セレンディピティ ダイアリー

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MARINE & FARM &湘南ドライブ

2018年08月16日 | おでかけ

先月、大型の台風12号が通り過ぎた週末、湘南の佐島にある「MARINE & FARM」にお昼を食べに行きました。記録を見ると、前回訪れたのは3年前で、このお店がオープンしたばかりの頃でした。EAT LOCALLYをコンセプトに、佐島をはじめ湘南エリアの食材を使ったイタリアンが楽しめます。

佐島マリーナのすぐ近くで、目の前が海という絶好のロケーション。テラス席は既にいっぱいでしたが、この日は暑かったので、涼しい店内が快適でした。窓越しに海が見えます。ランチは、メインのお料理を選ぶとサラダとフォカッチャがついてきます。

まずはセットのサラダが運ばれてきました(2人分)。新鮮な三浦野菜が20種類くらい入っていて、カラフルで美しい。カッテージチーズとナッツが添えられていて、味の変化が楽しめました。

いっしょにオリジナルドリンクをいただきました。奥に見えるのは三浦スイカの手絞りジュース。私は自家製のレモンスカッシュをいただきました。どちらもすっきりとした飲み心地で食事に合いました。

メインのお料理は、パスタとピッツァをそれぞれ選び、シェアしていただきました。こちらは、”佐島地ダコのクリームパスタ 山葵風味”です。佐島がタコの産地とは初めて知りました。タコの旨味の溶けたクリームが絶品でした。

こちらはメニューにオススメとあった”三浦半島のズッキーニとアーティチョーク、小柱のピッツァ”。サラダ感覚でさっぱりといただけました。もちもちと香ばしい生地でした。

テラスに人がいなくなったところを見計らってパチリ。なんて美しい海なんでしょう。都内から約1時間で別世界のようです。このあとテラスでパーティが予定されていたようで、人がわいわい集まってきました。

お店のすぐ横の天神橋の上からパチリ。橋を渡ると、佐島マリーナのある天神島です。

天神島に渡るとすぐに岩場の海岸があります。ゴツゴツしていますが、バランスを取りながら歩くのがおもしろい。小さなカニがささっと目の前を横切ります。潮だまりでは、子どもたちが海の生き物観察をしていました。水平線にうっすらと江ノ島が見えます。

このあと、海沿いの134号を葉山方面に向かいました。日本画家の山口蓬春記念館に行く予定でしたが、着いたらなんと夏季休館中。代わりにすぐ近くの神奈川県立近代美術館 葉山館を訪れましたが、こちらもすてきな美術館でした。コレクションをひと通り見てから美術館の周りを散策しました。

美術館の裏は一色海岸で、砂浜には下りられませんでしたが、見晴らし台から海水浴場が見えました。ここは江ノ島・鎌倉方面ほど混んでいないのがいいですね。暑いけれど気持ちよさそう。

最後に逗子の高台にある、披露山公園を訪れました。ここから相模湾が一望のもとに見渡せます。向うに見えるのは葉山マリーナ。沖にはヨットがたくさん出ていて、まるで白い海鳥のように見えました。

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万引き家族

2018年08月14日 | 映画

是枝裕和監督が、犯罪を重ねることで生計を立て、肩を寄せ合って生活している家族の姿を描いたヒューマンドラマ。2018年カンヌ国際映画祭にてパルムドールを受賞。リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林が共演しています。

万引き家族 (Shoplifters)

東京の片隅で肩を寄せ合って生活している5人家族。一家は初枝(樹木希林)の年金を頼りに、それぞれ日雇いや非正規雇用、アルバイトで働き、足りない分は万引きで補うという、ぎりぎりの収入で支え合って暮らしていました。

ある日、治(リリー・フランキー)は近くのアパートの廊下で震えている幼い女の子を見つけ、心配して家に連れて帰ります。女の子が虐待を受けているらしいことを知った家族は、一家の娘として迎え入れ、育てていくことにしますが...。

カンヌ受賞作ということもあって、イギリスのケン・ローチ監督や、ベルギーのダルデンヌ兄弟のような作品をイメージしていましたが、想像以上にガツンとくる作品でした。この映画には今の日本にあるさまざまな社会問題が描かれていて、私自身なんとなくわかってはいても目を背けていた現実を、目の前につきつけられたように感じました。

特に、この映画が公開されたちょうど同じ時期、都内で幼い子どもが虐待死した事件が起こったこともあり、どうしても映画のりん(佐々木みゆ)を重ねて見てしまいました。映画では最後に実の親元にもどされますが、あの後りんはどうなっただろう... 無事を願わずにはいられませんでした。

ただ、暴力のような命の危険こそないけれど、学校に通わせず、万引きさせることも、りっぱな虐待なのですよね。治と信代(安藤サクラ)のしていることは一見優しいけれど、愛とは言えないと思ってしまいました。祥太(城桧吏)はそれがわかっていたから、最後まで彼らを親と認められなかったのではないかな?と思いました。

彼らを見ていると、りんは自分たちで引き取るのではなく、警察に連絡するべきだったのでは?とか、しかるべき方法で公的支援を受けて生活すべきだったのでは?と思ってしまいますが、それは健全な側の”正論”に過ぎないのでしょうね。実際には警察はなかなか動いてくれないし、ほんとうに必要としている人が援助を受けられない現実がある。

そしておそらく彼らは、これまでさんざんNoをつきつけられてきて、期待できないとわかっているから、世間の目の届かないところで息をひそめ、肩を寄せ合って生きていくという道を選ばざるを得なかったのかもしれません。いつか終わりが来ることを予感しながら、束の間の幸せを謳歌するために。

彼らの生き方を認めることはできないけれど、ここまで来るまでに、どこかで彼らを救う手立てはなかったのか、やり直す方法はなかったのか、考え込んでしまいました。

映画の終盤では、まるでトランプのカードを表に返していくように、登場人物たちが抱えている事情が次々と明らかになっていきます。根拠はないですが、なんとなく初枝と信代と亜紀(松岡茉優)は親族だと思い込んでいたので、全員みごとに血のつながりがないとわかった時にはあっけにとられました。

亜紀の実の家族のことも衝撃でした。一見何不自由のない理想の家庭に見えて、亜紀をいない者として何事もないように生活しているのが怖ろしかった。りんの両親にしても、何も知らなければ、きっと子どもを誘拐された気の毒な夫婦にしか見えなかったでしょう。血のつながりがあっても、仮面家族だったという真実。

家族っていったい何でしょう。そもそも家族の最小単位ともいうべき夫婦が他人であることを思えば、血のつながりは必ずしも必要ではない気がするけれど...。無条件の愛? 揺らぐことのない信頼関係? 映画を見たあともいろいろ考えさせられました。

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ベルギービールウィークエンド 2018 @日比谷公園

2018年08月13日 | おでかけ

帰省中の息子に誘われて、この週末に日比谷公園で開催された「ベルギービールウィークエンド」というイベントに行ってきました。

2010年から毎年全国各地で開催されているイベントで、日比谷公園は今年初めて会場として加わったそうです。夕方、噴水広場に向かうと、すでにおおぜいの人でにぎわっていて、大いにもりあがっていました。

入場無料で、受付のところでビアグラスとコインを購入し、必要枚数を使ってビールやフードと交換、グラスはすすいで再利用する、というシステムです。私たちは音楽ライブをやっているステージの前の立席のテーブルに落ち着きました。

私はほとんど飲めないので、グラスは2つだけにして3人でシェアして飲みました。ビールは大きく分けて11のタイプ、全部で80種類くらいあります。一覧表がありますが、詳しい特色はスマホで確認することもできます。

1杯目はこちらの2種類をいただきました。左はホワイトビールの1種でルプルス・ブランシェという濁り酒です。右は今世界的に人気があるというIPAビールの1種です。どちらもそれほどクセがなくて飲みやすく、最初の1杯にぴったりでした。

2杯目はこちらの2種類。左はレッドビールの1種でキュベ・デ・ジャコバンというビールですが、フルーツで割ったような独特の酸味があり、ものすごくクセがありました。ちょっと飲みにくかったですが、これはこれでおもしろかった。右はアビィビールの1種だったかな?こちらはすっきりと飲みやすいお味でした。

このあともう1杯ずつ、全部で6種類のビールを楽しみました。

噴水の周りにビール箱を積み上げて作ったベンチが用意されていて、みなさん思い思いにビールを楽しんでいます。中には一人で立ち寄られて、サクッと一杯飲んで帰られる方も。いろいろな楽しみ方ができるのがすてきですね。

音楽はユーロテクノ?といった感じのクラブミュージックでしたが、なかなか雰囲気がよかったです。

ここでは軽くおつまみをいただいただけだったので、お腹がすいた〜と銀座7丁目のライオンに移動して、男性陣はさらに2杯ずつビールを飲んでいました。(私はウーロン茶) いい気分で家に帰りました。

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神宮外苑花火大会 2018

2018年08月12日 | おでかけ

昨日は「2018 神宮外苑花火大会」に行ってきました。

神宮外苑内に3つの会場がありますが、私たちは昨年と同じく神宮球場で見ました。午後2時頃にパラパラと雨が降り出し、どうなることかと思いましたが、1~2時間で止んでほっとしました。花火は7時半からですが、5時半からライブコンサートがあるので、少し早めに出かけました。

ここの花火大会は有料ですが、椅子に座ってゆったり見れるのがうれしい。チャリティを兼ねていて、収益の一部が東日本大震災と熊本地震の復興支援として被災地に送られます。

コンサートは前座の須澤紀信さんに続いて、Crystal Keyさんからスタート。ノリのいいダンスミュージックに客席が盛り上がります。はじけるような笑顔がチャーミングでした。

明るかった空が少しずつ暮れていきます。マジックアワーは、すばらしい夕焼けでした。

テクノ風のm-floに続いて、コンサートのトリを飾ったのは懐かしいPUFFYです。アミ・ユミは私がニューヨークにいた頃、アメリカの Cartoon Network に番組を持っていて、当時すごく人気があったのです。キュートな魅力があって、私も大好きでした。久しぶりに見ましたが、話はおもしろいし、今も変わらずかわいい。

ラストの「アジアの純真」が終わりかけると、花火までのカウントダウンがはじまり、会場の興奮も最高潮に。3、2、1、

ドーン!!

夜空いっぱいに大きく広がる花火、色とりどりの花々が咲き乱れる花火、柳のように上から降りてくる花火、パチパチと激しく点滅する花火。1時間にわたって夜空に繰り広げられる花火のショーを堪能しました。フィナーレでは、横一列に噴水のように打ちあがる花火と、頭上の花々とが交錯し、華やかに幕を閉じました。

花火のあとは電波少女のライブを耳にしながら会場をあとにしました。3つの会場から人があふれ、さらに沿道で見ている人たちもいて、帰り道はすごい人、人、人。交通整理のために、DJポリスも出ていました。^^ 心地よい余韻に包まれながら帰途につきました。

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ANTICA OSTERIA DEL PONTE

2018年08月08日 | グルメ

一時帰国した友人を囲んで、丸ビル36階にある ANTICA OSTERIA DEL PONTE (アンティカ・オステリア・デル・ポンテ) でお昼をいただきました。本店はミラノから車で1時間のところにあるというイタリアン・レストランで、店名は”橋のたもとにある古い旅籠"という意味だそうです。

東京のお店は近代的なビルの中ですが、石造りを模した外観とダークウッドのエントランスが重厚で落ち着いた雰囲気です。お店の方が、ちょうど個室が開いていると通してくださったので、気兼ねなく食事やおしゃべりが楽しめました。スパークリングウォーターで乾杯し、コースのお料理をいただきました。

まずは小さなアペタイザー。直径2㎝くらいの小さなシュークリームの皮に、ブルーチーズやマイクロトマトなどがつめてあります。指でつまんで一口でパクッといただきました。

アミューズはグラスに入った冷たいスープでした。詳細は忘れましたが、何層にも重なった複雑な味わい。たまねぎの甘さと歯触りも楽しめる一品でした。

”鹿児島直送キビナゴと赤パプリカのマリネ クスクスとタジャスカオリーブのヴィネグット バジリコオイル” タジャスカオリーブは小粒のオリーブ。小さく型取りしたクスクスにぴったりでした。どちらもさわやかな酸味があり、夏にぴったりの一皿でした。

”スパゲティーニ ”ジュゼッペ コッコ” ズッキーニのラグー、リコッタチーズ ボラのカラスミ燻製コラトゥーラ” ジュゼッペ コッコというのは、パスタのブランドのようです。コラトゥーラはイタリアの魚醤です。といってもナンプラーのようなクセはなく、さっぱりといただけました。

メインのお料理はお肉かお魚を選びました。私は、”真空調理し旨味を閉じ込めた豚の肩ロース 茄子のピューレと黄金梅”をいただきました。お肉がジューシーで柔らかい。梅の酸味がよく合いました。

お魚は、”旬の鮮魚と厳選したトマトのガスパチョ アンティカ・オステリア・デル・ポンテスタイル”です。お店の名前を冠したお料理なので、こちらにしてもよかったな。とってもおいしそうでした。

デザートはワゴンが運ばれてきて、8種類くらいから2つ選びます。私はラズベリーのケーキと、洋梨のタルトにしました。カプチーノといっしょにおいしくいただきました。最後に小菓子(マドレーヌとカヌレ)がつきます。

お部屋はテーブルのほかにソファ(荷物置き場になってしまいましたが^^;)もあって、ぜいたくな造り。広々としていました。

窓からは眼下に東京駅、その向こうに日本橋方面のビル街が見渡せました。

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ジュラシック・ワールド 炎の王国

2018年08月07日 | 映画

シリーズ第5作で、前作「ジュラシック・ワールド」(2015)の続編です。前作に引き続き、クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワードが出演しています。

ジュラシック・ワールド 炎の王国 (Jurassic World: Fallen Kingdom)

恐竜のテーマパーク「ジュラシック・ワールド」は3年前に恐竜が人間を襲った事件から閉園に追い込まれ、恐竜たちは島で自由に生き延びていました。しかし、島の火山に噴火の危険が迫り、恐竜たちを島から避難させるべきか、このまま自然にまかせるべきか、議論が沸き起こります。

パークの設立にも携わったロックウッド氏は、自身がもつ別の島に恐竜たちを移すことを決意。腹心の部下ミルズは、かつてパークの運営に携わっていたクレア(ブライス・ダラス・ハワード)と、恐竜の飼育に長けたオーウェン(クリス・プラット)に、恐竜の救出を手伝ってくれるよう持ちかけますが...。

前作がおもしろかったので楽しみにしていた本作。今回も期待を裏切らず、はらはらドキドキ最高に楽しめました。ストーリーはあからさまに勧善懲悪ですが、そこがいい。^^ 歯フェチのおじさんなんて、あらあら、そんなところに入ったら食べられるよ~と思ったら、案の定...以下省略。

恐竜たちは巨大で凶暴で迫力満点。子どもならずも、大人も大喜びしてしまいます。映画を見ながら、びっくりして思わず悲鳴を上げてしまった場面も。(かなり目立った...^^;) 夏のエンターテイメントにぴったりの作品でした。

微妙に擬人化されていることもあって、恐竜たちについ感情移入してしまいます。大きすぎて船に乗せてもらえなかったブラキオサウルスの悲しそうなシルエットが忘れられません。オーウェンが小さい頃からかわいがっていた、ヴェロキラプトルの”ブルー”の忠誠心には心を揺さぶられました。

本作のテーマは、神の領域に踏み込み、欲望のままに自然を支配しようとする人間たちへの警鐘...だと思いますが、痛い目にあってもすぐに忘れ、同じ過ちを繰り返すのもまた人間です。恐竜たちを救ったことは心情的には理解できますが、そもそも彼らを現代に生き返らせたことが間違いだったのでは?と言ったら映画になりませんが^^; 何年か後の続編も楽しみです。

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ヤクルト・中日戦 @神宮球場

2018年08月05日 | おでかけ

先月、神宮球場にヤクルト・中日戦を見に行きました。

外苑前駅から球場まで、応援に行く人たちの波ができていて、それだけでワクワク興奮してきました。席で落ち合う予定だったので、渋谷のヒカリエの地下でお弁当を買っていきました。球場入口にヤクルト・スワローズのマスコット、つば九郎のバルーンがあったので思わずパチリ。隣には妹のつばみちゃんもいましたよ。

私はプロ野球はほとんど見なくて、しいていえばベイスターズファンということになっていますが(といっても選手はほとんど知らない)、つば九郎は大好き。なぜなら私の好きなペンギンに似ていて、アイドルらしからぬ辛口の発言や行動がおもしろいから。^^

この日はヤクルトファンの夫のつきあいということもありますが、神宮球場は東京オリンピック後に取り壊され、隣の秩父宮ラグビー場と場所が入れ替わる計画となっているので、今のうちにできるだけ行っておきたいという気持ちもありました。

テレビで野球はほとんど見ませんが、球場のライブ感は好きです。にわかファンですが、見に行く時は応援に気合いが入って、ファンとの一体感を楽しみます。この日は地元のヤクルトファンはもちろん、中日ファンもかなりたくさん入っていて、大いに盛り上がりました。

ヤクルトの応援といえば傘、そして東京音頭。以前は緑のビニール傘というイメージでしたが、いつの間にかデザインが増えていました。試合中は時折夜風が吹いてきて、暑さも気にならないほど。この日はビールの半額デーで、よく売れてました。こういうファンサービスはうれしいですね。

ぐぐっとズームして... つば九郎とつばみちゃん、そして中日のドアラが試合を盛り上げます。つば九郎は下も着ぐるみなので暑くてたいへん。アイドルはつらい。><

5回裏の後に、花火が上がりました。短い時間でしたが、夏の風情が味わえました。

この日の試合は、点を取ったり取られたりのシーソーゲーム。しかも山田選手が2本もホームランを打ち、途中の大量得点もあって、9対4でヤクルトが勝ちました♪ 素人の私にもわかりやすく見応えがあって、おもしろい試合でした。

ちなみにヤクルトは前日まで最下位でしたが、この日の勝利で最下位脱出。そしてこのあと7連勝して、今は2位まで順位を上げています。今年は(豪雨の被災地のために)広島に優勝してもらいたいので、2位でしたら万々歳です。さてシリーズ後半戦、どうなりますことか...。

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フジコ・ヘミングの時間

2018年08月04日 | 映画

60代後半で奇跡のデビューをはたし、今も世界各地で演奏活動を続けているピアニスト、フジコ・ヘミングさん。本作は2年にわたって取材された、フジコさんの初めてのドキュメンタリー映画です。

フジコ・ヘミングの時間

フジコさんが1999年にNHKのドキュメンタリー番組で紹介され、一夜にして有名になった時、私はアメリカにいてしばらくその熱気を知りませんでした。ところがその後、フジコさんがニューヨークのカーネギーホールでリサイタルを開くことになり、聴きに行く機会を得たのです。

フジコさんのコンサートは、それまでに聴いたどのピアニストとも違っていました。まずクラシックのコンサートにはめずらしく、プログラムがありません。一曲ずつ、客席の方を向いて曲名を告げ、弾き始めるところは音楽ライブといった感じ。そして客の反応を見て、次の曲を決めていらっしゃるような印象を受けました。

独特の重ね着ファッション。佇まいにただならぬ迫力があり、圧倒されました。演奏も個性的で、曲に自分を近づけるのではなく、曲を自分の世界にぐいっと引き寄せるようなパワーを感じました。

さて... 映画は、フジコさんのご自宅があるパリにはじまり、現在の音楽活動や日常、それから最近東京の家から見つかったという絵日記を紹介しながら、過去を振り返ります。この絵日記が、少女時代のフジコさんの日常が生き生きと描かれていて、実に楽しいのです。(6月に暮らしの手帳社から出版されたそうです) 

スウェーデン人デザイナーの父との別れ。幼少期からピアノの才能で注目されるも、のちに国籍がないことが発覚したこと。その後、難民認定を受けてドイツへの留学をはたすも、大切なコンサートの前に風邪で聴覚を失い、第一線を退かざるを得なくなったこと。

その後は左耳の聴力が40%回復し、現在は年60回ものコンサートで世界を飛び回っていらっしゃいます。南米でのコンサートでは、用意されたのが家庭用の小さいグランドピアノだったことも。そうしたトラブルも、フジコさんの波乱万丈の人生にしてみれば誤差の範囲かもしれません。

お気に入りのアンティークに囲まれた、パリのご自宅。レースやリボンなどのかわいいものが好きで、シトロエンの2CVが好き。思いがけず私と好みが似ていて、いっしょに女子トークがしたくなりました。^^ 実際にお目にかかったら、緊張で固まって、きっと一言も話せないだろうと思いますが。

それからフジコさんは家が好きで、パリだけでなく、ロサンゼルス、東京、京都、ベルリンにも家があると知って驚きました。南欧スタイルのLAの家、町家を生かした京都の家と、訪れる先々に、その場所の文化を取り入れた居心地のよい空間があり、ピアノがあり、(留守を預かるシッターさんがいて)ワンちゃん、ネコちゃんが出迎えます。

パリの街を愛犬と散策しながら、困っている人には必ず小銭を恵み、そして動物愛護や震災支援など、数々のチャリティコンサートを開いているフジコさん。長く苦難の中にいたフジコさんだから、遅くやってきた成功と恵みを、今、困難の中にいる人たちや弱き動物たちと分かち合おうとしていらっしゃるのでしょう。

フジコさんの代名詞にもなったリストの”ラ・カンパネラ”をはじめ、ショパン、ドビュッシーなど、フジコさんの演奏を聴きながら、豊かな時間を堪能しました。

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