京都社会保障推進協議会ブログ

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介護保険事業等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告―総務省(3)

2008年09月11日 06時29分50秒 | 資料&情報
 「介護保険事業等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」の、予防給付、介護予防事業の検証についての内容を紹介します。

 事実上のサービス制限につながる「介護予防サービス」が導入されて2年以上になりますが、その「効果」については疑問視する調査結果となっています。



介護予防サービス利用者は60%どまり

 「勧告」では、「介護予防サービス等の利用率は約60.6%にとどまっている。利用しない者が存在する一因として、本事業の効果が不明であることを挙げる市町村の意見がある。一方で、厚生労働省の分析結果では、事業の効果が確認されたとしている。」として、「介護予防サービス等は、要支援1又は要支援2と認定された者が要介護1から要介護5までとならないよう、できるだけ多くの者に利用されることが望ましいが、調査した76市町村のうち、平成18年度に介護予防サービスの対象となる要支援者の判定を行った71市町村における要支援1又は要支援2と認定された者に占める介護予防サービス等の利用者の割合をみると、約60.6%(要支援者約39万6000人中、介護予防サービス等の利用者は約24万人)にとどまっている。
また、市町村により、利用率は相当の差があり、中には、
①90%台と介護予防サービス等の利用者の割合が非常に高い市町村(2市町村)がある一方で、
②30%台と極めて低調になっている市町村(2市町村)もある。
要支援1又は要支援2と認定された者が、介護予防サービス等を利用しない理由について、調査した市町村では、介護予防サービス等を利用することによって、どのような効果があるかが十分認識されていないため、本人が利用する必要性を感じていないことが原因であると考えられるとしている。このようなことから、市町村における広報活動にも差異があり、介護予防サービス等の対象者に十分周知されていないものとみられる。
 一方で、厚生労働省は、介護予防サービス等を利用することによる効果について、平成19年1月から分析を行っている。20年5月に公表した中間分析結果(*注)では、新たに再編した予防給付の導入前後で、予防給付サービスを利用した者の心身の悪化が減少し、効果が確認されたとしており、引き続き、厚生労働省は予防給付の費用対効果の分析を行うこととしている。」


介護予防サービス計画の報酬は低い

 「勧告」は、地域包括支援センターが作成する介護予防サービス計画に対する介護報酬の低さにも言及しています。
 「(ア) 厚生労働省は、要介護者に対する介護サービス計画作成に係る介護報酬については、1件当たり要介護1及び要介護2は1万円、要介護3から要介護5は1万3000円(初回加算を除く。)と設定している。
一方、要支援者に対する介護予防サービス計画の作成に係る介護報酬については、1件当たり4000円(初回加算を除く)と設定している(いずれも平成18年度に設定)。
(イ) 介護予防サービス計画作成に係る介護報酬について、厚生労働省は、
① 予防給付においては、訪問介護等の主なサービスが月単位の定額報酬となっており、給付管理業務の事務量が居宅介護支援に比して軽減されていることや、
② 対象者の要支援状態が軽度であることから、利用者宅への訪問については原則3か月に1回としていること などにより業務量の軽減・合理化が図られることを勘案し、報酬を設定していると説明している。
(ウ) しかしながら、調査した76市町村のうち44市町村において、介護予防サービス計画の作成について、「要支援者の心身の状態の変化は要介護者のそれよりも大きい場合もあることから、必ずしも業務量に見合った介護報酬となっていない。」として、次のような意見が聞かれた。
① 計画の作成のために、必要な経費を介護報酬で賄えずに、地域包括支援センターが自己負担している(32市町村)。
② 介護予防サービス計画の作成を居宅介護支援事業者に委託しようとしても拒否される(12市町村)。」と紹介しています。


特定高齢者に対する介護予防事業は評価できない

「勧告」は、「特定高齢者に対する介護予防事業における特定高齢者の参加率は約32.4%にとどまっている。これについて、市町村の中には、本事業の効果が不明であるため参加者が少ないとの意見がある。また、本事業についての厚生労働省の中間分析結果(*注)によると、統計学的に有意な介護予防効果は認められなかったとしている。」


(*注)介護予防継続的評価分析等検討会として、06年12月18日に第一回検討会が開催、08年5月28日開催の第四回検討会で「介護予防サービスの定量的な効果分析について(第2次分析結果)」が提出された。


 介護予防サービスの定量的な効果分析について(第2次分析結果)




最後に「介護保険事業等に関する行政評価・監視結果報告書」を記載します

 全文はここから



 なお、第2回目でとりあげた介護従事者の確保に関する厚労省の「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」が「介護労働者の確保・定着等に関する研究中間取りまとめ」文書をまとめています。
 中間とりまとめは7月29日ですが、今年4月から7回にわたって開催されたものです。皮肉なことに、研究会の中間とりまとめ文書公表直後、総務省の「勧告」で、介護従事者の多面的な調査・分析が不十分と指摘されました。


 介護労働者の確保・定着等に関する研究中間取りまとめ(厚労省)



(以上)











 

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