父親的生活

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リスクを背負い込む意味

2009-06-06 18:08:17 | インポート

百貨店の売上げ不振がニュースに良く出る。今日も九州の岩田屋が話題になっていたが、二桁の売上げ減少が続き、経営不振に歯止めがかからない状況が半年以上続いているのではないだろうか。

ニュースでは景気悪化でブランド品が敬遠されている・・・・等と解説されているが、一部当たっていて一部当たっていない。

例えばブランド品、確かに淘汰されて1990年代の様な過熱振りは無いが、今も確実に購入されている。年間1兆円は維持しているとの事。景気が悪くなった結果、購買点数が減ったり、単価が下がった事は考えられるが、とたんにゼロになる訳ではない。

次に衣料品。これは明快で、ユニクロは同じ衣料品業界だが絶好調である。百貨店に無いものをユニクロは持っていると言えるだろう。

ユニクロは安いから・・・・って思うかも知れないが、買い物における物の価値はキャッシュとバリューの相対価値であり、価格そのものでユニクロと高級ブランドを比較するのはナンセンスだ。それに最近の百貨店も結構安いと思う。ユニクロにはユニクロの、ブランド品にはブランド品の良さがあるわけで、それに対して価格が幾らかという部分で消費者は判断している訳だから、ぜんぜん違うTシャツ1枚の価格を比較してユニクロが安いとか、ブランドは高いとか論じるのはちょっと違う。

では一番の違いは何か・・・・・

その前に百貨店を良く考えてみたい。和歌山には近鉄百貨店が1店舗あるだけだから比較は難しいが、例えば梅田で、大丸、高島屋、阪急等を比べたら・・・有名ブランドは全部に入っていると思う。デパ地下だって、お惣菜で有名なRF-1や柿安は殆どにあるのでは?ゴディバのチョコも、風月堂も、どこにでもある。お客様から見ればどこに入っても殆ど同じで、自分の最寄の電車が阪急か、御堂筋線か、JRか位で使い分けているのでは無いだろうか。

基本的に最近の百貨店は”場所貸し商売”である。売上高の何パーセントかのマージンを得て各ブランドを入居させている。売れた方が良いのは当たり前だが、売れなくても在庫リスクは無い。

逆にユニクロ、企画から全て自社で行い、中国の契約工場で製造枚数も決定して作って販売する製造販売方式だ、売れ残れば全部会社のロスとなる。それ故企画には慎重だし、売れ残りを減らす努力も必死だ。今年大ヒットしているブラトップやフリースはヒットの裏には大きなリスクを背負っていたはずだ。なぜなら、ブラトップだって、型紙から考えれば半年以上前に企画されているはずだし、サイズはどのサイズを、色はどの色を何枚作るのか、今決めているのでは無く企画段階で決めている。もし、これが外れて売れなかったら・・・・

だから販売に全てを注ぐし、企画にはより慎重になるはずだ、その努力が市場調査能力を向上させ、ヒットの作り方の上手さに繋がっている。販売リスクの無い場所貸し商売では絶対に生まれないノウハウである。

リスク無しには成長は無いし、成長の無い企業は淘汰されて当たり前。百貨店は今の半分くらいの店舗数になれば、生きていけるかも知れないが・・・・

同じ様な現象が、農業の世界でも実は起こっている。”直売所”である。

数年前はJAが経営する直売所は非常に珍しかったが今はどこにでも出来てしまった。そして、直売所は殆どが売れた分だけ仕入れ代金を支払う”消化仕入れ”方式で、運営しているJAやスーパーにリスクは無い。

直売所の数が少なく、出せば殆ど売れた時代はそれでも維持できたと思う。そもそもは生産者離れが進むJAの苦肉の策だったのだし。当時は確かに珍しかった。しかし、今、数が増え売り切れなくなったらどうなるのか、出荷する生産者がリスクをかぶっている以上歪みは出るだろう。

先ず、品揃えが悪くなる。次に鮮度が落ちる。客数が減る。更に売れ行きが落ちる。出荷する生産者が離れ魅力が無くなる。そして結果的に一番迷惑をこうむるのはお客様だ。せっかく買いに行っても良いものが無いからだ。

このマイナススパイラルは目に見えている。

では、この負の連鎖を断ち切るにはどうするれば良いのか。

先ずはこちらがリスクを背負い込む事だと思う。

そろそろ場貸し商売なんてあこぎな手法にサヨナラして本当の商売をするべきである。出荷される農産物を少しでも多く買い取って販売すれば、生産者のリスクは軽減されるし、店員の販売力もつく。競争激化の時代、他社に無いサービスを目指すなら、今やどこでもやっているサービスに拘る必要は無いのだから。そもそもお客様だって、”消化仕入”の商品を買いに来てくれているのでは無く、”地元の商品、不揃いでも安い商品、鮮度が良い商品”を買いに来ている訳だから、それは買い取って販売すれば良いだけの事だと思う。

買取がどうしても無理なら販売の努力だけはするべきだ。お客様が沢山来店してくれる様に常に清潔で整頓された売り場を維持し、商品が売れる様に工夫するべきだ。

それもどうしても無理だと言うなら、実はさっさと止めるべきなのだと思う。

百貨店が半分になれば、今のやり方でも維持できるのと同じ論法だ。徐々に衰退するマーケットへの軟着陸でもある。

リスクなくして勝利無し。

百貨店だってまだまだ生き残る方策はあるのだと思う。思えば百貨店も黎明期はリスクを背負って買い取っていたはずだし、その頃は小売の王者だったのだから・・・・

買取が常識のスーパーの世界でも、実は少しずつ場貸し商売的な楽な商売が浸透しつつある。そして百貨店がそうであった様に気づかぬ間に真綿で首を締められているのだ。

一番に気がついて抜け出すのは誰か。

そろそろ正しい”商売”に戻る時期なのでは無いだろうか。