しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「死の泉」 皆川博子 

2020年03月25日 | 読書
「死の泉」 皆川博子   早川書房    

『「死の泉」 Der Spiralig Burgruine  ギュンター・フォン・フュルステンベルク  野上晶・訳』
主人公マルガレーテの恋人だった ギュンター・フォン・フュルステンベルクか書いた小説、と思われる。
最後には訳者、野上晶のあとがきがある。

1943年、ドイツ、ミュンヘンの近くにあるシュタインヘリン村にある産院レーベンスボルン(命の泉)。
19歳のマルガレーテ・シュトレッツは未婚で身籠り、出産の為に入所する。
そこはナチスの研究施設でもあり、乳幼児の世話もしていた。
マルガレーテは出産まで働いて過ごし、ミヒャエルを無事に出産する。
子どもたちの中にはドイツ化する為にポーランドから連れて来られた金髪碧眼の子もいた。
フランツ(タデウシュ)とエーリヒ(アンジェイ)もそうで、2人は仲良く美しい声で歌った。
所長のクラウス・ヴェッセルマンは不老の研究をしていたが、芸術にも関心が高かった。
エーリヒの声に魅せられたクラウスはエーリヒの声を育てる事に執着する。
エーリヒを養子にする為には家庭が必要で、マルガレーテに求婚する。
マルガレーテはミヒャエルを養子に出さず自分で育てる事が出来る為にそれを受け入れる。
そして、クラウスの家でマルガレーテとミヒャエル、養子にしたフランツとエーリヒの家族の生活が始まる。
マルガレーテはクラウスに嫌悪を感じ、ドイツ化を受け入れられないフランツに惹かれていた。
クラウスの望みは、エーリヒをカストラータにすることだった。
やがて戦争は激しくなり、思いも掛けぬ事が起こって行く。






ナチスで行われていた人体実験には、不老不死もあったのだろうか。
異様な執着心と信念を持つクラウス。
流されるまま、生きているようなマルガレーテ。
誇りを捨てずに、自分らしく生きようとするフランツ。そしてレナも。
戦争中でなければ起こらなかったような、出来事が日常の中で淡々と進む。
戦後になって雰囲気が変わる。
敗戦国、ドイツの殺伐とした感じ。
そして、逞しく生きているフランツとエーリヒ。
今回は再読なので、隠されている秘密を知って読んでいる。
初回の様に、驚くことはなかったが、代わりに納得しながら読み進められ、それはそれで興味深かった。
フランツの辛さや悲しみは計り知れない。
そして、ラストのラストは、知っていたのに同じような衝動を感じる。
そうだった、これはギュンターが書いた小説だった。


余談
始めに読んだのは、2008年にStudio LIFE で上演(再演)された時。
そして今年、Studio LIFE で再演されるので再読。
しかし、結局この公演には行けなかった。コロナで。
公演実施は、劇団の事情も分かるから、仕方がないのだろう。
1人暮らしだったら行っただろうけれど、高齢者と同居する身としてはとても行けない。
自分が感染して、症状が出てからうつるのだったら分かり易いのだが。
知らないうちに感染してそれで他の人にうつし、自分はそのまま何事もなく治ると言う事もある。
うつされた人が高齢者だったら、それで命を落とすかも知れない。
そんなこともあるコロナウィルス。
だから、若い人たちも気を付けて欲しい。

舞台はDVDが発売されるので、それを楽しみに。
面白そうだなと思ったイベントが収録されるというのも嬉しい。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「夜が来ると」 フィオナ・... | トップ | 「虐殺器官」 伊藤計劃  »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事