しましましっぽ

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「エアーズ家の没落」 サラ・ウォーターズ 

2013年07月26日 | 読書
「エアーズ家の没落」   サラ・ウォーターズ    上・下巻    創元推理文庫
 THE LITTLE STRANGER           中村有希・訳

この地方で、かつて隆盛を極めたエアーズ家は、第二次世界大戦終了後まもない今日では、斜陽を迎え、広壮なハンドレッズ領主館に逼塞していた。
かねてからエアーズ家に憧憬を抱いていたファラデー医師は、ある日メイドの往診を頼まれたのを契機に一家の知遇を得る。
物腰優雅な老婦人、多感な青年であるその息子、そして令嬢キャロラインと過ごす穏やかな時間。
その一方で、館のあちらこちらで起こる異変が、少しずつ彼らの心をむしばみつつあった・・・・・・。
        <文庫本上巻1ページ目より>

相次ぐ不幸な出来事の結果、当主のロデリックが去ったハンドレッズ領主館は、ますます寂れ、倹約を余儀なくされていた。
残されたエアーズ夫人と令嬢キャロラインの身を案じるファラデー医師は、館への訪問回数を増やして行く。
やがて、医師とキャロラインの間には、互いを慕う感情が芽生え始めるのだった。
しかし、ふたりの恋が不器用に進行するさなかにも、屋敷では異様な出来事が続発する。
事態は最後の悲劇へと向けて、まっしぐらに進んでいくのだった・・・・・・彼らを追いつめるのは誰?
       <文庫本下巻1ページ目より>







イングランド中部のウォリックシャー地方にある、200年余りの伝統を誇ってきたハンドレッズ領主館。
古い館が悪意を見せる、ホラーの様な物語。
主役の館は、かつての華やかさと今の暗い影と、両方感じさせてくれる。
とても存在感があり、独特の雰囲気。
そして、戦前と戦後で暮らしががらりと変わってしまった、エアーズ家の人たちの暮らしも丁寧に書かれ興味深い。
変化に戸惑いながらも、それを受け入れ対応して暮らそうとする姿。
痛々しい感じもあるが、卑屈にはならず、堂々としている強い心根に共感が持てる。
大きな時代の変化は、ある人たちには残酷だ。

数々の奇妙な現象や事件が起こる。
それはきっと後で、何か説明の付く理由や人物が登場するかと思っていた。
誰がそれを出来るか、何が理由なのか。
そんなことを考えながら読み進める。
しかし、最後まではっきりとは分からずに、謎を含んだまま終わる。
だからと言って、その通りとは限らないかも知れない。
ある人には手に負えない屋敷でも、ある人には堪らない魅力があり惹きつける。
一人称で書かれた物語だからこそ、色々と深読みも出来る。
怖さも充分感じられる。
今までのサラ・ウォーターズの物語ははっきりと終わっていたので、少々肩透かしにも感じる。


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