裸体(裸婦)は両手を天に向けている。これは自分を引き上げ、何かを呼ぶ、期待する、行動を起こそうとするポーズである。瞑った目から、瞑想・夢想を思わせるが、つまりは《意識下/潜在意識》にある本能/期待/希望の証かもしれない。
オサガメが通過していくが、拒否という荒々しさではない。オサガメは裸体に抵触しているが襲うという狂暴さは見えない。ただその外殻が鋭利な印象で、柔らかい肉体を傷つけるのではないかという危惧は否定できない。
オサガメは空中を浮遊しているのだろうか、とすればその重さは落下を予期させる。
多くの混迷がこの場面にはある、換言すれば、全てが条理を外している。
そして『冒険の衣服』なる着衣はどこにあるのだろう。人間以外の動物に着衣の意志は存在しない。しかしこの裸体に着衣はなく、着衣の意味が霧消してしまう。
ありのままの精神(実は学習された観念の衣服)を脱ぎ捨て、新しい夢想の精神界を構築する《冒険》、『冒険の衣服』の所以ではないか。
(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)
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