しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「マージナル」 萩尾望都 

2008年07月23日 | 漫画
「マージナル」 萩尾望都  小学館文庫/全3巻

2999年、地球は男だけの世界だった。
都市(シティ)モノドールにいる、たった一人の女性マザが子どもを生み出していた。
都市も周りに住む人々は毎年都市に来て、子どもをもらっていた。
しかし、マザは年々子どもを生み出せなくなり、世界の人口は減少していた。
そのマザが暗殺される。
暗殺したのは、目尻に青い刺青を入れた一族。
自分の町に帰る途中でその中の一人、グリンジャはひとりの子どもを拾う。
記憶をなくし、うまく話せない子どもは何かに怯え、意味の分からない言葉を発する。
その子をキラと呼び、近くの町で売ろうとする。
一度キラを売ったグリンジャは、買った男アシジンから何者かがキラを略奪するのを見て、アシジンと一緒にキラを救出する。



荒廃した未来の地球。
宇宙に脱出した地球人と地球に残された人類。
地球は男だけの社会。このモチーフを萩尾ワールドが描く。
漫画だから、絵が綺麗なのも楽しめる大きな要素。
絵から伝わる部分も大きい。当たり前か、それが漫画だ。

どういう世界か、探るように読み進めて行く。こういう話でこういう世界なんだと入り込みながらも、少しずつ色々な疑問がわいてくる。
2300年の異変から、という事だが、この時に裕福な権力者は地球を脱出したのだろう。
何も生み出せなくなった地球は100年もすれば人類は滅びるだろう。
それから700年近く人類が生き続けていたのは、センターから子どもを送っていたことになるが、その割には人口は多い。
あちこちに集落があるようだし。無理があるような気がする。
ましてや寿命が30年となったら尚のことだ。
そして、宇宙に出た人類の寿命が分からないが、最後まで読んでもなんの為に、何をしたくて地球を実験都市にしたのかが分からない。
ただ単に2人の男女の愛情のすれ違いと、意地の張り合いから地球を利用したとしか思えない。

男性だけの世界が何年続いても、女性がいた時の記憶があるような社会になっているのは、人間の本性がそうなのだろうか。それともセンターにコントロールされたいたのだろうか。
戦国時代に、高級武士が戦場に小姓を連れて行っているのと同じようなものを感じるが、あれは代用品なのだろうから。
新しい命を生み出さなくても、はやり接触を持ちたいのだろうか。
そして、短命ということはもっと違う世界観が生まれることもあるような気がするが。

なにしろ、漫画も小説も未来の地球は暗い。
そして、地球に残された人々は人間的に見て、貧しく、下等とされ見捨てられた人々。
だがら、地球を見捨てた人間が宇宙から地球人を見詰める。

地球にいる人々は生きようとする。
そして、地球も生きようとしていた。
人類を生み出したのは地球そのもので、生み出したものに滅ばされそうになった地球が、それでも諦めずに生きようとする。
新たな命を生もうとする。そんな物語なのだと思う。
夢を見ているのは地球そのもの。
SFは人類に警告を与えるもの。
地球を滅ぼさないように、していかなければいけない。


今回初めてこの作品を読んだ。
萩尾望都さんの作品は結構読んでいるつもりだったが、読んでいないのも結構ある。
これは、次回のStudio Lifeの公演作品。
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