中島京子作「イトウの恋」を読みました。明治時代に横浜で通訳として活躍したイトウはイギリス人女性I・Bを東北から北海道へ案内します。通訳旅行しているうちに二十歳の青年イトウは年の離れた年上女性I・Bに恋心を抱きます。イトウは実在の人物で明治時代優秀な通訳でした。I・Bというのは「イザベラ・バード」でその著書「日本奥地紀行」にはイトウのことが紹介されているそうです。明治時代の淡い恋物語と並行して現代の高校社会科教師で郷土部顧問久保耕平と部員赤堀、イトウの曾孫にあたる田中シゲルの物語が語られます。登場人物の個性が上手く表現されていてまったくかみ合わない者同士、一つのことに集中して解明しようと心を合わせていくうちに居心地の良い空間が生まれていきます。明治時代と現代を行き来しながらこの先を早く読みたいと引き込まれます。横浜と東北・北海道へも物語の中で行き来します。ちょうど私は東北仙台と横浜へ行ったところで、横浜のみなとみらいを見ながら、イトウに心を寄せました。明治時代にこんなに優秀な通訳がいたことにも驚きました。案外、私の周りにも気がつかないだけで優秀な方がおられそうな気がしました。
お気に入り度:★★★★★ 図書館資料 請求記号:B/ナカ
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