しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「最後の娘」 ペネロピー・エヴァンズ  

2009年01月31日 | 読書
「最後の娘」 ペネロピー・エヴァンズ      創元推理文庫
 The Last Girl      池田真紀子・訳

72歳のローレンス(ラリー)はエセル・ダックが大家をしている家の3階を間借りしている。
知り合って43年になるのに、エセルはラリーのことを“ミスター・マン”呼ぶ。
エセルは2階に若い娘を店子として貸している。
今まではインド人の娘ばかりだった。
珍しく2週間も店子を取らずにいたエセルが連れてきたのは、アマンダ(マンディ)・タイソン。
ラリーは一目でマンディが気に入り、親友になれそうな気がする。
ラリーは早速歓迎の気持ちを伝えようとマンディに引っ越し祝いのプレゼントを用意する。
そしてラリーはマンディに良かれと思うことを実行していく。



ラリーの一人称で語られる物語。
ラリーが何を望んでいるかはよく分かり、相手の反応から相手の気持ちも結構わかるの。
しかし、自分がそう思うのと、ラリーが思うことには結構違いがある。
それはラリーが、自分の理想像をマンディに見ようとする思い込みの強さもあると思う。
世代のギャップもあるだろう。
しかし、これは特別なことではないのかも知れない。
それがとても分かり易く書かれている。
静かな展開だが、なんだかとても面白く、どんどん読めてしまう。
物事を片面から見るとこうなってしまうのか、とか。
自分の妻や娘やエセルで、すっかり女性不信になっているラリー。
それでも理想の女性がこの世にはいると思いたいのは、一人でいる寂しさからなのだろう。
そしてラリーが持っている人の付き合い方の法則。
相手に親切にしたら、それに感謝して何かお返しをしてくれるもの。
押し付けではないがそれが礼儀ということ。
当たり前のことかも知れないが、それはお互いの気持ちが通じていればこそ。
親切がお節介や迷惑、胡散臭く感じられることも。
コミュニケーションの取り辛い社会になっているのは確かだ。

途中でラストが見えたが、ラリーに何が間違っているのか、そんなことを伝えるのは無理だろうと思う。
年齢的なものもあるかも知れないが、年齢に関係なく思い込みも強さは結構怖い。

この物語と離れて考えても、思い込みが強く人の考えに耳を傾けない人はいる。
その自信はどこから来ていくのかと信じられないこともある。
そんな人をどうしたらいいのだろうか。
世の中、白黒で分けられないこともあるし、同じものを見ても感じ方はみんな違うということを理解するべきだ。
そうしたら世の中の人間関係がもう少し良くなるかも。


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