しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ドゥームズデイ・ブック」 コニー・ウィリス 

2010年10月01日 | 読書
「ドゥームズデイ・ブック」 コニー・ウィリス    早川書房
 DOOMSDAY BOOK           大森望・訳

2054年、オックスフォード。
ネットと呼ばれる装置で過去に行き来が出来るようになっていた。
中世史科の学生、ギヴリンはまだだれも行った事のない中世に行くことを強く希望する。
危険度ランク10の中世に送ることを、ダンワーシイ教授は断固反対する。
しかし、中世史科のギルクリストが許可を出す。
あらゆる予防措置を取ったというが、ダンワーシイには不安材料がたくさん見えていた。
しかし、ギヴリンは中世に降りる。
目標は、ペストが流行する1348年より前の1320年。
降下を担当したバードリーが時空座標確定値(フィックス)を出すが、「なにかがおかしい」と言って倒れる。
バードリーは高熱を発し、意識を失っていた。
同じ時、森に中に降下したギヴリンも激しい頭痛に襲われていた。

「ドゥームズデイ・ブック」はウィリアム征服王の調査台帳。
「最後の審判の日」の意味もある。




タイムトラベル物。
タイムマシンの装置については詳しく説明はないが、あまり気にしないで楽しむ。
中世と現代(2054年)で、それぞれが正体の分からない流行性の病気と人間が戦う物語。
今現在と、共通するもので、かなりリアルで恐ろしさを感じる。
治療法が見つからないとどうなるか、それは過去のことで分かっているのだが。
実際にその場にいるような感覚。
何も出来ない虚しさ、悔しい気持ちをギヴリンはもの凄く感じていた。
現代に戻れば、この人達は死なずに済むのだから。
それは出来ないことなのだが。
そんな気持ちも充分に伝わり、益々のめり込む。
しかし、そんな状況の中、人々はその時出来ることを諦めずに努力する。
それは現代も同じ。
人間の強さを感じる。
ただ、どちらの世界でも病気に負けて死んでいく人がたくさんいて、読んでいて悲しくなる。
それが“現実”なのだろうが。
登場人物が生き生きと書かれているので、その人が死んでしまうのが本当に辛い。
かなりの緊迫感があり、特に後半は一気に読む。

コニー・ウィリスの本を読むのは3作目。
同じことを螺旋階段のように、繰り返し語りながら進んで行く特長があるのが分かった。
少々まどろっこしく感じる時にあったが、何となくこのペースに慣れた。
そして、厳しい現実の中でも、ユーモアは必要なのだと思わせてくれる。
人間、張り詰めてばかりはいられない。
『犬は勘定にいれません』の方が後なのだが、同じ登場人物がよりよく分かり面白い。


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