しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「怒り」  吉田修一 

2016年02月03日 | 読書
「怒り」  吉田修一   中央公論新社   上・下巻

八王子郊外の新興住宅地に建つ一戸建てで、共働きの夫婦が殺害される。
犯人は現場に6時間留まった事が分かっている。
室内の壁に血で「怒」の文字が書かれていた。
目撃証言から2日も経たずに、犯人の名前と住所が判明する。
山神一也。
指名手配されるが、事件発生から1年経っても逃走を続けている。
千葉の漁港、新宿、沖縄に身元不確かな過去を隠している男が現れる。
やがて、その男と親しくしていた人たちがそれぞれに、“この男が山神かも知れない”と疑うようになる。








タイトルにもなっている「怒」の文字の怖さやおぞましさがあまり伝わって来ない。
犯人がしっかり分かると、それもはっきりするのかと思ったが。
前半は、犯人らしき人とそれに関係している人たちの物語。
それがいまひとつ単調な感じ。
最後にそれぞれの人生ドラマが展開されるのだが。
メインになるのかと思っていた犯人の事が、以外と通り一遍で薄い。
1番知りたかった事は分からないまま。
壊れている人間は、説明が付かないと言う事だろうか。
メインは殺人犯だと思ったが。
殺人者かと疑う、周りの人間の反応や心理が丁寧に書かれる。
疑いだけで、これほど混乱するかと思えるほど。
「信じる」と言う言葉がキーワードのように何度も登場する。
信じると言うのも、何に対してかは状況によって変わるものだ。
他人を丸ごと信じると言う事は、特に難しい。

少女が見た「怒」の文字に、どうしてそれ程の衝撃があったのか。
それも自分には伝わって来ない。
結局「怒」の文字の不気味さは、物語の中の人物だけ。

映画になると知って、先に読んでおこうと手にした。
映画には向いているかも知れない。
本からは伝わって来なかった「怒」がどのよう感じられるようなるか。
そして、人間ドラマもきっと映像の方が伝わるだろうと思える。

辰哉の父の沖縄問題の話しは考えさせられる。
確かに観光に行った先で、基地問題を延々と論じられたら、とも思うが。
それは、やはり他人事と考えている多くの人たちの方が間違いなのだと思う。
生活から常に離れない沖縄の人たちからしたら、もっと真剣に考えて、何かしらの行動を一緒に起こして欲しいと思うだろう。
もっと関心を持つ事が必要なのだ。
ちなみに、自分は沖縄に基地を置くことは反対だ。
基地が日本で必要ならば、もっと分散させるべきだと思う。
みんな自分たちの側に基地が来て欲しくないと思っている。
みんなが嫌ならそれは要らないと言う事になるか、ある程度我慢して置くか。
沖縄だけに押し付けている現状は間違いだ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「私立探偵コーモラン・スト... | トップ | 「アノニマス・コール」  ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事