「蟻の棲み家」 望月諒子

「蟻の棲み家」　望月諒子　　新潮文庫　　　

東京都中野区で、若い女性の遺体が相次いで発見された。
二人とも射殺だった。
フリーの事件記者の木部美智子は、かねてから追っていた企業恐喝事件と、この連続殺人事件の間に意外なつながりがあることに気がつく。
やがて、第三の殺人を予告する脅迫状が届き、事件は大きく動き出す・・・・・・。
貧困の連鎖と崩壊した家族、目をそむけたくなる社会の暗部を、周到な仕掛けでえぐり出す傑作ノワール。
　　　　　＜文庫本裏カバーより＞






社会の暗部を描く息苦しい物語。
殺人者は誰かと言うより、動機の“何故”の方に重点が置かれている。
登場人物の心理が色々書かれるが、気持ちなんて本人も明確でなく、なんとなく同じ所をぐるぐる回るようになってしまう。
そして最後、犯人は２人に絞られる。
そのままはっきりさせずに終わるかと思ったら、自分の推理で犯人を突き止めた木部美智子に犯人はそれまでの事をべらべらと話す。
それは今まで描いて来た人物像とは違う感じがする。
そして、その展開が問題解決に余計な要素を加えているようで、納得出来なくなってしまった。
もっと単純に解決する方法があるだろう。
そして、今まで真っ当に生きて来た人に殺人は無理なのではないかと。
犯人にも、同じ様な事が言える気がする。
結局、暗い社会を見せられただけで終わってしまったような感覚で本を閉じる。