夕焼け金魚 

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共同トイレで扉がズラァーと

2013-11-24 | 創作
トイレといってもかなり以前の板張り扉に、セメントの仕切り板がズラァーと並んでいる学校や駅の共同便所。
あのズラァーと並んでいるトイレに、ある種の恐れと郷愁を覚えるのです。
運動会などでみんなが使っているときは少しも感じない恐怖を、一人で使っていると感じるのです。
目にくる臭いといい、常に足もとの湿り具合といい、非衛生的と言えば非衛生的なのですが、あの同じものがズラァーと並んでいることに、つい緊張してしまうのです。
誰もいない処に入って行くと、奥に一人だけ用を足していたりして安心したような、逆に緊張するような妙な感覚。
しかも、用が終わって出ようとすると、奥にいた人がいなかったりして。
出口はこちら側だけで、奥は板張りになっているのに、奥にいた人が私の気づかないうちにいなくなると、背筋が寒くなったものです。
一人きりでそのような共同便所に入ると、それはそれで緊張するのです。
後ろにズラァーっと並んだ板張りのドアから誰かが見ているような、出てくるような気がして。
その人が白い服に髪の長い人だったりして、心臓が音を立てて鳴り出したものです。
ええ、昔の病院では時々あったのです。
各階のトイレが男女共同で、女の患者さんが白い浴衣で突然出てくることも。
私は気づかぬふりして、用を足しながら、神経は後ろを歩く女の人に集中していました。


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