しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「霧のソレア」 緒川怜  

2008年07月25日 | 読書
「霧のソレア」 緒川怜     光文社

ロスアンゼルス国際空港と飛び立ち成田に向う日本トランス・パシフィック航空73便、ボーイング747。
機長は59歳のベテラン塚田祐之介、副機長は若い女性パイロットの高城玲子、航空機関士は48歳の佐伯宏明。
成田まで後3時間という時に、貨物室で爆発があり機体に穴が開き、7人が死亡する。
その中にたまたま客室にいた機長も含まれる。
ジャンボ機での飛行時間がわずか210時間の新米副操縦士の高城玲子が、体勢を立て直し成田へ向う。
安定したかに見えた時、燃料タンクのトラブルが発覚。成田に着くまでに3機のエンジンが止まる可能性が出てくる。
しかも、通信がすべて遮断され事態が起こる。何かの妨害電波の影響らしい。
そして目的地の成田は濃い霧に包まれていた。



一言だと「爆破され傷ついた飛行機を、まだ新米の女性パイロットが数々の困難を乗り越えて目的地まで運ぶ」という物語。
他の要素が上手に組み合わされて、かなりスケールの大きな物語になっている。
乗客には北朝鮮に向う核専門のロシア人科学者いて、その人物を巡る物語。
パイロット高城玲子の物語。
かなり内容が濃くなっているが、それでも主役は飛行機なのだと思える。
緊迫感はずっと持続して、少々難しく思える飛行機の構造や自衛隊のことも、分かり易く頭に入って来て障害にはならなかった。
しかし、このスケールの大きさを最後はどうまとめるのかと思ったら、上手に逃げられたかと始めは思ったが、実際にありそうだと考え直した。
政治家なんて、みんな自分のことしか考えていない。
国家の為といいながら、自分のことが優先なのだと思える。
そして、命令系統で動く団体は、命令が唯一正しいもので、人の命なんて考える範疇にはないのだと。
実際そうなのかも知れない。戦争の時、相手は敵であって命ではないのだから。

これは、第11回日本ミステリー文学大賞新人賞・受賞作品。
『滑走路34』を刊行にあたり『霧のソレア』に。

アルフィーに「霧のソフィア」という曲がある。
それでタイトルを見て引きつけられた。そして、ミステリーと知って手にした。
そんな縁で面白い本に出合えた。


 
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