霰の中で
2013-12-22 | 創作
私の街にも白いものが降るようになりました。
先日、家に帰ろうとしているとゴロゴロと雷が鳴って、突然霰が降ってきた。
私の街では、この雷を「ブリ起こし」と言って寝ているブリを起こす雷だと言っています。
この雷が鳴り出すと、冬だという合図なのです。
バラバラと霰が降ってきて、私は家路を急いだ。霰の中を小走りに走っていると街灯の下にちょっと不思議な光景を見た。
ある家の前に女の人が立っているのだけど、その人の足許には霰がまるで人がいないように飛び跳ねていたのです。
少し離れて傍を傍を通り抜けようとしたのですけど、どうにも気になって振り返って見てしまいました。
やはり、彼女が立っているのですけど、霰は彼女を通り抜けるように足許で飛び跳ねていました。なにより、こんなに霰が降っているのに彼女の頭にも肩にも積もっていないのです。
私が立ち止まって見ているのに気づいたのか、私の方を見て軽く会釈してしてくれました。
それを合図にして私が一・二歩彼女に近づくと、スーッと立ち去ったのです。
それは立ち去ると言うより、白い霰の中に溶け込むような感じ消えたのです。
もちろん、道路は一面の雪化粧というか霰化粧で、足跡も何も残っていません。
彼女が見ていた家には喪中の札が架かっていて、貼り紙にはその家の奥様が亡くなったようでした。
私が玄関前に立っていると女の子がおとうさんと出てきました。
おとうさんが私に近づいてきて「すみません、此処に今、女の人が立っていませんでしたか」と尋ねてきました。
一瞬どう答えようかと思いましたが「いえ、私以外は誰もいませんでしたよ」と道路を見渡したのです。
「そうですね、貴方の足音しかありませんものね」というと女の子に向かって「ほら、誰もいなかったのだよ」と言って家に入っていきました。
女の子がじっと私を見ているので「お嬢ちゃんにも見えたの」と聞いてみました。
「うん、此処に立っていたでしょ」
「お母さんなの」と聞くと「うん」と頷きました。
「お母さん、お別れに来たのだね、でも、お父さんには見えなかったのだから、見えたことは誰にも言わない方が良いよ」と言って立ち去りました。
彼女が夫にではなく、娘に会いに来たのかと思うとあの家の事がちょっと気に掛かります。
先日、家に帰ろうとしているとゴロゴロと雷が鳴って、突然霰が降ってきた。
私の街では、この雷を「ブリ起こし」と言って寝ているブリを起こす雷だと言っています。
この雷が鳴り出すと、冬だという合図なのです。
バラバラと霰が降ってきて、私は家路を急いだ。霰の中を小走りに走っていると街灯の下にちょっと不思議な光景を見た。
ある家の前に女の人が立っているのだけど、その人の足許には霰がまるで人がいないように飛び跳ねていたのです。
少し離れて傍を傍を通り抜けようとしたのですけど、どうにも気になって振り返って見てしまいました。
やはり、彼女が立っているのですけど、霰は彼女を通り抜けるように足許で飛び跳ねていました。なにより、こんなに霰が降っているのに彼女の頭にも肩にも積もっていないのです。
私が立ち止まって見ているのに気づいたのか、私の方を見て軽く会釈してしてくれました。
それを合図にして私が一・二歩彼女に近づくと、スーッと立ち去ったのです。
それは立ち去ると言うより、白い霰の中に溶け込むような感じ消えたのです。
もちろん、道路は一面の雪化粧というか霰化粧で、足跡も何も残っていません。
彼女が見ていた家には喪中の札が架かっていて、貼り紙にはその家の奥様が亡くなったようでした。
私が玄関前に立っていると女の子がおとうさんと出てきました。
おとうさんが私に近づいてきて「すみません、此処に今、女の人が立っていませんでしたか」と尋ねてきました。
一瞬どう答えようかと思いましたが「いえ、私以外は誰もいませんでしたよ」と道路を見渡したのです。
「そうですね、貴方の足音しかありませんものね」というと女の子に向かって「ほら、誰もいなかったのだよ」と言って家に入っていきました。
女の子がじっと私を見ているので「お嬢ちゃんにも見えたの」と聞いてみました。
「うん、此処に立っていたでしょ」
「お母さんなの」と聞くと「うん」と頷きました。
「お母さん、お別れに来たのだね、でも、お父さんには見えなかったのだから、見えたことは誰にも言わない方が良いよ」と言って立ち去りました。
彼女が夫にではなく、娘に会いに来たのかと思うとあの家の事がちょっと気に掛かります。