某銀行員日記

とある銀行員の日常を書いたブログ。政治・経済・文化・芸能、硬軟取り混ぜて日々思ったことを主に書きます。

日本振興銀行破綻に思うこと

2010年09月12日 23時09分44秒 | 銀行の話
振興銀破綻、初のペイオフ発動 元本1千万円まで保護(朝日新聞) - goo ニュース

日本振興銀行が破綻しました。
初のペイオフ適用ということで、私の銀行も色々と対策をとらされました。

こういう時に恐ろしいのが取り付け騒ぎです。
過去には全く根拠のない噂が取り付け騒ぎを起こしたこともありますので、他の金融機関とはいえ、同業種の人間の言動は慎重に行わなければならないのです。

なんとか大きな問題も起きずに済みましたが、金融庁が足利銀行の時とは違い破綻という道を選んだことは、多少ショッキングな出来事であったといえるでしょう。
今までは社会の信用不安を抑えるという名目で、他の金融機関に救済合併させたり、国有化したりとさまざまな方策をとっていたのですから、とうとう来るべき時が着たのか、といった感じです。


報道では様々なように書かれていますが、私は木村前会長にちょっと同情しています。
木村前会長は金融庁の検査忌避容疑で逮捕されましたが、これに関しては木村前会長にだけ非があるとは思えません。
というのも、金融庁のやり方のえげつなさ常軌を逸しているからです。

日本振興銀行が破綻したのは、貸し倒れ引当金の不足分を積み増しすると大幅な債務超過になってしまうことが確実になり、経営が立ち行かなくなるからです。
木村前会長もこれがわかっていたから検査忌避を行ったのでしょう。

この貸し倒れ引当金というのがクセモノで、金融庁が狂ったような査定を行うためにすべての金融機関が苦しんでいるのです。
というのも貸し倒れ引当金というのは、融資した企業のリスクを勘案し、それに応じたお金を費用として計上するわけです。

そのリスクを勘案するやり方が非常に恣意的で、金融庁は非常にムダとも言えるほど厳しく設定します。
そのため金融庁から検査を受けた金融機関はもれなく貸し倒れ引当金の積み増しを強要されるのです。

今回の日本振興銀行と同様に、UFJ銀行も金融庁によって潰されました。
UFJ銀行はUFJ信託銀行という優良な子会社があったために助けれられたようなものでしたが、日本振興銀行はそうでなかったために倒産したというわけです。

もちろん検査忌避というのは銀行法違反ではありますが、それをやらざるを得なかった木村前会長に私は同情せざるをえません。
高金利につられて日本振興銀行に預金をし、騙されたなどといっている人々よりずっと非は少ないと思います。

日本振興銀行が破綻し、そして新銀行東京が巨額の赤字を出しています。
両銀行とも、当初の理念はすばらしかったと思います。
既存の銀行が融資しない中小企業を助けるんだ、という理念を否定する人はいないでしょう。

しかし、彼らはその原因を深く考えなかったのが最大の失敗でした。
既存の銀行が中小企業に融資しないのは、貸し渋っているわけでも審査能力がないわけでもないのです。
今の日本の金融行政の下では融資することができないだけなのです。

それをわからなかった木村前会長や石原都知事の責任はあると思います。
プロができないことを素人ができるはずがないのですから。

木村前会長に責任があるとすれば、その事実をわからなかったということでしょうかね。



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