しましましっぽ

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「太陽の石」  乾石智子

2016年07月19日 | 読書
「太陽の石」  乾石智子   東京創元社    

コンスル大帝国の最北西の地、霧岬の村。
かつては栄えた村は、300年ほど前に岬の中心にゴルツ山が出来てから火山煙におおわれ寒冷の地となる。
ゴルツ山は、魔導師リンターが空から降って地に潜ったことで隆起して生まれた。
16歳のデイスは拾われ子で、姉のネアリイが見つけた。
ある日、デイスはゴルツ山で「太陽の石(オルヴァン)が付いた肩留め(フィブラ)を拾う。
デイスがフィブラを胸元にとめると、明確な夢を見る。
それは兄弟姉妹たちとの夢だった。
そして、村にリンターと名乗る男が現れる。
魔導師リンターは、デイス300年の眠りから起こされたと言う。
リンターは村に涸れる事のない井戸を与え、その代償として、デイスともう一人、デイスの友人ビュリアンを所望する。
リンターは、姉ナハティを倒すために<不動山>に向かうと言う。
リンターとナハティは魔導師イザーカト9人兄弟姉妹の次男と次女だった。
コンスル帝国は1000年の栄の後、次の300年は疫病や飢饉で衰退を始め、次の300年では帝位簒奪が繰り返された。
その中で、イザーカト兄弟姉妹も仲たがいをして戦う事になった。
デイスが夢で見たのは、イザーカトの兄弟姉妹だった。
デイスはビュリアンと、一緒について行くというネイリアと共に、リンターに従い<不動山>に向け旅を始める。









時代は「魔導師の月」より1000年ほど後の時代。
コンスル帝国の歴史は、簡単に語られるだけ。
かなり衰退して、殺伐とした時代になっている。
「猫でさえ本を読む」と言われたのが、今は文字を読める者もほんの一握りと言う。
魔導師も随分少なくなっている様子。
感覚としては、時代が昔へ戻った風に感じる。
この間の時代の物語も、そのうち書かれるのだろうか。
そんな大きな隔たりがあるにだが、共通している事がある。
大きな闇が存在していること。
それは『暗樹』なのかと思うが、そのような認識は出て来ない。
今回も、その闇に人格の全てを支配された魔導師との戦い。
イザーカト兄弟姉妹の事が物語の中心になる。
300年前と、300年たって再開された戦い。
それが兄弟姉妹の間で行われた事で、悲惨さが大きい。
残酷な場面も。
ナハティがなぜそうなったか、心の動きも分かるので説得力はあるのだが。
デイサンダーがナハティの孤独に気が付いた事で、何か変化が起こるのかと思ったのだが。
ナハティは、もう救い出すには遅すぎたのか。
前2作とは、少々雰囲気が違う。
今回は、イザーカトの兄弟姉妹の物語に集約している。
狭い世界で、戦う事だけで終わってしまった。
この時代、魔導師は闇とより強く結びついていると言う。
魔導師はどう変化して来たのだろう。
デイサンダーがネアリイに育てられた事によって人を思いやる気持ちがあると言う事。
これからも変化して行くのだろう。
エズキウムの名も出てきたが、いつかこの世界が全てつながるのだろうか。

イザーカト兄弟姉妹
長男 ゲイル  大地と火の魔導師
長女 テシア  大地と火の魔導師
次女 ナハティ  大地と火の魔導師
三女 カサンドラ  水の魔導師
次男 リンター   大地と火の魔導師
四女 ミルディ   水と土と風の魔導師
五女 ヤエリ   雷と稲妻の魔導師
三男 イリア    風と嵐の魔導師
末っ子 デイサンダー  (デイス) 植物と生命の魔導師

ザナザ  イスリルの魔導師
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