金減免・猶予規定の適用を受けにくくし、実際に、「なかなか減免・猶予が受け付けてもらえない」事態となっています。
 今回の「通知文書」に基づき、早急に「一部負担金減免・猶予規定」を改め、柔軟に「特別な理由」の運用を行うべきです。


 なぜか!


 この「通知文書」のもとになっている「医療機関の未収金問題に関する検討会」で出された未収金患者の実態を見れば明らかです。
 検討会では、大規模な未収金問題の調査を全国の医療機関対象に行っています。そのなかで、「未収金のある患者の実態」調査もおこない、原因や患者の生活状況についての分析結果を公表しています。

  未収金に関するアンケート調査報告


 調査では、21,150件(患者数)の未払い者に対して、病院の担当者からみて「患者が今回の医療費を支払うだけの資力がないほどに困窮しているか」との問いに
◆生活困窮である … 17.0%
◆生活困窮でない … 38.6%
◆わからない    … 40.6%
と、17%が「医療費を支払うだけの資力がないほどに」生活が困窮している実態が明らかにされています。(実際には「わからない」が4割以上あり、生活困窮者はさらに増加すると推測されます)

また、「生活困窮と未収の理由」では
▲「生活困窮でない」なかでも
 ・医療費の支払い資力なし … 2.8%(232人)
▲「わからない」のなかにも
 ・医療費の支払い資力なし … 5.5%(473人)
となっています。


 

 「通知文書」に記載されているとおり「一部負担金減免制度等により未然防止が可能」とするならば、市町村の減免規定では最低限、以下の内容を具体化し、適用するのが当然と言えます。

(1)国保料法定減免対象者
(2)短期保険証交付者(短期保険証交付自体が入院・通院を抑制するものであり、一般の保険証を交付。ただし保険料が払えない実態があるとして)
(3)低所得者(生活全般の困窮者 少なくとも生保基準の1.5程度)
(4)その他、「災害その他特別の理由」など

とし、生活実態に見合った柔軟な適用をすることが求められています。

とことが、全国の市町村での減免規定整備状況は、約半数であり、ましてや未集金対策の「決め手」として運用できる「低所得者」を、免除規程としている自治体はきわめて少数であることが明らかにされました。

 まさに、自治体要求運動として取組む課題であることが必要になっています。

 次回に、国保一部負担金問題での国会質疑を取り上げます。


(以上 つづく)










最新の画像もっと見る

コメントを投稿