しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「父の国 ドイツ・プロイセン」 ヴィプケ・ブルースン  

2006年09月11日 | 読書
原題を文字通り訳すと、「父の国 あるドイツ一家に起こったこと」になるそうだ。
これは作者が父について、残された日記・手紙・写真などをもとに書いた父の話。

父はハンス・ゲオルク・クラムロート(HG)で作者は第5子で末娘。現在、ドイツで高名な放送ジャーナリスト。
HGは1998年に生まれ、1944年8月26日、ヒトラー暗殺の情報を知っていながら報告しなかった罪で絞首刑になる。
作者は5歳で父の記憶はない。


第一次世界大戦、第二次世界大戦をどう通り抜けたかの家族の記録でもある。
HGと同じだけ、母親のエルゼのことが書かれている。
第一次と第二次戦争の違いや、戦争の中でも今まで通りに生活しようとしている姿がある。
というか、戦争の方が別もののようだ。勝手に入り込んできて、生活に変化を与えている。
時代の流れでナチスにも入党しているが、すべてを信じて熱心になっている訳でもない。
ユダヤ人については、HGは知っているが触れないようにしている。
HG達に差別意識はなかったし排除したいとも思っていなかった。しかし、自分達の血筋は誇りだった。
エルゼも感づいている事はあるが、考えないようにしている。これが一般的なその時の感情なのだろう。
エルゼが戦後、絶滅収容所について聞いた時は真っ青になって「そんなことがあったなんて、もう二度と私たちドイツ人は赦してもらえなくなる」と言ったそうだ。

HGの暗殺黙認の件は、娘婿がかかわっていたから。
巻き込まれたわけではないが、もうこれを終わりにしなければと思っていたようだ。これもきっと多くのドイツ人の考えだったのだろう。
ナチスに入党してこの独裁を支えた事と、ヒトラーを暗殺して終わりにしたいという気持ちはすぐ隣にあるのだ。
自分と家族の生活を守る事が1番だったHG(浮気もいっぱいしているのだが)。
戦争なんて起こって欲しくなかっただろう。

クラムロート一家は裕福な家庭ではあるが、戦争時代のドイツの生活がわかる。
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