残念な発表だった。
牛乳とホウレンソウから基準値以上の放射線が検出されたという発表が官房長官からなされた。
基準値がある以上、それを超えれば公表するのは政府の責務だとは思う。
そのあとその数値がごく微量で、1年中食べ続けてもCTスキャン1回分くらいだという発表もあった。
混乱しない様にとの発表もあった。
でも、大きな事態になったと思う。
・ホウレンソウも、牛乳も、生活になくてはならない”食品”の一つだが主食ではない。
・どちらも、福島と茨城以外の県でも作られている。
・自民党政権末期から、日本の農業は海外輸出にひとつの活路を見出そうとしていた。
・そして、中国の富裕層を中心に、農産物販売のルートが出来つつあった。
・牛乳は、新生児の栄養として、子どもの成長のために欠かせないと、戦後一貫して健康に結び付けたキャンペーンを張っていた。
・基準値の設定根拠、他国(特に原発を持つ国、ウラン採掘国や先進国)での同商品の状況や数値、各国の基準が示されず、”原発事故など起り得ないであろう”時に、無い事を前提に作られたであろう基準の正当性なども説明されなかった(噂だけが先行する)
他にも背景はあるだろうが、ざっとこれだけ考えると、おおむね今後が想像できる。
もし、今後、店頭に該当県と他県の商品が併売されたら、どちらを消費者は選ぶのか。
代替品と本品が併売されるとどうなるのか。
今のままでは結果は目に見えている。
海外マーケットの反応は?
ギョーザ事件を思い出してほしい。
工場の場所、メーカーの有無に関係なく、中国産ギョーザというだけで国内マーケットから締め出したのは誰だろう。
タイやベトナムの1農場で、たった1検体で基準値を超える農薬が検出されたら、
港にすら荷揚げさせずに処分させたのは誰だろう。
”消費者”の立場なら当たり前かも知れない。
しかも、飽食時代の消費者なら・・・
でも、生産者の立場になったらどうなるのか。
仮に遠く離れた関西のとある場所で作っていたとしても、広い世界から見れば、小さな日本。
国際的な差別に遭うことは確実だろう。
ここ数年築き上げてきた日本ブランドは
多くの人の努力で作り上げたそのブランドは
おそらくその発表ひとつで大きく崩れ去ったと思う。
テレビや自動車と違い
食べ物は人の体を作る。
世界がもっとも安全だと思っていたであろう日本の食品がこうなって。
お金を出せばいつでも安心な食品がいくらでも買えるなんて勘違いしていた人達も
少しは目が覚めるだろうか。
天災は何処の国にも万遍なくリスクとして存在するし、
ある日どこかの生産国が今日の日本になるかも知れないということ。
せめて国内での差別は取り越し苦労であってほしい。
そして、日本人が”食べ物”を考え、
それを作る苦労を知る、思い出す、価値を理解する機会になってほしい。
パフォーマンスでも良いから、同時に20キロ圏ぎりぎりで良いから
そこまでいって、陣頭指揮を執って
牛乳を一気に飲み干してほしい。
安全な東京で、カメラに囲まれて”安全だ、落ち着いて”なんて言うより、
よっぽど国民を安心させられるのにと思う。
政治主導なのだったら・・・
もうこれ以上日本の農業を壊さないで欲しい。