京都社会保障推進協議会ブログ

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再び生活保護通院移送費の支給停止について(その1)

2008年04月24日 08時53分30秒 | 資料&情報
 3月3日開催の社会・援護局主管課長会議で、滝川市での移送費不正支給問題を口実に実施されようとしている生活保護通院移送費の事実上の不支給にたいし、全国で大きな怒りの声があがっています。

 この問題は、3月21日の「資料&情報」及び4月7日の「資料&情報」でも取り上げてきましたが、それ以後も全国的に抗議と運動が広がっています。生活保護受給者の命と健康に係る移送費問題を、撤回させるまで奮闘しましょう。


 全生連が国民的運動を呼びかけ

【声明】
生活保護の通院移送費(交通費)打ち切り・制限強化を撤回させるために国民的な運動を呼びかけます
2008年4月11日 全国生活と健康を守る会連合会
会長 鈴木 正和

 みなさん
 厚生労働省は、4月1日、生活保護の通院移送費(交通費)の打ち切り・制限強化の「医療扶助運営要領の一部改正」などの「通知」を出し、改悪を強行しました。その内容は、北海道滝川市の暴力団による通院費用の不正請求などを口実に、(1)移送費の一般的給付を国民健康保険と同等の扱いにし、災害現場からの緊急輸送、離島から医療機関への搬送などの緊急の場合に限定し、(2)例外的に支給するのは、身体障害者などで電車・バスの利用が著しく困難な場合などにしています。これでも、通院等を行う医療機関は、原則として福祉事務所管内としています。(3)この改悪を実施するために、「是正の期限」を6月末まで3か月にするとしています。
 みなさん
 今回の改悪案を3月3日に発表して、生活保護世帯や自治体の声を十分に聞かず、行政手続法に定められたパブリックコメント(意見募集)さえしないで、4月1日実施はあまりにも乱暴です。厚生労働省が、この改悪案を発表して以来、多くの問題点が明らかになりました。
 第一に、今回の滝川市のような「不正受給」を口実に、圧倒的多数の人たちの通院費の削減はまったく道理に合わないことです。本来、「不正受給」は、許されないものです。厚生労働省は、ごくわずかの月3万円以上支給されている人の調査しかおこなっていません。圧倒的多数の人たちの調査はせず、今回の特殊な「詐欺事件」を理由にするのはまったく本末転倒です。約2億4000万円にも及ぶ移送費の「不正受給」を許してきた行政の側にこそ問題があります。
 第二に、厚労省は「バス・電車代は通常の保護費(生活扶助)でまかなえる」として医療扶助で特別な場合を除き支給しないことから、実質的な生活保護基準の引き下げになります。「通院交通費2000円は2日分の食事代」などの声に示されるように、老齢加算の廃止など生活保護基準の引き下げや灯油など物価高騰に苦しむ人たちの暮らしをさらに圧迫するものです。滝川事件で初めて移送費が支給されることを知った人も多く、これまで通院交通費を自己負担させてきたことも問題です。
 第三に、一般的給付を「国民健康保険と同等の扱い」にしたことの不当性です。市町村国保での平成17年度の移送費支給の実績は、全国で379件であり、約12万4千に1人で、まったくと言っていいほど支給されていません。生活保護の通院移送費の支給人員は年間130万人ですが、一般的給付ではほとんどの人たちは支給されないことになります。
 第四に、打ち切られれば通院の交通費が出せなくなることや、移送費支給の対象医療機関を福祉事務所管内に限定することで、生活保護世帯の受診抑制につながります。医師の判断で治療上必要なことから、管外の医療機関に通院している人が多くいます。生活保護世帯の医療を受ける権利を奪うことになり、生命の危険さえおこりかねません。
 第五に、実質的な生活保護基準の引き下げになることから、最低賃金や年金などの引き下げにつながりかねず、生活保護を受けていない多くの国民のくらしに影響を及ぼすものです。この改悪を許せば「生活保護でも通常の収入から交通費は出せる」とされて、敬老パスや障害者への交通費助成などの自治体の独自制度が改悪される危険があります。
 みなさん
 今回の改悪は、憲法や生活保護法に反するものです。生活保護法は、「健康で文化的な最低限度の生活の保障と自立の助長」(第1条)、「年齢や性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要を考慮して」保護する必要即応の原則(第9条)を決めています。さらに、「正当な理由がなければ、既に決定された保護を、不利益に変更されることがない」(第56条)としています。だからこそ、舛添厚生労働大臣や社会・援護局長は、国会で「医療を受ける機会が奪われることはあってはならない」「現に支給されている人の継続性に配慮しなければならない」などと答弁しています。また、一部自治体で「これからは原則として移送費は支給されません」などと言って、移送費の申請を拒否すれば、第7条の申請権の侵害になります。
 みなさん
 この間、「打ち切りはしないでほしい」と、各地の生活と健康を守る会の生活保護を受けている会員をはじめ多くの人たちが声を上げています。関東の三都県四政令市の保護課長が「自治体の意見を聞くこと、慎重な検討と経過期間を設ける」ことを厚労省保護課長に要請するなど、多くの自治体の現場からも要望が寄せられました。国会では、民主党、共産党、社民党が反対表明をし、国会質問でも取り上げられました。今回、異例の「3ヶ月の是正の期間」を設けたことは、私たちや生活保護問題対策全国会議、中央社会保障推進協議会など6団体の共同行動をはじめ、1か月足らずの間に急速に広がった世論と運動に押された結果です。
 みなさん
 今月から「是正期間」になり、移送費の打ち切り・制限強化が始まります。私たちは、憲法や生活保護法によって保障された生存権を奪う今回の通院移送費の打ち切り・制限強化を撤回することを強く求めるものです。小泉内閣以来の「骨太の方針」の社会保障費毎年2200億円削減方針の撤回めざし、「後期高齢者医療制度の実施中止」「生活保護の老齢加算、母子加算をもとに戻せ」などの運動と結んでたたかいます。多くの団体・個人と手をつなぎ、通院移送費削減を撤回させるまで運動を強めるものです。


 野党各党も撤回に向けた運動を強化

 日本共産党小池参議院議員の国会質疑

 民主党佐々木議員(ネクスト厚生労働大臣)ブログから

 社民党福島党首の発言を伝えるブログから


 4月16日に12団体が厚生労働省と撤回求め交渉

 生活保護問題対策全国会議、中央社保協、全国公的扶助研究会、全日本民医連、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい、特定非営利活動法人DPI日本会議、全生連の七団体が呼びかけ、厚生労働省社会・援護局との交渉が行われました。

交渉内容を紹介する中央社保協ニュースです

 交渉内容を報道するしんぶん赤旗報道記事です

 交渉内容の詳細が、参加した当事者から公開されていますので、内容は次回に紹介します。


 許されない!保護課長通知(4月4日付)の内容

 4月4日付社援保発0404001号「医療扶助における移送の給付決定に関する審査等について」(厚生労働省社会・援護局保護課長名)は、各都道府県、指定都市、中核市にたいして、移送費制限を徹底するためにだされた文書です。そこには、露骨に制限(事実上の支給停止)を求めるものであり、給付決定に関するフローチャートやタクシー・介護車両使用の「点検表」まで示されています。「「点検表」では、「その医療機関に通う必要性について検討されているか」「複数の医療機関に通院していないか」など、まさに受診抑制の項目も記載されています。関係者の方は、必ず目を通してほしい、悪「通知」です。

 社援保発0404001号「医療扶助における移送の給付決定に関する審査等について」(DPI日本会議HPより)


(次回に続く)







 


 





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